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2015年3月12日 3:03

村尾キャスター、原発内部へ 4度目の取材

村尾キャスター、原発内部へ 4度目の取材
(c)NNN

 東京電力・福島第一原子力発電所の事故発生から4年となるが、復興の出口は見えない。これまでより放射線量は下がり、汚染水の処理も進み始めている。しかし、新たな課題も浮き彫りになってきた。「NEWS ZERO」の村尾キャスターが、原発の敷地内で4度目の取材を行った。

 事故後、村尾キャスターは3度にわたり福島第一原発内部の取材を行ってきた。4度目となる今回、どのような変化を感じたのか。

 巨大なタンクが目につくのはこれまでと同じだが、作業に携わる人の数は増えた。作業員の数は、2013年までは1日平均3000人だったが、現在は6000人から7000人が作業にあたっている。

 4年前に水素爆発を起こし、大量の放射性物質を放出した1号機の原子炉建屋に向かった。

 村尾キャスター「今、1号機に向かって歩いていますけれども、このあたり、かなり放射線量が高いところです」

 カバーに覆われ、一見きれいに見える1号機。しかし建屋から50メートルほど離れた場所でも放射線量は1時間あたり200マイクロシーベルトを超えていた。これは東京都内の0.036マイクロシーベルトの約5500倍。取材ではこれ以上近づくことができなかった。

 先月、内部を調査するため、専門家などが1号機の原子炉建屋に入った。放射線量を測ると、8万マイクロシーベルトと村尾キャスターが取材した建屋のそばよりさらに400倍も高い放射線量を示した。廃炉に向けた作業を阻む、高い放射線。

 廃炉に向けた作業が進んでいる場所の一つ、4号機の原子炉建屋に入った。5階には使用済み燃料のプールがある。2013年11月には1533本あった燃料が全て取り出され、廃炉に向け一歩前進していた。

 しかし、同じ建屋の中には、ほぼ手つかずの場所もあった。燃料プールがある5階とは違い、1階部分にはがれきが散乱したままだった。緊急性の高い作業を優先しているためだという。

 その緊急を要する作業の一つが建屋の地下にあった。

 去年3月、村尾キャスターがその地下を取材した時の映像には、地下1階に緑がかった色の汚染水がたまっている様子が映っている。4号機では、この汚染水を抜き取るポンプの設置作業が現在行われているという。福島第一原発では、建屋に地下水が流れ込むことで汚染水が1日に300トンずつ増えている。そのため、タンクにためている水は去年1月の時点で約42万トンだったが、現在は約60万トンにまで増えている。

 この汚染水対策の切り札として建設されたのが多核種除去設備(=ALPS)。汚染水から62種類の放射性物質を除去できる。

 しかし、この切り札でも取り除けない放射性物質がある。それは「トリチウム」。トリチウムは水素の仲間で、酸素と結合し水となり、私たちが飲む水にも含まれている。ほかの放射性物質に比べ、人体に与える影響は少ないが、現在の技術では大量の水の中から簡単に取り除くことはできない。つまり、汚染水をALPSに通しても、トリチウムを含んだ水が残り、またタンクで保管する必要がある。

 先月、IAEA(=国際原子力機関)は福島第一原発を視察。視察団の団長は、トリチウムを含んだ水の処理についてこう発言した。

 IAEA視察団・レンティッホ団長「地元住民に受け入れられ、海水のモニタリングを行えば、トリチウムを含んだ水を海に放出することも有力な選択肢になる」

 トリチウムを含んだ水を海に放出して問題はないのか。環境中のトリチウムについて研究する専門家に聞いた。

 九州大学アイソトープ総合センター・百島則幸センター長「被ばくという観点から、トリチウムという放射性核種は相対的に安全であるということなので、回収せずに(海に)流しても大丈夫だというところから、世界では流すということになっている」

 これまで日本を含む世界の原子力発電所では、運転によって生じたトリチウムを、基準値を定めるなどして海に放出してきた。

 百島センター長「今でも(タンクの)腐食などで漏れる事故も起こっていますので、長い期間、水の形で保管するというのは難しいのではないか。(トリチウム水を)薄い状態にして環境に流してしまうほうが、より被ばく線量という意味からは安全性が高くなる」

 福島第一原発の周辺の海は、豊かな漁場でもある。6日、原発から45km北にある漁港では、試験操業で捕れた魚が水揚げされていた。

 現在、福島県の各漁協は原発から20km以上離れた海域で試験操業を行っている。漁協の組合長は、トリチウムを含んだ水の海への放出について、強い不安を抱いていた。

 相馬双葉漁協・佐藤弘行組合長(59)「廃炉に向けての汚染水対策の一環として、どうしても避けて通れない、そうした道だとなれば、致し方ない。しかし、色んな研究機関がありますから、少しでもトリチウムを取り除く、そうしたものを研究・開発してもらいたい」「一番復興で妨げになっているのは、風評。(トリチウムが)魚・海水には汚染は及ぼさないということであっても、消費者が受け入れてくれるのか、その辺がとても不安です」

 また先月には、東京電力が汚染された雨水の海への流出を約10か月間公表していなかったことが発覚した。

 佐藤組合長「隠すということが一番まずいですね。(東電と)漁業者の信頼関係が崩れたということで、(漁業関係者を)説得することが難しくなるんじゃないか」

 福島第一原発の所長に、この点をただすと。

 福島第一原発・小野明所長「データの公表を我々がしていなかったこと、これは本当におわびを申し上げるしかない。」「今、トリチウムの処理をどうするのかということは、国の委員会等でいろいろ検討されている。社会の方にご心配をかけないように、水をきっちり(タンクに)ためこんでいくことが我々に求められていることだと認識しています」

 4号機の使用済み核燃料の取り出しが完了するなど作業が進む中で、当面の課題は汚染水の処理だ。安倍首相は10日、汚染水対策について、「国が前面に立って取り組む」と述べた。ここで国・東京電力に求められるのは「透明性」だろう。情報の完全な開示は漁業関係者との信頼を築くだけでなく、風評被害を減らし、一般の消費者の不安を取り除くことにもなる。汚染水対策には処理技術のさらなる改良はもちろん必要だが、透明性を重視する組織への体質改善が大事だと感じた。

 原発事故を抱えた福島。そしてほかの被災地。それぞれの課題を抱えて、復興は5年目に入る。