「養子縁組あっせん」問われるルール作り
キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。14日のテーマは「養子縁組あっせん」。日本テレビ・小栗泉解説委員が解説する。
■親に恵まれない子ども
いま、日本には親がいなかったり、親元で暮らせないなどの子どもが約4万6000人いる。こうした子どものうち、8割以上の子どもが乳児院や児童養護施設などの「施設」で暮らしている。施設で暮らす子どもは、イギリスやアメリカでは3割以下、オーストラリアでは1割以下となっていて「施設から家庭へ」という動きが主流になっている。
国連も2009年の指針で家庭環境の優先と施設の廃止に向けた努力を促した。厚生労働省も「今後15年間で家庭での養育を全体の3分の1まで増やしたい」と話しているが、日本では、里親や養子縁組の受け皿は、まだまだ不十分なのが現状だ。
そこで、このうち養子縁組の民間のあっせんについて与党が法案をまとめた。今月2日、あっせん団体へのヒアリングが行われ「養子の候補となる子どもや、養子縁組の希望者のデータベースを作って欲しい」など、様々な意見が出された。
■不透明な実態も
厚労省によると去年の10月の時点で、日本に民間のあっせん団体は22ある。2012年度には116人の養子縁組が成立していて、家庭で子どもを育てることに一役買っている。一方で、一部で実費を上回るお金のやりとりがあったり、養子縁組に必要な生みの母の同意を出産前に取りつけるなど、不透明な実態も指摘されてきた。
そこで、今回の法案では、養子縁組のあっせん団体について、今の届け出制から許可制にしてルールや透明性を確保した上で、養子縁組を推進することを目指している。法案の中身を見てみると「届け出制から許可制に」「無許可あっせんに罰則を設ける」「営利目的のあっせんは行わない」などとなっている。自民・公明両党は、現在法案の作成を進めていて今の国会での提出を目指している。こうした法律が整備されれば規制と支援の両面が強化されることで、受け皿を増やすことができるかもしれない。
■法律ができることは歓迎するが…
法案について、養子縁組に詳しい日本女子大学の林浩康教授は「法律ができることで養子縁組への国の予算を確保できるようになり、あっせん団体のスタッフの教育や、業務内容の質の向上が図れるだろう」と話している。養子縁組のあっせん団体「ベアホープ」の代表理事のロング松岡朋子さんは「法律ができることは歓迎するが、あくまでも最初の一歩。今、養子縁組の希望者は、ほとんどが不妊治療を経た夫婦。すでに実子を育てている夫婦にも広がるといい」と話している。
■妊婦の支援も充実させるべき
養子縁組のあっせんは、児童相談所でもできるのだが、児童相談所は、増え続ける虐待の対応に追われて手いっぱいなのが現状だ。厚生労働省は養子縁組の相談や支援を新たに児童相談所の業務に位置づける児童福祉法の改正案を今の国会に提出することにしていて、体制の充実を図る考えだ。
もうひとつ大切なのは、生みの母親への支援だ。厚生労働省の調査によると、2014年度の中絶件数は18万1905件。生まれてくる赤ちゃんの約5分の1に当たる。日本女子大学の林浩康教授は「本来、生みの親が育てられる状況を整えることが大事。養子縁組のあっせんだけでなく、今後は妊婦の支援も充実させるべき」と話している。予期しない妊娠などで悩んでいる妊婦さんを妊娠中からサポートし、切れ目のない支援を行うことも重要だ。
■施設から家庭へ
今日のポイントは「施設から家庭へ」。養子縁組あっせんのルール作りが進み、透明性が高まれば、養子縁組の受け皿も増えるはずだ。また、児童相談所に養子縁組専門の担当者を置いて民間のあっせん団体との連携を進めるなど、社会全体で子どもを守り育てる取り組みが必要なのではないだろうか。