知られざる「五輪と花」種類は?本数は?
キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。2日のテーマは「五輪と花」。日本テレビ・小栗泉解説委員が解説する。
■五輪で欠かせない「花」
実は、オリンピック・パラリンピックで花は欠かせないものとなっている。必要な花は大きく分けて2種類。
1つは会場の装飾に使う花。例えば2012年のロンドンオリンピックの時は、草原をイメージしてメーン会場の周りに白やピンクの花を植えたという。
もう1つはメダリストへ贈られるビクトリーブーケだ。2020年の東京オリンピック・パラリンピックでも、こうした花が必要になるが、実際に東京オリンピックではどれくらいの花が必要になるのか。
■切り花100万本
日本花き生産協会の試算によると、会場装飾のための切り花は100万本、鉢植えは7万鉢、ビクトリーブーケは4296個必要だという。
これだけの量をいっぺんに、同時期に準備するのは大変だが、1964年の東京オリンピックでは花時計や聖火台に向かう階段が花で飾られた。ただ、この頃はブーケの贈呈はなかった。
ビクトリーブーケが定番となったのが、1984年のロサンゼルスオリンピックからとみられている。今やビクトリーブーケは欠かすことができないので、今回は1964年の時より多くの花が必要になる。
■国産の花でまかなう?
1964年の東京オリンピックは10月、秋の開催だったが、2020年の開催は真夏だ。夏に日本で咲く花は少ないので、これだけの量を用意するのは、簡単ではない。
しかし、農林水産省の担当者は「せっかくの日本開催なので、おもてなしという観点からも、何とか国産でまかないたい」と話している。
その対策として、農水省は去年、秋や冬の花を夏に咲かせ、オリンピック会場に輸送する体制を整えるための研究費などとして1億円の予算を要求した。
具体的には、真夏には咲かない大菊やスプレー菊、アジサイ、ダイヤモンドリリーの4種類の花をオリンピックシーズンに咲かせようという研究だ。
国がこうした花のノウハウを研究・開発して、そのマニュアルを全国の生産者に渡し、オリンピックの際には国産の花の生産を盛り上げようという計画だった。
ところが、この予算要求に去年11月、税金のムダを検証する「行政事業レビュー」は「税金を使って開発する必要があるのか」と指摘。これにより、この事業は廃止された。つまり、民間の業者による開発しかできなくなったわけだ。
オリンピックの花は大丈夫なのか。ビクトリーブーケへの使用が期待されている菊の開発を進めている広島・府中市のイノチオ精興園を取材した。
この会社では、真夏に咲く花の開発に既に3年かかっているという。しかも、オリンピックで使えるようにするには、より日持ちする強い品種にして生産性を高める必要があるので、まだまだ改良しなければならないという。
■花でおもてなし
オリンピック・パラリンピックの花の準備は、民間に任されたわけだが、ビクトリーブーケは日本の花を世界にアピールするチャンスでもある。
うまくいけば、花の輸出拡大につながるだろうから、知恵を絞って日本らしい“花”でのおもてなしができるようにしたいものだ。