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映画輸出 中国の巨大市場をつかむには

2016年12月9日 17:43
映画輸出 中国の巨大市場をつかむには

 今週、国内の興行収入が200億円を突破し、日本映画で歴代2位の大ヒットとなっている映画「君の名は。」。先週、中国でも公開が始まり、週末の興行収入ランキングで第1位となった。すでに、世界92の国と地域で配給されることが決まっている。


■まだまだ規模が小さい「海外輸出」

 実は、こうした「日本映画の海外輸出」は、まだまだ規模が小さい。国内の映画市場が2000億円前後なのに比べ、輸出額は去年、過去最高を記録したものの、140億円ほどだ。

 そんな中、先月、日本映画の輸出拡大を目指し、映画産業の海外展開に関する検討会議が首相官邸で開かれた。会議には、映画業界の関係者や、関係省庁の担当者らが集まった。

 政府と民間が一体となった輸出支援策などが議論され、特に映画市場の急拡大が続く中国への売り込みが重要なテーマとなっている。


■中国市場を席巻するアメリカ映画

 アメリカ、中国、日本の映画興行収入の推移を見ると、世界最大の映画市場はアメリカだが、中国の市場は2012年に日本を追い抜くと4年間で4倍以上に急拡大し、今や世界2位になっている。

 こうして見ると、中国にはビジネスチャンスがありそうだが、中国には「政府による規制」という大きな壁がある。国内の映画産業を保護するため、1年間に上映できる海外映画の本数を約60本に制限している上、政府機関による輸入審査があり、日本の映画も半年以上遅れて公開されることが多い。

 こうした規制の存在に対し、会議のメンバーからは「中国の映画市場においては政府の影響力が非常に大きいため、日本も政府にしっかり向き合ってほしい」という声が出ている。やはり民間企業だけの努力では、限界があるということになる。

 実は、アメリカは2012年、バイデン副大統領と習近平国家副主席(当時)の会談によって、中国国内の規制緩和で合意した。映画の輸入枠が20作品から34作品に拡大した上、利益配分の比率も13%から25%に引き上げられた。

 こうした中、中国の今年上半期における映画の興行収入トップ10のうちアメリカ映画は7つを占めており、中国市場を席巻している。

 それに対し、日本映画は今年、「君の名は。」を含めて11作品が中国で上映されているが、去年は2作品、その前の2年間は1本も上映されていなかった。


■今後、求められる取り組みは

 今回のポイントは「国を超えて映画に溶け込む」。日本でも人気のアメリカの映画シリーズ「トランスフォーマ-」の第4作目では、舞台の一部が中国となっている。

 映画の中身に中国の要素を溶け込ませることで、現地で多くの支持を得るという方法もある。

 さらに、今回の会議では、日中の映画共同製作協定の交渉を始めることも明らかにされた。共同製作の映画は、中国において国内映画として扱われるため、輸入規制を受けないというメリットがある。

 日中の共同製作映画としては、遣唐使として中国に渡った僧侶・空海の活躍を描いた映画「空海 KU-KAI」が2018年に公開される予定。

 総製作費150億円という超大作だが、協定によってこうした作品が増えていくかもしれない。映画をきっかけに日中の相互理解がより深まることも期待したい。