企業も後押し…婚活支援のあるべき姿とは?
厚生労働白書によると、50歳時点で一度も結婚したことがない「生涯未婚率」が近年、急激に上昇している。2015年は男性は24.2%、女性は14.9%だが、2035年には男性が29.0%、女性が19.2%に上ると推計されている。
――結婚に魅力を感じないということなのか。
一見、そう見えるが、実はそうでもない。2015年に行われた出生動向基本調査によると、未婚者の9割弱が「いずれ結婚したい」と考えていて、独身でいる理由として多かったのは「適当な相手にめぐり合わない」という回答だった。
では、「結婚相手とどこで出会ったか」を見ると、「職場や仕事で」が約3割を占めている。今月20日、内閣府で開かれた有識者検討会では、少子化対策の一環として、結婚を希望する男女の「婚活」を企業がどう支援していくか議論が交わされた。
――企業が婚活支援とは、具体的には何をするのか。
独自の婚活支援を行っているということで表彰された「日本ATM」という会社は、独身社員がコミュニケーションをとることができるSNSサイトを開設しており、社内結婚に対しては祝い金を贈っているという。
――なぜ、企業が社内結婚をバックアップするのか。
職場に家族的な結束が生まれたり、幸せを分かち合うことが職場の雰囲気を良くしたりする面がある。ただ、実際にカップルが生まれなくても、こうした取り組みは職場内のコミュニケーションを活発化させるので働きやすさを生み、離職率を低下させる効果があるとも言われている。
一方で問題もある。2014年6月、東京都議会で、独身の女性議員に対して、「早く結婚した方がいい」などとヤジを飛ばした男性議員が「セクハラ」などと大きな批判を受け、謝罪に追い込まれた。
実は、女性従業員の5割弱が、社内で「まだ結婚しないの?」などといった発言をされた経験があり、その多くが「不快だ」と感じていて、企業の結婚支援にはデリケートな部分もある。
検討会の提言も、元々の案からは変更を余儀なくされた。提言には、企業内の交流の場作りや社員が結婚支援サービスを利用する際の費用補助といった取り組みが盛り込まれた。しかし、企業内の既婚者が独身者の相談に乗る「婚活メンター」制度や、効果を上げた取り組みをしている企業の表彰制度は「結婚へのプレッシャーを与える」との批判もあり、削除された。
その上で「結婚して一人前」といった特定の価値観を、個人に押し付けることはあってはならないと念押しもした。
■婚活支援の王道は働き方改革
出生動向基本調査によると、結婚の意思を持つ未婚者の「結婚の障害」について聞いたところ、「結婚資金」と答えた人が約4割と最も多く、「職業や仕事上の問題」と答えた人も約2割いた。
そのため、今回の検討会の提言でも「非正規労働者の処遇改善」「長時間労働の是正」といった働き方改革によって、安定的な収入や十分な生活時間を確保することが重要と指摘している。
IT企業の「サイボウズ」では、ワークライフバランスに配慮し、在宅勤務や、育児・介護休暇制度を最長6年間認めるなど、働き方改革に力を入れた。こうした取り組みが始まったここ10年ほどで、結果的に社内結婚が増えたという。
婚活は無理に「カップル」を作ることを考えるのではなく、働き方改革を進めることが大事だ。そうした中で、結果としてカップルが生まれるというのが自然なのではないだろうか。