日本の特産品を守れ!対策と取り組み
長野県の特産品「市田柿」。やわらかいアメ色の果肉が特徴の干し柿だが、中国で作られた「中国産」と書かれた市田柿の模倣品も出回っている。
こうした日本の特産品の偽物は、海外でも出回っている。兵庫県内で育てられた良質な但馬牛だけが名乗れる「神戸ビーフ」。ところが、アメリカのある飲食店のメニューを見ると、「KOBE BEEF」と書かれている。日本の生産者団体によると、この飲食店に「神戸ビーフ」、つまり兵庫県産の但馬牛は輸出していないという。
こうした中、農林水産省は今月17日、海外で出回る日本の特産品の偽物をどのように防ぐかなどについて話し合うシンポジウムを開いた。
2015年から導入されている「地理的表示保護制度」で、去年、法律が改正され、国をまたいで特産品を守る仕組みができたことを受け、その活用法が話し合われた。
■国が特産品を“ブランド認定”
この「地理的表示保護制度」は、国が特産品を審査して品質など基準を満たしているものを地域のブランドとして認定し、登録するもの。現在、登録されているのは24品目で、「谷田部ねぎ」「夕張メロン」「神戸ビーフ」「市田柿」の他に、「くまもと県産い草畳表」や「伊予生糸」といったものもある。
特産品には、富士山をモチーフにした「GIマーク」をつけることが許されていて、例えば別の産地のメロンなのに「夕張メロン」として日本国内で販売している業者に対し、国が取り締まり、悪質な場合には懲役刑や罰金を科すことができることになっている。
――こうした制度は、外国で出回る偽の特産品にも適用されるのか。
地理的表示の保護については国際条約があるが、条約だけで取り締まれるわけではない。ただし、条約を締結している国には、地理的表示を保護することが求められているため、今では100以上の国が地理的表示に関する法律を整備している。
ただ、これらはいずれも、それぞれの国の国内ルールなので、日本の生産者が海外で特産品の偽物を取り締まってもらうためには海外の国々で申請をし、登録をしなければならないのが原則となっている。
しかし、昨年の法改正によって、日本が他国との間で協定を結べば、日本で地理的表示として保護されるものについては相手先の国で改めて登録をしなくても、相手の国が取り締まることができるようになった。
また、海外から偽の特産品を輸入した業者は、それを日本で販売してはならないといったルールも作った。
――海外で作られた偽の特産品への対策を日本が強化する狙いはどこにあるのか。
消費者が勘違いして偽物を購入してしまうと、本物の特産品が売れなくなることを警戒している。
特に海外の場合には消費者が本物の味を知らないため、商品の名前につられて偽物を買ってしまう可能性が高いし、質の劣るものを本物と信じることでブランド価値が低下してしまうといった問題がある。
その結果、「日本からの輸出の妨げになるのではないか」という点が心配されている。
実は、日本の輸出額は農産物だけで比較をしても、世界に比べて低いのが現状だ。1位のアメリカは約16兆8400億円、2位は九州とほぼ同じ面積のオランダで約10兆3700億円だ。
これに対し、日本は約3600億円と突出して低い。これを打破するためにも、地域の特産品を守ることは大事だ。
――今後、どういった取り組みが必要なのか。
今回のポイントは「海外向けセールスも」。いくら地理的表示の海外での保護を強化しても、それだけで輸出が増えるわけではない。まずはその商品自体を売り込むことが大事だ。
その意味では、やはり海外向けセールスをどうやって成功させるか、官民を挙げて検討することが必要だと思う。