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日本各地で行われる「芸術祭」成功の鍵は?

2018年8月8日 18:29
日本各地で行われる「芸術祭」成功の鍵は?

世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見を聞く「opinions」。今回の話題は「地域創生とアートの親和性」。“ディスカバー・ジャパン”の統括編集長・高橋俊宏氏に話を聞いた。

今年も日本各地で行われる地域密着型アートプロジェクト「芸術祭」。3年に1度、新潟県十日町市などを舞台とする「大地の芸術祭」も始まり、多くの人でにぎわう。

芸術祭など地域アートについて、ネット上ではこんな意見が見られた。

「作品鑑賞きっかけで、知らない土地を訪問できる」
「アートでの地域おこし 経済効果もある」
「自治体が税金をつぎ込んで、動員できないケースもある」


――この話題について高橋さんの意見をフリップに書いていただきました。

「アートは再発見の装置」です。

これはですね、現代アーティストの方々がその地域に入り込んでいって滞在をして、その土地の歴史や背景とかを解釈して作品をつくり上げるんですね。そういったものができますと一見、現代アートは奇抜だったり、ちょっと見方がわからないとかあると思うのですが、実は深い意味のもとつくられております。

作品があることによって、アート作品の向こう側にある山並みや自然の風景とか、そういったものの美しさに気づくんですよね。だから「装置」といっているんですけど。何もないよりもアートがあることによって、その土地の風景が違ったものに見えてくる。まさにそこが現代アートの「力」かなと思っています。


――一方でネット上の意見にもありましたが、動員できないケース、成功に至らないケースもあると思うのですが、その別れ道というのはどこにあるのでしょうか。

それは「大地の芸術祭」がきっかけとなって、各地で芸術祭ができているのですが、いわゆるキュレーターといって、一流のアーティストがつくらないと良いものができないんです。つまり、文化祭レベルになってしまうんですね。そうなると人が見に行きたいとはなりません。

とりあえずアートを置いてはみたけれど、そんなに価値のないものを置いてしまった場合、動員に困っているというところは結構、見受けられます。


――一流の方とそうでない方の違いはどこにでるのでしょう。

そこが土地の文脈ですね。深くしっかり読んでいるかどうか。例えば、新潟の「大地の芸術祭」も、先ほど、縄文の話も出ましたが、国宝の火焔型土器(かえんがたどき)が出ているんですね。そう考えると、あの土地自体は1万年前からアートの場所だったというようないい方もできるわけです。

そこまで深く読み込んだアーティストが、やはり一流であったり、世界で活躍されている方だと思います。そういう方を動員できるかですね。


――ただその土地にポーンと行って盛り上げるではなくて、いかにその地域や歴史、地元の方を巻き込んで盛り上げられるかが重要ということでしょうか。

巻き込むのと、魅力をまさに再発見して、作品を置いて“装置”として楽しんでもらうという、そこまでの絵を描けるアーティストがいるかどうかだと思います。


――そういった上で「アートは再発見の装置」につながるということですね。

【the SOCIAL opinionsより】