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こどもの日特集 子どもの権利をまもるとは、子どもの声を聴くこと 生活の中で子どもに「選ぶ」自由がある文化を子どもの権利に詳しい甲斐田万智子さん

2025年5月5日 10:04
こどもの日特集 子どもの権利をまもるとは、子どもの声を聴くこと 生活の中で子どもに「選ぶ」自由がある文化を子どもの権利に詳しい甲斐田万智子さん
こどもの権利について知り話し合うワークショップ提供:C-Rights

きょうはこどもの日。2023年4月に施行された『こども基本法』は子どもの意見表明権を定め、国や地方自治体には子どもに関する政策を作る際には、子どもの意見を聴く仕組みを作ることを義務付けています。子どもの意見を聴くとはどういうことなのか?認定NPO法人国際子ども権利センター(C-Rights)代表理事、甲斐田万智子さんに聞きました。

──子どもの権利を守るとか子どもの意見を聞くといいますが、どのようにしたらいいのでしょうか

実は言葉が話せない赤ちゃんも意思表示をしていますし、大人が聴く姿勢を持てば、子どもの声を聴けるとは私たち子どもの権利にかかわる者が言っていることです。逆に聴こうとしなければ、聴こえない。子どもの声を聴くには、日頃からどんなことでも話していいと子どもに伝えることが必要です。特に家庭の中では親が忙しいと遠慮したり、心配かけたくないからこんなこと言っちゃいけないと思って話さない子もいます。

子どもの声を聴くには、安心・安全の環境を作ることと、日頃から子どもがいろいろなことを選ぶ自由があるのがあたりまえの生活にすることですね。例えば、保育園・幼稚園に行く時、「今日、どの靴下はきたい?」と子どもに引き出しの中を見せて毎日選ばせていた人がいます。日々の生活で、大人が子どもに聞かずに決めがちですが、子どもに選ばせる機会を与えていると意見表明の力がついてきて、自己肯定感も高まる。子どもが、自分は選ぶことができる存在、つまり権利の主体なんだと、実感できる。すると性的な自己決定権でも、あるいはいじめられたり差別されたりした時に、これはおかしいと感じて、はね除ける気持ちが育つと思います。家庭、学校、施設や地域で子どもが選べる、意思を表示できるようにする。意思表示することは「わがまま」ではなくて、あたりまえの権利を行使しているだけと考えるように社会が変わっていくことが必要じゃないかと思います。

──しかし大人からすると子どもにいちいち選ばせると効率が悪いし、たとえば洋服などもとんでもない組み合わせを着るんじゃないかなど不安もありそうです

子どもを信頼してみてください。たとえば時間がかかることが気になるなら「着るものを選ぶのに時間がかかって家を出るのが遅れちゃうから、解決したいんだけど、どうしたらいいと思う?」と尋ねて、何時に起きればいいかを一緒に考えるとか。男の子でスカートを着たがる場合、いわゆるジェンダーバイアス(性別をめぐる思い込み)によって男の子だからこう、女の子だからこうと大人は言いたがりますが、社会からは風当たりが強くても、子どもが着たいものを認めてあげることが子どもの権利を守る社会につながると思いますね。「ゲームばかりして宿題しない」という時にも、「ゲームをやめなさい」と言うんじゃなくて、「ゲームを何時間もすると勉強の時間もなくて、将来的にあなたがしたい仕事ができなくなるかもしれない。どうしたらいいと思う?」と、子どもと相談してみて下さい。こどもが「じゃあ学校から帰ってきて最初1時間はゲームするけども、その後の時間は宿題する。」などと彼ら自身が学習計画を立てる形にする。子どもは「宿題しなさい」と言われたら、むしろやる気がなくなりますよね。自分で決めれば、自分でやろうとするようになるので、子どもの主体性を大切にすることで逆に大人は楽になると私は思っています。子どもの意思を無視して「あなたにはこれが必要だから、こういう勉強をしなさい」「この塾に行くのがいい」と言うのでなく、「あなたはこういうことが好きだから、例えばピアノ習ってみる?」とか「サッカーとこれとこれのスポーツ教室があり、他にも選択肢があるから考えてみて」と、提案をして、子どもの意思をきいて決めることが大事だと思います。

2022年に生徒指導提要が改正され、校則の見直しをするように文科省から推奨されています。その際、校則が子どもの権利を尊重し、校則の制定には、子どもの意見を聴くこととされています。そして、こども基本法の施行にともない、多くの学校で校則を見直し、子どもと一緒に変える動きがありますよね。子どもたちが案を作り、先生と協議して作った校則なら、子どもたちは責任持って守っていこうとすると思います。