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活字離れは本当?現場はどう捉えているか

2019年11月22日 15:38
活字離れは本当?現場はどう捉えているか

世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見を聞く「opinions」。今回の話題は「活字離れは本当か?」。小学館マーケティング局の出村大進氏に聞いた。

活字離れが言われて久しくたつが、公益社団法人全国出版協会の調べによると、紙の出版物の市場は、年々減少する方向にある。一方、電子出版物の市場は、紙の市場の減少を補うまでには至らないが、徐々に伸びている。

また、全国学校図書協議会の調査によると小、中、高校生の読書量について、ひと月の間に読んだ本の数は、2000年以降、高校生についてもほぼ横ばいだが、4年生から6年生までの小学生と、中学生については上昇傾向にある。

様々な調査、データがある中で、果たして、本当に活字離れが起こっているのか?出版の現場にいらっしゃる出村さんに聞いてみる。


――出村さん、まずは、フリップをお願いします。

『アフターデジタルの世界へ』と書きました。私は今まだ活字離れが起きていないと思っておりますが、今後は必ず起きてくると思っています。

例えば2000年も前から昔は、人々は今と同じように、争いとか仕事とか家族で悩んで、その悩みのヒントを少しでも後世に「残したい」という熱い思いを「伝えたい」と思った人たちが、本を書いてきたと思いますので、本には2000年の英知が詰まっていて、最も人類の英知が詰まっているメディアというのは活字というのは、私は間違いないと思っています。

ただ、今は映像とか音とか視覚、聴覚で伝え手が、より熱い思いを伝える手段が選べるようになってきたことがありますので、これはとても素晴らしいことだなと思ってます。さらに香りとか肌触りが伝えられるメディアも今後必ず登場すると思いますので、より熱い思いが伝わりやすい、素晴らしい世界になることは、間違いないと思います。ですから、活字離れが起こるイコール他の感受性が豊かになるということではないかと私は考えています。


―――すごく前向きに捉えていらっしゃるんですね。この流れの中で、出版業界ではどんな対応を考えていらっしゃいますか。

そうですね。時代の流れというのを必ず対応していかなければいけないので、デジタル化をするっていうのは当たり前で、その先のアフターデジタルの世界というモノをというのを考えていかなければいけないなと思ってます。

デジタルでつながるってことを前提として、それも当たり前としてデジタルにつながって、それよりもその先に、より顧客とタッチポイントを作れるかっていうのがポイントになってくると思ってます。例えば小学館でも「きれいになれるベトナムツアー」をやったり、「ナイトプール」をやったり、雑誌がアウトドアをテーマにした公園を作ったりとか出版を軸に様々な事業を行っておりますので、今後もそういったアフターデジタルの世界を見ながら事業を行っていきたいなと思ってます。


―――すごいですね。広がっていきますね。

アナログからデジタルになって、デジタルが当たり前になると、またアナログに戻るような世界観かなと思ってます。


―――それは、とっても消費者側としては便利な世界になっていきますよね。

そうですね。より顧客ニーズに合った多くのサービスを生むことができるかなと思っています。


■出村大進氏プロフィル
小学館に入社後、雑誌、マンガなどの編集を経て、2010年マーケティング局のコミック担当に。徹底したマーケティング戦略に基づき、ヒット作に次々と携わっている。その一方でマスコミやメディア、出版に携わる人々を中心とした勉強会「一冊会」を主宰。毎月、議論を交わしている。この勉強会では多くのアイディアが集まり、新しいプロジェクトが次々と生まれている。本の力、メディアの力で世界を幸せにしたいという。


【the SOCIAL opinionsより】