日テレNEWS
社会
2022年5月27日 9:24

スポーツで熱中症に…防ぐには――“救急車”呼ぶべき「3つのタイミング」 気温20度で野球部員が死亡…コロナ感染も「検温せず」 

スポーツで熱中症に…防ぐには――“救急車”呼ぶべき「3つのタイミング」 気温20度で野球部員が死亡…コロナ感染も「検温せず」 

岐阜の大学で、野球部員が熱中症とみられる症状で倒れ、翌日死亡しました。練習中の気温は約20度。部員は新型コロナウイルスに感染していたものの検温されず、救急車では搬送されませんでした。運動時の熱中症対策や、救急車を呼ぶタイミングを考えます。

■重い「熱中症」…部の車で病院へ

岐阜・大垣市の岐阜協立大学で14日、硬式野球部の4年生の学生(22)がランニング中に倒れ、翌日に死亡しました。学生は重い熱中症の症状がありましたが、監督は救急車を呼ばず、部が所有する車で病院へ搬送しました。

大学によると、ランニングはグラウンドで1時間近く、約30人で行われました。学生が倒れたのは14日午前11時ごろ。その時の様子について、部員は「見た目は最初から脱水症状という感じでした」「応答がうまくできていなかったとは聞きました」と言います。

一方、当時の大垣市の気温は約20度で、部員も「曇りで風通しもあって、走っていても涼しい。脱水症状になるような天候ではなかったと思います」と振り返ります。

■学長「救急車の方が早かったのでは」

搬送までに約30分かかりました。学長は26日の会見で、救急車を呼ばなかったことについて「(判断が)間違っていたと私は考えています。救急車を呼んで待って搬送するより、部の車で運んだ方が早いという認識で動いたのだろう」と説明しました。

トレーナーらが応急処置をしましたが、学長によると症状が改善せず、搬送することに。「想像していたより(搬送に)時間がかかっていて、やはり救急車の方が早かったのではないか、という疑問は当然持たれると思います」と学長は述べました。

学長によると、当時、救急車を要請する声は上がっていました。死亡した学生の症状は「かなり重かった。会話はできなかったと聞いています。意識レベルとしても低かった」と言います。

■通常より長いランニング

ランニングは通常20~30分といいますが、14日は約1時間と長くなっていました。

学長は会見で「コーチからの指示を受けてのランニングです。学生たちと話し合いをして走り込みをしようと確認をした」「罰という認識のもと行われていたのか、断定してここでお答えできませんが、問題点があるならば正していかないといけない」と述べました。

■体温把握できず…コロナとの関係は?

死亡した学生は新型コロナウイルスに感染していたことも分かりましたが、部内の体調管理に問題がありました。学長によると、体温は指導者が計測し、記録・提出する手はずでしたが、学生の体温は把握できていませんでした。

学生は気温が20度ほどでも熱中症と思われる症状になり、死亡しました。新型コロナとの関連はあるのでしょうか?

国際医療福祉大学・松本哲哉主任教授(感染症学)
「それほど暑くない状況で急にとても状態が悪そうになるということ自体が、やはり単純に熱中症だけだと考えるのは難しい。感染があったからこそ、通常よりもさらに悪化してしまったことは考えられます」

「自覚症状で大丈夫と判断しても、ウイルスも増えて、体の中で感染がそこそこひどい状況になっている場合もあります」

大学は監督とコーチを自宅待機にしていて、今後は第三者による調査委員会を設置し、対応に問題がなかったか調査していくとしています。

■休憩しやすい練習メニューに変更

熱中症が増加する夏を前に、大学の部活動ではどのような対策をしているのでしょうか。26日、東京・武蔵村山市の東京経済大学サッカー部を訪ねました。気温は約21度。マスクを外し、学生たちが約4時間の練習に励んでいました。

監督は熱中症対策について「30分走り続けると(水分を)取るタイミングがないので、こまめに水分を取れるように工夫をしています」と言います。

暑さが増してくるこの時期は、短い間隔で休憩できる練習メニューに変更。激しいトレーニングでは2分に1回、試合形式では15分に1回は休憩します。

■「指導者の声かけ」と「体調確認」も

約120人の部員に無理させないよう、声かけも重視。監督は「頑張りたいとか試合に出たいとか、(思いを)くみ取ってあげないといけないと思いますが、命に関わることになってしまうといけないので、様子を見て『休憩しろ』と言うようにしています」と話します。

また練習前には必ず検温を行い、熱がある場合には帰宅するよう指導しています。それでも熱中症で倒れてしまった場合は、練習場のすぐ横の医務室に常駐する看護師の指示を仰ぐといいます。病院に搬送すべきかどうかも、素早く判断できる体制にしています。

会話ができないほど重い症状の場合はどうするのか―。監督は「重度の熱中症だと思うので、すぐ救急車を呼んで救急搬送してもらうのが大事だと思います」と言います。

■救急車を呼ぶ「3つのタイミング」

有働由美子キャスター
「今回(の岐阜の死亡事故)は意識がはっきりしない状態でしたが、救急車を呼ばずに野球部の車で病院に運んでいました。廣瀬さんはこの対応をどう思われましたか?」

廣瀬俊朗・元ラグビー日本代表キャプテン(「news zero」パートナー)
「仲間が熱中症で意識障害になったことがありましたが、すぐに救急車を呼んで大事には至りませんでした。今回のように意識障害がある場合はすぐに呼ぶべきです」

有働キャスター
「そうですね。ただ、救急車をいざ呼ぶという時に一瞬ためらうという方もいらっしゃるかもしれません。どのタイミングで呼んだらよいでしょうか?」

小栗泉・日本テレビ解説委員
「日本スポーツ協会のガイドブックに、救急車を呼ぶ『3つのタイミング』があります。まずは意識障害があるかないか。応答が鈍い、言動がおかしいなどの意識障害があればすぐ要請し、待っている間に涼しい所で服を脱がせ、全身に水をかけるなど、体を冷やします」

有働キャスター
「意識障害がない、つまり受け答えができる場合は?」

小栗委員
「2つ目のタイミングとして、水分が取れなければ救急車を呼ぶということです。さらに、水分が取れたとしても症状が改善しなければ要請してください」

有働キャスター
「今回は会話ができない状態でしたから、そういう場合はすぐ呼ぶということですね」

小栗委員
「中京大学スポーツ科学部の松本孝朗教授によると、今回のように自家用車などで運ぶことはダメではないものの、知識のある人が対応した方が安全なので、基本は救急車を呼んだ方がいいということです」

■廣瀬さん「リアクションに注意を」

有働キャスター
「これから気温もぐっと上がります。スポーツの時以外でも、熱中症は起こります。私たちもこの3つのタイミングは覚えておきたいと思います。廣瀬さんはお子さんらにもラグビーを教えていますが、どんなことに気をつけていますか?」

廣瀬さん
「コーチングする時は一人ひとりの顔つきや、リアクションを(注意深く)観察します。みんなが集まって話している時にきちんと話を聞けているのかな、しんどそうな顔をしていないかな、などです」

「練習中においては反応が悪い時に、ちょっとサボっているだけなのか、本当に違う理由があるのかなどを気にします」

「普段から接しているのであれば、普段とのギャップといいますか、普段元気そうな人が元気ではなかったら何かがあったのかな、というように、一人ひとりと向き合うことが大事だと思います」

有働キャスター
「周りが気づいてあげるということも大事ですし、なんといっても熱中症にならないのが一番です。(日本スポーツ協会による『スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック』にある)『予防の5ケ条』には『体調不良は事故のもと』があります」

「(新型)コロナもまだ油断できません。体調が少しでも悪いなと思った時には、運動・スポーツは控えることを、みんなで徹底していきましょう」

(5月26日『news zero』より)