10代は社会から“ネグレクト”されている――子どもたちの悲痛な声を聞くNPO代表の実感 【子どもたちが、生きやすく】
■社会から“ネグレクト”される10代
いろんな子ども支援ができても利用者は10歳以下ということが多いのが現状です。子ども食堂や児童館もそうですが、大人が想像しやすい「子ども」である10歳以下に届くものは増えるけれども、一番難しい思春期の子向けにはなかなか増えない。もしかしたら社会から一番ネグレクトされている存在かもしれないと感じます。こども家庭庁もスタートしますが、子ども政策が10代の子どもたちにも向けられることを願っています。
――「社会からネグレクトされている」というのは、ショッキングな言葉ですが、それが現場での実感なのでしょうか。
そうですね。親の期待を背負って、学校や部活のコーチの期待を背負って、社会の期待を背負っているけど、じゃあ自分は誰が守ってくれるのっていうと、誰も守ってくれてないというのが10代なんじゃないかなという感覚はとてもあります。
■大人の役割とは?
――ユースセンターを開設して1年。どんな課題がありますか?
スタッフの研修や育成に苦労しています。どうやって介入して援助していくか、どうやって更生させるかという考えの人たちが多い。だから「ちょっと待ってください」と止められる事がスタッフには違和感がある。アプローチの仕方が違うんですね。
ユースセンターで子どもたちが休んでいるのに話しかけたくてしょうがないし、自分が助けてあげたくてしょうがないし、自分の幼い頃の話をしてあげたくてしょうがない。それが子どものためになるのかっていうのを冷静に考えることよりも、目の前の子たちに何か自分がやってあげたいっていう気持ちが先行してしまうんです。子どもたちはせっかく安心して使っているのに、求められていないのに干渉してしまう、それを止めるのがすごく大変です。
――大人としては子どもを思ってのことでも、子どもの視点からみると、それは求めていることと違うこともあるんですね。
そうなんです。だって親と一緒なんですよね。「ほっといてはいけない」「この子をなんとかしなきゃいけない」と親も思っているから。「あなたはこうしなきゃいけない」とか「私が何とかしてあげる」「もっと頑張れ」というメッセージを子どもたちは第三者から言われていることになってしまいます。子どもたちは、そこから逃げたくてどこかに行きたいのに。結局、その場所には行かなくなるんだと思います。誰も悪気はないんですけれどね。
10代の子どもたちが本当に何を求めているのか。ひとりの個人として尊重しつつ、時には待ちつつ、子どもたちが休みたい時には、それを安全な形で保障するということも大人の役割だと思います。自分が焦って子どもにぶつけるというのは、もしかしたら子どものためという名目のエゴかもしれない。私たちの取り組みに共感して入ってくるスタッフですら、なかなか止められない。やはり子どもの声をちゃんと聞く、子どもが何を求めているか冷静に大人が考える、その重要性を感じます。