感染「警戒」引き下げ約2か月ぶり ナゼ?
10日、約2か月ぶりに東京の警戒レベルが引き下げられました。また、ワクチン開発をめぐっても新たな動きが。最新の情報を解説します。
■ 東京都 感染警戒レベルを引き下げへ
10日の東京都の新たな感染者は276人で、7日ぶりに200人を超えました。
東京都は10日、モニタリング会議を開き、感染状況について、これまで8週連続で警戒レベルが最も深刻な赤「感染が拡大している」から、オレンジの「感染の再拡大に警戒が必要である」に一段引き下げることを決めました。
主なモニタリング項目をみると、9日までの1週間平均で新規陽性者数は148.6人と、先週の183.1人から減少しました。このほか、感染経路不明者数、入院患者数、重症患者数も先週より減少しました。
ただ専門家は、減少速度は未だに緩やかで、クラスターが複数発生すると感染者はすぐに増加するとして、警戒するよう求めています。
東京都医師会・猪口正孝副会長
「(新規感染は)依然として高い水準で推移しており、再び増加することへの警戒が必要な状況に変わりありません。医療提供体制は負担が長期化している。その疲労は確実にたまってきている」
■「警戒レベル引き下げ」による2つの動き
こうした中で、東京都民の生活にも2つの面で影響が出てきます。
1つは、GoToトラベル。
政府は10月1日から東京を追加する方向で検討していることが分かりました。しかも小池知事は西村大臣に、都を対象とする際には都民と事業者に上乗せした支援を行うよう要望しました。
期間の延長なのか、金額の上乗せなのか、具体的にはまだ分かりませんが、国に何らかの上乗せ支援を要望しています。GoToトラベルが開始されてから1か月半ほど経ちますが、東京だけの除外が続き、小池知事は都民の不公平感を払拭したい考えです。
もう1つは、営業時間の短縮要請。
東京23区内の酒を提供する飲食店とカラオケ店は、9月15日までは夜10時までの営業の短縮が要請されています。これは、予定通り15日に終了することになりました。
再拡大させないよう警戒は続けないといけませんが、気になるワクチンをめぐり、大きな動きがありました。
■英「アストラゼネカ」ワクチン臨床試験が一時中断
世界のワクチン開発の現状ですが、いま臨床試験まで進んでいるのは35種類で、そのうち最終段階まで進んでいるのが8種類。先頭集団を率いるイギリスのアストラゼネカのワクチンが8日、臨床試験で一時中断されました。
臨床試験の参加者に重い副反応が出ている疑いがあり、安全確認のため、日本でも始まったばかりの臨床試験が一時的に中断されたのです。
ただ、試験の最終段階で副反応が出るのは珍しいことではありません。きちんと因果関係を突き止めて、開発を進めるべきかやめるべきか、科学的に判断することが大切です。
この臨床試験は段階を追って進みますが、大人数で行う最終段階がとても大事です。ただ、このステップを省いたり簡略化しようとする動きが出ています。
■ワクチンめぐる政治的思惑、大手製薬会社は協力してけん制
アメリカのトランプ大統領は「10月中に実用化の可能性がある」と繰り返し述べています。明らかに11月の大統領選の直前にワクチンを完成させ、自らの成果としてアピールしたい思惑がにじんでいます。
アストラゼネカの件のように副反応が出るケースもあるため、やってみないと誰にも分かりません。ただ一部の報道によると、トランプ大統領は最終段階で本来3万人に試験すべきところを、1万人で結果が出た段階で「緊急使用許可」を出すことを検討しているといいます。
しかし、これにはワクチンを承認する機関の高官も、政治的圧力に屈して承認されるようなことがあれば辞任すると主張しているとの報道もあり、トランプ政権と保健当局や専門家の間に確執が起きています。
他にも、ロシアは8月、国産のワクチンを世界に先駆けて国内で承認しましたが、実は臨床試験の最終段階をやる前でした。専門家からは懸念の声が上がっています。
さらに、中国でも臨床試験が終わる前の7月から、医療関係者などに緊急投与が始まっています。
9月4日には北京でワクチン展示会まで開催し、シノファームなど2社が開発中のワクチンが公開されました。「年末には販売を始め、日本にも提供したい」としています。
こうした動きを懸念して、欧米の大手製薬会社9社が8日、異例の共同声明を出しました。声明では「安全を最優先し、科学的・倫理的な基準を順守する」などと宣言。臨床試験で安全性と効果が証明された場合のみ承認を申請する、としています。
ライバル企業がこうした共同声明を出すのは異例のことです。政治的な圧力に屈して承認申請を急ぐのではないか、との懸念を払拭したいという焦りが感じられます。
ワクチンは治療薬と違い大勢の健康な人が接種するものですから、安全性の確認はより厳密に行われなければなりません。一部の国で起きているように、政治的な圧力や覇権争いなどに影響されることなく、科学的なデータに基づいて承認プロセスを進めてほしいと思います。
(2020年9月10日 16時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)