コロナ医療の現状 指標と現場感覚にズレ
新型コロナの感染者数が、世界では6000万人を超え、日本国内でも感染拡大が止まりません。
政府や専門家は「今後3週間が勝負だ」として、集中して感染拡大を抑えるよう協力を呼びかけています。
■専門家「重症者数の増加が予想」と強い危機感
東京では26日、新たに481人の新型コロナウイルスの感染が確認され、重症者の数も60人となり、緊急事態宣言の解除後で最多を更新しました。
東京都のモニタリング会議では、感染状況の警戒レベルについて、「感染が拡大していて、最も深刻なレベル」を維持しました。その上で、専門家は「重症化リスクの高い、高齢者の新規陽性者数が増加している」と述べています。
一方で医療の提供体制は、上から2番目の「体制強化が必要」が維持されましたが、専門家は、「今後、重症患者数の増加が予想され、通常の医療体制との両立が極めて困難になると思われる」と強い危機感を示しています。
■ステージ3の地域 どんな対策が必要?
政府の分科会が25日の発表した提言によりますと、「一部の地域では、感染状況が2番目に高い『ステージ3』としての対策が必要だ」ということです。『ステージ3』とは、「感染者が急増し、医療の提供体制に支障が出てきている段階」というもので、さらにひとつ上の『ステージ4』になると、「爆発的な感染拡大がおき、医療の提供体制が機能不全に陥っている状態」で、緊急事態宣言が発動されるレベルとなっています。
分科会は、「判断するのは都道府県」とした上で、札幌市、東京23区、名古屋市、大阪市が『ステージ3』に相当するとの認識を示しています。
分科会は政府に対し、『ステージ3』の対策が必要な地域では、3週間程度の間、集中的により強い対策を講じるよう新たな提言をしました。
提言のポイントは以下の3点です。
(1)酒を提供する飲食店への時短営業要請と利用の自粛
(2)他の地域との往来を自粛
(3)GoToトラベルの「目的地」だけでなく「出発地」も一時停止
分科会の尾身会長は25日の会見で、「感染拡大を防止するには、人々の行動も大事だし、やっぱりここまで来ると、人の動きによる接触はものすごく重要です。
『ステージ4』になることは絶対に避けるように、みんながその気になればできると思います」と話しました。
■ステージ3の地域 医療提供体制の現状は?
専門家が最も懸念しているのは、「必要な医療が提供できなくなる」ことです。
「ステージ3相当だ」と指摘を受けた、札幌市、東京23区、名古屋市、大阪市の医療の提供体制の現状を、分科会の指標のうち、「病床使用率」「重症用病床使用率」「人口10万人辺りの療養者数」の3つでみると、「病床使用率」では、4つ全ての地域で『ステージ3』の目安となる数値です。
地域別では、東京と大阪では3つの指標全てにおいて『ステージ3』の目安となる数値になり、
また、北海道では「療養者数」が『ステージ4』の目安となる数値となっています。
「病床使用率」の数字だけを見ると、3割から4割とまだ余裕があると思うかもしれませんが、実情は違います。
日本医師会は「国が発表する病床占有率を見る限り、まだ余裕があるかのように見えるかもしれませんが、現場感覚と著しいずれがあります。現実には医療スタッフの不足もあり、受け入れ可能な病床は満床の状態です」と強い危機感を示しています。
数字では病床が3割しか埋まっていないように見えても、「コロナ用に準備が可能な病床数」の3割であって、今すぐに使える病床という意味ではありません。
■全国の重症者数 60代以上が8割
医療現場のひっ迫クローズアップされている中、全国の重症患者は、11月24日の時点で376人で過去最多となりました。
11月18日の時点で192人いた重症者を年代別でみてみると、30代以下が4人であるのに対して、60代が38人、70代が74人、80代以上が40人と、60代以上が8割を占めています。感染者数はあらゆる年代で広がっていますが、重症化するのは年齢が高い人に偏っていることがわかります。
専門家も警鐘を鳴らしているように、いま最も大切なことは医療崩壊に陥らないようにすることです。「病床数」とひとくちに言っても、ベッドの数だけの問題ではありません。患者をケアする医療従事者の数が足りていなければ、病床がいくらあっても患者を受け入れることはできません。
さらに医療現場は、コロナだけでなく、他の様々な病気で入院や手術が必要な患者と常に向き合っています。コロナの重症者が急増することは、そうした人たちの治療を妨げることにもつながります。本来救うべき命が救えないような状況を避けるためにも、一人一人がいまできることを徹底しましょう。
(2020年11月26日16時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)