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2020年12月16日 19:01

フォロワー120万人 普通の大学生の戦略

フォロワー120万人 普通の大学生の戦略
(c)NNN

普通の「東京の大学生」がわずか半年でフォロワー100万人超のインフルエンサーになった。日常の出来事を扱う「Vlog(ブイログ)」形式の動画が人気の修一朗(23)は、TikTokで120万人のフォロワーを誇り、いまやテレビの出演やイベントの司会などのオファーも相次ぐ「ネットの有名人」。街に出れば高校生や大学生から間断なく声をかけられる。絵にかいたようなストーリーだが、成功は決して「偶然」ではない。背景には綿密な分析に基づく戦略があった。

■1分の動画に40カット、4時間半かける

「この状況は全然想像してなかったです。街を歩いていると次々に話しかけられる。動画の企画でUSJに行ったときは、人が集まっちゃって大変でした。当日は2000人ぐらいに話しかけられた気がします」

いまはどんな生活をしているのか。

「動画のストックはないので、朝はその日の動画の構成を考えて、昼に事務所で打ち合わせをしてから、撮影して編集。動画を投稿したら、次の日の動画の構成をまた考える。合間にコメント返しもします。休憩とか、土日(休み)とかはなく常に動いています」

2020年5月に始めたTikTokが当たった。1本目の投稿直後から順調にフォロワーを伸ばし続け、試行錯誤の末に「Vlog」形式の動画がヒット。買い物や料理といった日常風景をテンポ良く映し出した動画に自分で早口のナレーションをつける。「僕は東京の大学生」で始まる動画フォーマットは、真似をする人が続出し、人気に火がついた。

10月にはフォロワー100万人を突破。12月中旬時点で、120万人を超えている。TikTokの動画は最大1分。内容と構成には徹底的にこだわっている。

「『切り替えの早さ』に一番こだわっています。だいたい1.5秒でカットを切り替える。そうじゃないと視聴者が飽きてしまうんです。1分の動画を完成させるのにトータルで4時間半ぐらいかかりますね」

構成は「起承転結」を意識して、必ずオチをつける。「人通りはまばらだけど、僕のお腹の中は“密”です」などと言葉選びもユーモアがある。

「状況説明をして、自分の意見を入れる。『説明とボケ』の繰り返しです。説明があると視聴者が笑うタイミングができる。笑っているうちに次の説明がきてボケがきてまた笑う…という感じで1分間、視聴者を飽きさせないようにします」

「一番大事なコンセプトとして『絶対に人を傷つけない』と決めています。人を傷つけたり、攻撃的だったりするコンテンツは瞬間盛り上がってもすぐ終わってしまうので」

■小学校時代の「悔しさ」で留学

修一朗は中央大学の4年生。幼少期は福岡で過ごし、小学3年生から3年間は、父親の仕事の関係で南アフリカに住むことになる。

「日本人学校だったので、英語ができるようにならなかった。両親と姉はしゃべれるようになったのに自分は一言もできない。それが悔しくて。帰国した後も『帰国子女』ってことで『修一朗ちょっとしゃべってよ』とか。そう言われて悔しかった」

その悔しさが、大学での2度の留学につながった。19歳の時に大学を休学してカナダへ。自分でシェアハウスを探し、日本人がほとんどいない環境で1年間を過ごした。

「誰も助けてくれないので必死に食らいついた感じです。めっちゃ鍛えられました。留学行く前はTOEICも400点台だったけど、留学後は850点ぐらいまで上がった。これは自信になりました」

帰国後は、休学で学年がずれたこともあってサークルにも行かなくなり、1人で過ごすことが多くなる。そこで映像とネット動画の世界にどっぷりハマることになる。映画やYouTubeを見続ける。「インフルエンサーになりたい」という夢ができた。

そして2019年の7月からはシンガポールに留学。美術史や現代アートなどを学んでいたが、翌年、新型コロナウイルス禍がやってきた。

「2月には大学も全部オンライン授業になってしまって。シンガポールにいる意味もないということで4月の頭に帰国しました」

帰国後は2週間の隔離期間。「八王子の自宅から一歩も出ない」毎日で再び動画視聴に没頭し、「動画を作りたい」という思いがふつふつとわいてきた。

すでにTikTokに投稿していた幼なじみの友人に力を借り、いかに「バズらせるか」の戦略を練った。そこで5月に投稿したのが、「コーラを一気飲みした後、げっぷをせずに47都道府県を言う男」。目論見通り動画はバズり、1本目で再生50万回。2週間でフォロワーは3万人になった。
 
「3万行った段階で新しく違う取り組みをしようと。その中でいろいろ試す中でVlogが当たったんです」

日常の風景にテンポよくナレーションをつけるVlogの形式は、膨大な動画視聴の中からヒントを得た。

「アメリカの女子高生が、TikTokでそういうスタイルでやっていたんです。高校生活を1日のVlogにする。長さも1分。そこに日本人は視聴者として全然いない。僕は少し英語ができたんで『これ日本の大学生バージョンできるな』と」

■「成長のストーリー」を視聴者が見ている

Vlog形式を続けてきて、アカウントにTikTokの公式マークがついたころ、視聴者のコメントに変化があった。「東京の大学生」としてではなく「ネットの有名人」として見られ始めたのだ。

「低予算の動画を出すと今までは『大学生っぽい』だったんですけど、みんなの期待が上がっちゃった。それに気づいて、ちょっとコンテンツを少し変えました。具体的にはチャリに乗るのをやめて電車に乗るようにした」

今まで自転車に乗って近所のスーパーやカフェをめぐる動画が主だったのを、電車に変えて渋谷などの都心に行動範囲が広がった。
 
「予算はそんな変わってないんですけど視聴者目線だとちょっとステップアップした感じですね。代表的なのはファンのリクエストでUSJに行ったこと。コメント欄の方で『USJのチケット送るのでレビューしてきて』と。『行きます』と返信したら、そしたら本当に送ってきてくれた。日帰りでUSJに行く様子を1本の動画にしました。そういうやり取りも含めて楽しんでくれていると思います」 

ファン層は10代後半から20代前半の高校生や大学生。視聴者は自分が成長して活躍の範囲が広がるのをリアルタイムで見て楽しんでいると感じる。

「視聴者のリクエストに答えて実際にやる人ってTikTokではほとんどいない。先行者利益というか、唯一の存在になれていると思います。でもまだまだパワーアップできる。『その席が空いている』という感触はあります」

現在は大学4年生。卒業せずに留年することを決めた。

「今は動画制作に没頭したくて。そこで大学卒業するのはいつでもできる。でも今動画に没頭できるのは今しかない。不安はないです」

街ブラ番組「発見!オチアイ旅」(12月19日13時30分~放送:日本テレビ(関東ローカル))ではナレーターを務める。活躍の場はますます広がっている。

「自分が成長するストーリーを視聴者に見せたいし、自分でも見たい。ステップアップする姿をずっと見せ続けたいな。目標はVlogで一番になること。『日本でVlogといえば修一朗』を目指します」