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【産後うつ】男女とも約1割 命のリスクは“お産”より“産後”に…国が進める「産後ケア」は9割が利用せず

2024年12月4日 11:00

■「いきなりパパに」産後うつのリスクは男性にも

庭野:どうして産後ケアは重要とされているのでしょうか?

園田:1番は、産後うつが実は少なくないということ。10%~15%ぐらいのお母さん、毎年70万人くらいがお産すると考えると、10万人くらいが産後うつ、またうつになる手前でもしんどい状況になることがあるという話です。

そういうお母さんの1番悲しい結末というのはやはり自殺です。近年、年間50人くらいが産後うつで自殺してしまっていて、出産時に亡くなるよりも多いことがわかってきています。もっと手前で見つけて、現場の我々専門家が支援しなければいけないということで、今年度末までに全ての市区町村で産後ケア事業を整備することが努力義務になったので、この数年で施設が増えています。

これも近年わかってきたことで、文献にもよりますが大体7%~10%、つまり女性とそんなに変わらない割合で、男性も1割くらいが産後うつになります。

野中:初めて聞いたときはびっくりしました。

園田:女性と違うのは、いきなりパパになるということです。

庭野:妻からも言われるじゃないですか、「あなたはいいわよね楽で」みたいな。

園田:負い目もありますよね。お産のしんどさを想像でしかわからないところもありますし。とはいえ、パパとしても仕事と子育てでタスク量が倍になるわけじゃないですか。本当は自分が子育てを主体的にやりたいと思っても、職場からは「女性と違ってお前は頑張れるだろ」と求められちゃう場合もある。

野中:男性性に与えられる役割が。

庭野:古い人だと「お前が生んだわけじゃないんだから、変わらず仕事をやりなさいよ」とかね。

園田:母親側からもそれを求められる場合もあると思いますし、ギャップがありますよね。

パパも一緒に泊まっていい産後ケア施設は少ないですが、一応あります。僕もそうでしたけど、子どもと一緒に寝ていると2、3時間ごとにパパも起きていますよね。母子が産後ケアを利用してお母さんが1人でしっかり寝られるということは、お母さんと子どもだけじゃなくて、実はパパも休めるということです。
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