酒提供“再開”の店も…要請続き葛藤の末

6月20日まで再延長の方針となった、9都道府県への緊急事態宣言。飲食店からは「普通に商売させて」「1円でも稼げれば」と悲痛な声が上がり、営業再開を決める店が相次ぎます。都内での休業要請は切れ目なく、今年は通常営業ができた日がゼロという状態です。
■酒提供で再開「迷いしかない」
27日夜、都内の居酒屋を訪ねました。「営業再開のお知らせ」と書かれた張り紙があり、「6月1日より通常営業」という文字が綴られていました。
緊急事態宣言が出てからはテイクアウトのみでしたが、酒を提供した上で店を開けることにしました。
オーナー
「お酒のない居酒屋は…、牙の抜かれたトラ、というんでしょうか。ずっと葛藤はあります。迷いしかないですね。でき得る限りの(感染)対策はしていきます」
――要請に従っている店がある中で決断したことには?
「ルール破りしてごめんなさい、って感じです。普通に商売させてもらいたいです、ただそれだけです」
■「酒提供」自粛は継続方針
政府は、東京や大阪など5月末が期限の9都道府県への緊急事態宣言について、沖縄の期限に合わせて6月20日まで延長する方針を固めました。飲食店などへの、酒類の提供や持ち込みの自粛要請は継続する方針です。
菅首相は27日夜、再延長となった場合の自身の責任を記者に問われ、「いずれにしろ28日、専門家の委員会の皆さんにお諮りするわけでありますから。意見をうかがって判断する」と述べるにとどめました。
政府は28日、専門家の意見を聞いた上で国会に報告し、対策本部を開いて正式決定します。
東京都の小池知事は「都としては(宣言延長は)約1か月ということを念頭にはしておりますが、国でお決めになることでございます。ワクチンとの時差をどうやって埋めるかっていうね、そのことを国と連携してやっていく必要があると思います」と話しました。
■都内のバル「ノンアル」で再開準備
27日、休業している都内のイタリアンバルを訪ねると、従業員らがマーカーを手にし、白いパーティションにメニューを書いていました。28日から店内での営業を再開するのに合わせ、真っ白な面が寂しく見えないよう工夫していました。
緊急事態宣言が出てからは店内飲食を休業していましたが、28日からはノンアルコールのみで再開。ノンアルコールビールも届き、準備が進みます。
バルの部長
「日に1円でも稼げれば、というところで。今年に入って、まともにフルで営業したのは1日もないですよね」
■宣言、まん延防止…通常営業「ゼロ」
東京では1月、夜10時までの時短要請(23区と多摩地域の酒を提供する飲食店)に始まり、1月8日に2度目の緊急事態宣言が出ると、夜8時までの時短になりました。要請は続き、3月21日に宣言が解除されると、翌22日からは夜9時までの時短となりました。
4月12日からは「まん延防止措置」で再び夜8時までとなり、4月25日から現在までは3度目の緊急事態宣言に。酒の提供自粛・休業要請と、提供しない店への夜8時までの時短要請となりました。
すべての要請に応じてきた都内の飲食店は今年、通常営業をできた日が1日もありません。我慢の「出口」が見えない状況が続きます。
■滞る都の「協力金」…1月分もまだ
追い打ちをかけるのが、滞る協力金です。
バル部長
「1月からの分が、ようやく支給決定しました。書類の追加とかがあったりしました。窓口も、電話をかけてもなかなかつながらなかったりして、スムーズさに欠けた部分もあったりしました」
東京都に申請済みの協力金のうち、1~3月の分がまだ支給されていません。家賃や従業員の給料は、銀行の融資などでまかなっています。
都の担当者によると、去年11月28日~今年3月7日の受け付けは終了していますが、申請した約26万4000件のうち、約1万7000件は支払いが終わっていないか、そもそも支給の対象外です。
支払いが遅れている要因は「支給の条件が毎回変わるため、システム構築や必要書類の不備の対応に時間が取られている」と説明しています。
バルの部長は、28日に正式に決まる宣言延長について「必ず世の中が良くなってくれると信じて、ずっと(要請に)従い続けていますので、今回こそ最後であってほしいという思いです」と語りました。
■あおり受け…築地でも「給料カット」
東京・築地魚河岸に店を構える仲卸業者も、飲食店の休業や時短営業のあおりを受け、厳しい状況に追い込まれています。
エビ専門店の仲卸業者
「売れないんだから、仕入れてもしゃあないでしょ。(飲食店は)夜のメニューの方が食材の高いやつを持って(買って)行くんですよ。それがなくなったのが大きいですよね」
卵専門店の仲卸業者
「飲食店さんの減り具合が(大きくて)軒並みうちの売り上げも減少しちゃっている原因です。上層部の給料を3~4割マイナスして、5月からもさらに自分たちの給料をカットして、従業員の給料は守っています。もうそれしかない。(身を)削ってますよ。本当に必死です」
■スマホで…一般客の買い物「代行」
そこで、苦境に立つ仲卸業者を支援する動きがあります。
飲食店の仕入れが見込めない代わりに、スマホで一般の客と仲卸業者をつなぐ買い物代行サービス「築地のサブちゃん」です。ツイッターやLINEなどに、撮影した商品の写真を投稿し、それを見た客が買うという仕組みです(現在は土曜日限定、東京都港区と中央区対象)。
鮮魚店の仲卸業者が「いや、もう、一緒に頑張りましょうって感じです」と言うと、サービスを展開するシーレ株式会社のCEOは「頑張りましょう」と応じました。
(5月27日『news zero』より)