越の国に光れ このうまいコメを未来へ
コメのトップブランド、コシヒカリが岐路に立っています。
イベント司会者「コシヒカリが政権を握って来たんですけれど政権交代したいと思います」
ポストコシヒカリの座を狙って新たな品種が次々と台頭。さらに温暖化による猛暑は、暑さに弱いコシヒカリを脅かしています。そのコシヒカリを、必死に守るコメ農家、小林利栄さん。
ディレクター「今まで一番食べた中でおいしいおコメは、どんなおコメですか?」
利栄さん「うちのコメ」
かつて“越の国”と呼ばれたコシヒカリの里。父から受け継ぎ広げた水田は、東京ドーム1個分を超えます。
利栄さん「こうなってくるとうれしいじゃん、穂が出て来る時がやっぱりうれしいよ1番」
利栄さんの父・正利さんは、魚沼産コシヒカリをトップブランドに押し上げた1人でした。
利栄さん「まあ偉大な親父だよね、俺にすると。このコシヒカリはこの“親父”が携わって“世界のコシヒカリ”にしたという」
親父たちが残し、魚沼に恵みをもたらした、コシヒカリ。けれど、近年の猛暑は、暑さに弱いコシヒカリに大きな打撃を与えていました。
3年前「食味ランキング」で、28年連続で最高ランクを獲得した魚沼産コシヒカリが、初めて、特AからAにランクダウン。
利栄さん「食べればさ、おいしいか、まずいかってみんなわかるもんでしょ。わざわざランクなんて付けなくてもさ。そんで『特A落ちた』って騒いでさ、バカじゃねえかなと思う」
2019年。新潟県内の水田は台風によるフェーン現象の影響で熱風にさらされました。次の年も猛暑に。利栄さんはいつもより多く、冷たい水を田んぼに引き入れていました。
利栄さん「去年(2019年)は、本当にちょうどいい時40度だったから。あとはフェーン現象にならないことを祈るだけ」
世界一と信じてきた親父のコシヒカリ…
利栄さん「やっぱりこだわっていくべきだとは思いますね。別の品種は考えないで」
そんな中、新潟大学がコシヒカリそのものを暑さに強く改良した、新たな品種を発表しました。
新潟大学・三ツ井敏明教授「これNUです」「新潟といえば“コシヒカリ”ですし、県民の皆さんの誇りだと思いますし、コシヒカリというブランドを維持するのも大事かなと」
10月実りの季節を迎えた小林さんの田んぼ。こまめな水やりなど早めの対策で収穫量はどうにか例年通りとなりました。利栄さんのコシヒカリが等級検査を受けます。
検査員「大変みずみずしく整粒が多いお米で。若干一部、猛暑の影響を受けたかもしれませんが(高温障害で)白いお米も一部ありますね」
1等米の比率は、猛暑の被害を受けた2019年から大きく回復しましたが、2等米とされてしまうものも。4月…
ディレクター「これは?」
利栄さん「これがNU1号」
利栄さんはNUの試験栽培に挑むことにしました。かつて親父が、コシヒカリに挑戦したように。
利栄さん「(親父は)どう思うかね?『お前もか』じゃね?『まあやってみれや』って見てんじゃね?」「うまいコメ作るのが俺ら農家だから」「やっぱりチャレンジしなくちゃ」
ここは魚沼、コシヒカリの里。
2021年5月30日(日)放送「NNNドキュメント’21」『越の国に光れ このうまいコメを未来へ』(制作/テレビ新潟)を再編集しました