自治体にワクチン来ない“4つの理由”とは
高齢者以外の人々にも新型コロナウイルスワクチン接種が進む中、需要に供給が追いつかず、早く打ちたくても打てない状況が各地で起きています。なぜワクチンは来ないのか、4つの理由を詳しく説明します。
■東京都 14日の感染者1149人…20~30代が約5割
東京都で14日、新たに確認された感染者は1149人で、第4波のピークだった5月8日の1121人を上回って、第5波とみられる感染の再拡大が続いています。都の担当者は、「高い増加率で感染者が増えていて、すぐに減少に向かう要素は見いだせない」と危機感をあらわにしました。
14日の感染者を年代別でみてみると、20代が326人、30代が214人と、20代と30代の若い世代が5割近くを占めています。そして14日はクラスターが発生した世田谷区の保育園で新たに園児16人、職員3人の感染が判明しました。この保育園での感染者は、36人にのぼっています。
若い世代の感染者が増えています。都の担当者は、「ワクチン接種の効果で医療機関と高齢者施設の感染は減ったものの、若い人や、ワクチン接種ができない子どもが通う保育園や幼稚園での感染が増えている」と説明しています。
■進まない若者への接種…ワクチン供給量は
ワクチン接種をめぐっては、需要と供給のミスマッチが起きて、困惑している自治体があります。
例えば、東京都北区の接種率を年代別でみてみると、70代以上は70~80%が、60代はおよそ半分が1回以上接種しているのに対して、50代以下は軒並み10%未満となっています。20代は3.6%、30代は4.2%と、若者への接種が進んでいません。
若者への接種が進まない理由として、北区では、ワクチンの供給量が大幅に減ったと説明しています。そのため、北区の保健所の担当者によると「どう接種のスピードを抑えていくかが課題」ということで、新規予約は止めている状況だといいます。
実際に北区の個別接種の病院に聞いてみると、混乱がみられました。40歳以上の予約を開始した12日に、区から新規予約をストップさせるように連絡が来たといいます。今も予約の電話が来ても、断っている状況だということです。
■なぜワクチン来ない?“4つ理由”とは
接種をスピードアップするのではなく、スピードを抑えなくてはいけなくなる、ということが色々な自治体で起きています。その要因を4つに整理します。
1.接種ペースの急上昇
ファイザーワクチンの輸入ペースはあらかじめ決まっているのですが、政府が「とにかく早く打て」と号令をかけた結果、自治体の接種スピードが想定以上に一気に上がって、需要が大幅にアップしたのです。
2.自治体へのワクチン供給量減少
国が自治体に配るワクチンの供給量が減っていることです。全国の自治体に配っていたファイザーワクチンの数は、5月10日の週は1万6000箱、1872万回分だったのに対して、7月に入ってから急速に減っていって、8月2日の週には1万箱になります。
つまり、ワクチンの供給量が、4割近く減ってしまうことになります。接種のスピードが上がったにもかかわらず、供給のペースは落ちたことからワクチンが足りなくなってしまったということです。
3.ワクチン在庫問題
クリニックなどでは、1人の予約を受けた場合、1回目を打ったのに2回目が打てない、ということがないように、2回目分を確実にキープします。これは、医師としては当然の運用で、キープされた2回目分は余っているわけではなく、いわゆる在庫ではないとの認識になります。
一方、政府はこの2回目分は、在庫として計算しているので、全国で未使用のワクチンが4000万回分あるとの発表になっています。こうした認識のズレが起きています。
4.2つのワクチン情報登録システムが混在
ワクチンに関する情報は、当初「VーSYS」と呼ばれるシステムなどを使って、各自治体が発注本数や、接種済みのデータを登録する形でした。一方、国は接種の実態をより早く把握するために「VRS」という新たなシステムを立ち上げました。接種券のバーコードを読み取るだけでだれがいつ、どのワクチンを接種したのか、情報が即座に登録されるシステムです。
国は、接種済みデータについては、VーSYSではなくVRSに一元化して登録するよう求めました。ワクチンの入り口はVーSYS、出口はVRSというふうに、2つのシステムが混在する状態になっています。
ただ、ここで困ったことが起きました。例えば、居住地が新宿区の人が、港区のクリニックで接種した場合、港区のワクチンが1人分減るのに、接種実績は新宿区に登録されることになり、ズレが生じてしまいます。
このズレが2つのシステムの間で共有されず、現場に混乱が生じています。当初、このズレはそれほど多くはないだろうと思われていましたが、政府が接種加速を打ち出した結果、想定以上のズレが生じてしまいました。
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一方、ワクチンの確保量は十分となっています。これまで日本に来た分を含めて、ファイザーは今年中に1億9400万回分、モデルナは9月末までに5000万回分、合わせて2億4400万回分が輸入される予定です。つまり、全員が2回接種できる分はあると、国は説明しています。
「とにかくワクチン接種を急げ」という政府の大号令を受けて、自治体や企業が頑張って接種スピードを上げた結果、今度は供給が追いつかず、打ちたい人がなかなか打てないというもどかしい状況が生まれています。ワクチンの総量は足りているといっても、実際に予約が取れなかったり、キャンセルされたりする例が相次いでいるのが現実です。政府の想定の甘さと的確な説明の不足が、今の混乱を招いた最大の要因だと言えそうです。
(2021年7月15日午後4時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)