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酒“緩和”に尾身会長「宣言中はない」クギ

2021年9月10日 8:50
酒“緩和”に尾身会長「宣言中はない」クギ

政府は9日、新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた行動制限緩和の考え方を提示。街の人や飲食店、航空業界は歓迎しますが、政府分科会の尾身会長は「宣言中の酒はない」とくぎを刺しました。感染者数は減少傾向でも、医療現場のひっ迫は続いています。

■ワインなしの営業「厳しい」

9日夜、東京・渋谷を訪ねました。

岩本乃蒼アナウンサー
「午後8時を過ぎた渋谷駅前です。この時間も多くの人が行き交っています」

要請に従わず営業を続ける飲食店には、多くの客がいました。

岩本アナウンサー
「ジョッキでアルコールでしょうか、飲む姿も外から見られますね」

席を待つ、大人数のグループの姿もありました。

一方、東京・文京区のフレンチレストランでは、緊急事態宣言中は店を閉め、チーズケーキの通販のみの営業を続けています。

マネジャー
「フランス料理はお酒・ワインと一緒に楽しんでいただきたいのが本音なので。お酒を出さない営業を続けるのはちょっと厳しいです」

■首相「社会経済活動の正常化を」

マネジャーが営業再開に向けて期待を寄せるのは、新型コロナウイルスのワクチン接種が進んだ頃の、行動制限の緩和です。

政府は9日、その基本的な考え方を示し、菅首相は「認証制度を使って、飲食・イベント・旅行などの社会経済活動の正常化の道筋をつけてまいります」と述べました。

ワクチン接種が広く行き渡る11月ごろをめどに、2回接種した証明書や検査の陰性証明があれば、緊急事態宣言地域でも会食の人数制限緩和を検討。感染対策に取り組んでいれば、飲食店に酒の提供を認めたり、営業時間の制限を緩めたりすることもあり得るといいます。

大規模イベントも、QRコードによる濃厚接触者の追跡などの感染対策を取れば、宣言地域では上限5000人の人数制限を緩和したり、宣言などが出ていない地域では制限を撤廃したりすることも検討しています。

さらに、旅行など県をまたぐ移動についても、接種が終わっていれば原則認め、学校の部活動なども可能にすることも考えているといいます。

この緩和案についてマネジャーは「何もまだ具体的に分からないですね。お酒の提供ありきの、お客様とお会いできるのが一番の願いです」と話しました。

■緩和方針に旅館「ありがたい」

東京・浅草にある旅館のオーナーも、緩和案を「ありがたいことですね」と歓迎しました。予約表に記された客の住所は地元や近隣がほとんどで、今は「マイクロツーリズム」が中心になっています。

オーナー
「プロモーションの仕方を変えていきたいと思っているんですね。今は首都圏を中心に集客を図っています。これを全国レベルに変えていきたいです」

全日空は9日夜、「政府が、県をまたぐ移動制限の緩和をはじめとした日常生活の回復に向けた考え方を示されたことをおおいに歓迎します」というコメントを発表しました。

渋谷で、街の人の受け止めを聞きました。

26歳と24歳の会社員は、旅行が緩和されたら行きたい場所として「北海道」と口をそろえました。「われわれ地元が北海道というのもあるので、帰省したいというのが一番」と話しました。

コロナの感染拡大前は一緒にフェスに行っていたという、共に24歳の会社員2人組は「(大型イベントが)政府から認められるってことはすごい重要だなって(思います)」と歓迎します。

■宣言中の「酒」認識にズレ?

ただ緊急事態宣言中の緩和をめぐり、政府分科会の尾身会長は9日、「(酒の提供などについて)基本的には緊急事態宣言が解除というのが前提ですから。(宣言中に)お酒のところはない、ということを今日、ずいぶん確認しましたから」と明らかにしました。

宣言中は、酒の提供はなしにすべきだと強調しました。

9日夜、尾身会長と共に西村経済再生相が会見に臨み、記者の質問を受けました。

――宣言中に緩和する政府と、「緩和は宣言後ですよ」と言う尾身会長との間には違いがあるように受け止められます。

西村大臣
「まず、(分科会の)提言をよく読んでいただきたいと思います。緊急事態(宣言が)出された場合には、その場面で活用されている(感染させるリスクが低い場合に制限を緩和する)ワクチン検査パッケージが活用されない状況になることもあり得るということですので」

専門家との食い違いはなく、宣言が出ている場合は緩和をやめ、強い制限をかけることもあり得ると説明しました。

■新規感染「減少」も現場“ひっ迫”

都内では9日、新たに1675人の感染を確認しました。18日連続で、前の週の同じ曜日の人数を下回りました。

神奈川県内の中等症患者を受け入れている、川崎市立多摩病院では9日、50代の中等症の女性患者に、鼻から高濃度の酸素を入れる「ネーザルハイフロー」で治療を行っていました。肺を保護するため、患者はうつぶせになっていました。

この患者は本来であれば重症患者を受け入れられる病院に転院させるべきといいますが、それがかなわない事情がありました。

総合診療内科・本橋伊織医師
「新規の患者数が減ってきたといっても、一番最後の重症者を引き受ける高次医療機関のベッド状況が全然改善されないので」

病院に空きがなく、感染者が減っても医療現場のひっ迫は続くと話します。

■男性2人死亡…千葉県が謝罪

千葉県は、自宅療養中だった50代と60代の男性について、保健所による健康観察が適切に行われないまま、自宅で亡くなったと発表しました。「感染者が急増する中で、事務処理上のミスだった」などと謝罪しました。

12日が期限の緊急事態宣言について、政府は9日、医療のひっ迫度などを基に、現在発出している21都道府県の扱いを決定しました。東京・大阪など19都道府県は30日まで延長し、宮城・岡山は「まん延防止等重点措置」に移行します。

「まん延防止」が適用されている12県のうち、福島・石川など6県は30日まで延長。富山・山梨など6県は、12日の当初の期限で解除することを決めました。

(9月9日『news zero』より)

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