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全国で相次ぐ火災 延焼・被害拡大のワケ…検証「放射熱」の脅威【バンキシャ!】

2024年12月9日 10:54
全国で相次ぐ火災 延焼・被害拡大のワケ…検証「放射熱」の脅威【バンキシャ!】
5日。バンキシャ!は火事の現場へ。

バンキシャ
「向こうの方ですかね。多くの消防隊員が集まっています」

火事が起きたのは、多くの家が密集する横浜市保土ケ谷区の住宅街。火元を含む住宅6棟が燃えたが、ケガ人はいなかった。この住人は自宅が火元の隣で一部が燃えてしまったという。

自宅が火事で被害
「家の中にいて音がする方を見たら、火柱というかバーっと火が上がっていたので。犬を連れて外に出た感じで。着のみ着のままで出た」

この火事を捉えた映像を細かく見ていくと、あることに気がついた。

バンキシャ
「火と煙が上の方にあがっていますね」

他の映像を見ても、炎と煙はほぼまっすぐ上空へ。実は火事が起きた当時、現場付近の風速は約1メートル。ほとんど感じない程度の弱い風しか吹いていなかった。それでも6棟を焼くほどに燃え広がった今回の火事。

バンキシャ!は、2人の専門家とともに、現場と映像を検証。風がなくても燃え広がる、住宅密集地ならではの、ある可能性が見えてきた。

「放射熱によって延焼拡大していった」

放射熱による延焼とは――。



火事の翌日、6日。バンキシャは再び現場へ。

バンキシャ
「消防隊の方でしょうか。焼けた家屋を注意深く見ています」

行われていたのは、警察と消防による実況見分。出火原因は、まだわかっていない。上空から現場を見てみると。火元となった住宅を中心に、被害が広がっていた。

警察によると、燃え広がったのはこの5棟。バンキシャ!はその一つの家の住人から話を聞くことができた。

家の一部が焼けた家の住人
「熱で壁がやられてるんで。窓が割れて放水の影響で(家の中が)水をかぶっている」

この家では、窓ガラスが割れたり、外壁が損傷したりする被害が。

家の一部が焼けた家の住人
「悔しいと残念と」

さらに話を聞いたのは、全焼した住宅の隣にある家の住人。被害はこの家にも及んでいた。段ボールで応急措置していたのは、火事の影響で割れた窓。そこから入ってきたススで、ベッドなどは黒く汚れてしまっていた。さらに…

自宅が火事で被害
「ここがもう焼け落ちちゃってる。このエアコンとかすごいです」

バンキシャ
「もう溶けちゃってますね」

窓が割れた部屋にあったエアコン。室内に入ってきた熱の影響なのか、溶けてしまっていた。

自宅が火事で被害
「かなりの熱い熱風が入っていた。ここにいたら死んでいたかも。恐ろしい」

火災に詳しい専門家は、今回の現場をどう見るのか。住人の許可を得て、火元の住宅が見える場所へ。まず指摘したのは…

火災に詳しい 元東京消防庁麻布消防署長 坂口 隆夫 氏
「燃え方・焼け方が非常に激しいですね。類焼建物が屋根まで焼け落ちて、ないんですよね。相当な火力だったのか。発見・通報が遅れた代表的な燃え方ですね」

警察によると、火事が起きた当時、火元の家は留守だったという。今回の火事。激しく燃えたことで、ある現象が。

坂口 隆夫 氏
「熱でエアコンの配線部分が溶けていますから。黒く燃えたあとがありますから。これはもう輻射熱」

輻射熱とは「放射熱」とも呼ばれ、直接火に触れなくても伝わる熱エネルギーのこと。身近なものだと「電気ストーブ」や「たき火」の近くで感じる熱が、これにあたる。

火災で起きる現象を研究する専門家は、風がほぼ吹いていない中で延焼が拡大したことについて。

火災で起きる現象を研究 東京理科大 火災科学研究所 松山所長
「風があると炎が揺らいで、隣の建物に接炎することがあるが、この場合はあまりそういった現象は見られない」

松山 賢 所長
「出火元となった家から起こった火災が非常に大きかった。周囲に対してそれほど距離が離れていないので、放射熱によって延焼拡大していった、というところが見て取れる」

つまり、今回は周囲の住宅に直接火が燃え移ったわけではなく、放射熱によって延焼した可能性があるという。

放射熱による延焼とは、どんなものなのか。その瞬間を捉えた映像があった。

放射熱による延焼を捉えた実験映像(東京理科大学 火災科学研究所)。画面右がソファ。その左側に雑誌が置いてある。ソファに火がつき、炎が大きくなると。ソファから20センチほど離れた雑誌に火がついた。直接火が触れなくても、放射熱で燃え広がった瞬間だ。

これは住宅と住宅の間でも発生し、火の勢いが強くなることで、より放射熱は強まる。さらに対象との距離が近ければ近いほど、影響は大きいという。

特に乾燥状態が続く冬のこの時期は、住宅に使われている木材などが燃えやすいため、より一層の注意が必要だという。

東京理科大 火災科学研究所 松山 賢 所長
「日常的に火の元には注意というのは当然だと思う。熱に対して強い窓ガラスで、割れないようなものを使うことで延焼拡大を遅らせる。隣の家で火事が起こっていても、そこから放射熱を受けにくくするというような対応が重要だと思います」

*12月8日放送「真相報道バンキシャ!」より
最終更新日:2024年12月9日 10:54
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