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「鉄道模型趣味」創刊1000号 受け継がれる“平和な世の中を願う思い”

2025年5月24日 18:13
「鉄道模型趣味」創刊1000号 受け継がれる“平和な世の中を願う思い”

戦後まもなく創刊した鉄道模型の月刊誌が先月、創刊1000号を迎えました。80年近い歴史に、平和な世の中を願う思いが受け継がれていました。

街の中を駆け抜ける特急や緑豊かな山の中を走る列車。小さくても実物さながらの迫力で、多くのファンを魅了する鉄道模型の世界。近年は、高校生の鉄道模型コンテストも開催され、ファンの裾野は広がりつつあります。

そんなファンたちに愛されてきたのが、月刊誌「鉄道模型趣味」。先月、創刊1000号を迎えました。

忠実に再現した機関車や実物とみまがうジオラマなど、ファンのこだわりの作品の数々を80年近く紹介してきました。名物編集長の名取紀之さんが見せてくれたのは…。

鉄道模型趣味・名取紀之編集長「1946年(昭和21年)の第1号があるんです」

創刊は、戦後まもない1946年1月。戦争で焼け野原となった東京。人々はヤミ市で物資を買う時代でした。

名取紀之編集長「これ見ると分かりますけど、ガリ版ですよね。ヤミ物資のザラ紙ですからね」

日本テレビ・藤田大介アナウンサー「1枚1枚が薄いですね」

しかも、当時はGHQの検閲が必要とされた時代。

藤田大介アナウンサー「なぜ、GHQの目をかいくぐってまで出版せざるを得なかったのでしょうか?」

名取紀之編集長「いや、出さざるを得なかったというよりも、出したかったのでしょうね、情念として。やはりこの戦前からの鉄道模型の歴史を踏まえた上で」

昭和初期、すでに趣味の対象となっていたという「鉄道」。ファン向けの雑誌も複数、出版されていたといいます。しかし…。

名取紀之編集長「この(雑誌)『科学と模型』昭和15年ですね。もう本当に戦時体制になって、内容が表紙からしておかしいですよね」

藤田大介アナウンサー「船ですね」

名取紀之編集長「これだってそうでしょ」

藤田大介アナウンサー「船ですね」

名取紀之編集長「戦艦じゃないですか。どんどんどんどん、こういう翼賛的な方向に進んでく中で、鉄道の模型自体も、いわゆる軍国少年を育てるがための、ひとつのツールになりつつあったわけですよ」

戦争を支えるインフラとして、軍事機密となっていった鉄道。そしてある事件が。

名取紀之編集長「四国で客車が好きなファンが客車を調べていた。手帳に(客車の)番号を書いていた。駅員から通報されて、降りた駅でスパイ容疑で捕まってしまってね。それでえらいことになったわけですよ。それが発端になって、残っていた(鉄道趣味の)本は、すべてが『時局に沿う』という言葉とともに廃刊するんですよ」

戦時下で口にすることもできなくなった「趣味」。「鉄道模型趣味」という雑誌の名に込められた思いとは。

名取紀之編集長「非常にいろいろとつらい思いをして、ニ度と我々が好きな鉄道をそういう他意をもって意図されないような、本当に純粋な趣味を育てたい思いを込めて、やっぱりこの『趣味』って言葉を使っているのですよ。やっぱり、趣味っていう言葉を公言できる世の中でなければいけない、という思いがこもっているのですね」

趣味を自由に楽しめる時代が続くことを願っています。

最終更新日:2025年5月24日 18:15
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