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【皇室コラム】天皇陛下 沖縄とベルリンでかみしめた平和の貴さ

2022年6月23日 6:00

南部戦跡での滞在は約2時間に及びました。国立沖縄戦没者墓苑の納骨堂への拝礼、県立平和祈念資料館の視察、平和祈念堂の参観、県立第一高等女学校と県立師範学校女子部の生徒ら224人の慰霊碑「ひめゆりの塔」への拝礼――と続きました。

地元紙の琉球新報や沖縄タイムス、読売、朝日、毎日の各紙の記事を総合して陛下の様子を追ってみます。

平和祈念資料館では、集団自決現場の生々しい写真や、「日本軍による住民虐殺」のパネル、自決に使われた錆びた手榴弾やカミソリ、火炎放射器でボロボロになった母子の着物などを、息をのみながら50分にわたって見学されました。

「戦没者の数さえ、はっきりしないそうですね」
「遺骨収集は今後も続けられるのですね」

陛下の質問はわずかで、説明者の目に陛下は「ずっと緊張しておられた」と映りました。

「ひめゆりの塔」では、生存者の宮良ルリさんから花束を受け取って供え、壕をのぞきながら「あなたが書かれた『私のひめゆり戦記』を読みました。壕の中はどうだったのですか」と質問されました。

「みんな、『お父さん』『お母さん』と叫びながら死んでいきました。『戦争のない時代に生きたかった』と言って息を引き取りました」。宮良さんの話にじっと耳を傾け、うなずかれました。

■「感想」の中で「ぬちどぅたから」に触れた初めての訪問

初日の日程が終わって知事と侍従が記者会見し、侍従から陛下の「感想」が紹介されました。

「24万人の尊い犠牲者とその遺族の方々を思い、深い悲しみの思いにひたされました。沖縄の人々は先の大戦を通じて『ぬちどぅたから』の思いをいよいよ深くしたと聞きましたが、この平和を求める痛烈な叫びが国民すべての願いとなるよう切望しています」

東京から来た記者たちは“命こそ宝”を意味する「ぬちどぅたから」がわからず、知事が助け船を出しました。それは沖縄で「反戦平和」のスローガンとしても使われる馴染みの深い言葉で、多くの人が陛下の思いを受け止めました。

話は35年後の今に飛びますが、陛下は今年5月15日の沖縄復帰50周年式典のお言葉で、「大戦で多くの尊い命が失われた沖縄において、人々は『ぬちどぅたから』(命こそ宝)の思いを深められたと伺っていますが」と述べられました。そのフレーズは初めての訪問の時の「感想」を思い出させます。その言葉をずっと温められていたのです。

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