×

【皇室コラム】天皇陛下 沖縄とベルリンでかみしめた平和の貴さ

2022年6月23日 6:00

陛下は訪問に当たって沖縄の歴史や文化を勉強されていました。

「沖縄学の研究者であった外間守善(ほかま・しゅぜん)教授から、沖縄の文化や歴史についてお話を伺ったことも、沖縄への理解を深める上でとても良かったと思っています」。陛下は今年2月の記者会見でこう話されました。

外間教授(故人)は、米軍の魚雷を受けて沈没し、約1500人が犠牲になった学童疎開船「対馬丸」で妹を亡くした人で、皇太子時代の上皇さまに琉球の短歌「琉歌」を手ほどきしたことで知られます。

沖縄タイムスによると、陛下は訪問の日程が固まった6月、外間教授から1回2時間、8回の話を聞かれています。計16時間。「お話をうかがった」と陛下は控え目に話されましたが、大学なら“単位”が取れるような時間数です。滞在中も博物館の関係者らをホテルに招いて話を聞かれています。沖縄の文化や歴史を知ろうとする熱さが伝わる逸話です。

■1か月半後には「ベルリンの壁」を視察

この年は注目すべき視察がもう一つありました。当時の西ドイツで視察された「ベルリンの壁」です。沖縄訪問の1か月半後の11月。旧日本大使館を修復した「ベルリン日独センター」の開所式出席のための訪問でした。

旧大使館は1942(昭和17)年に建てられ、先の大戦の空襲で破壊されて野ざらしになっていました。それが日独、日欧の新たな文化交流の場として生まれ変わりました。

毎日新聞や朝日新聞によると、この時、陛下は「ベルリンの壁」を見た印象を聞かれて「ベルリンが東西の接点にあるという国際政治の厳しい現実を見た思いがします」「先ごろの沖縄訪問と合わせ、平和の貴さを改めてかみしめています」と話されました。

2019(平成31)年の記者会見では「その時見た、冷たく聳(そび)えるベルリンの壁は、人々を物理的にも心理的にも隔てる東西の冷戦の象徴として、記憶に深く刻み込まれるものでした」と回想されています。

この年は、皇太子ご夫妻(上皇ご夫妻)の訪米に際し、陛下が初めて国事行為の臨時代行を務められた年でもありました。天皇の重責を担った記憶に、昭和天皇の「思はざる病となりぬ沖縄をたづねて果さむつとめありしを」という歌が重なるでしょう。

そうした経験の上に、アジアとヨーロッパで見聞きした戦争の爪痕が一つになり、「平和の貴さ」をかみしめられていたのです。

次ページ
■次世代への継承~愛子さまに貸された沖縄の本
    24時間ライブ配信中
    日テレNEWS24 24時間ライブ配信中
    logo

    24時間ライブ配信中