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【解説】「東京・平壌の連絡事務所には強く反対」焦る拉致被害者家族が譲れないワケ…「親世代」は横田早紀江さん1人に

2025年3月20日 7:30

1月31日の衆議院予算委員会。「私は北朝鮮と交渉するにあたりまして、連絡事務所があるということは、それなりに有効なことだと思っております。しかしながら、それをやることは北朝鮮の術中にハマることはという反対の御意見があることも、よく承知をいたしております」(石破首相)

反対意見があることを承知としつつも、「連絡事務所は、それなりに有効」と述べたのだ。

家族会と支援団体の「救う会」は、この発言後の2月に決定した今後の活動方針の文書の中で、石破首相に向け、「連絡事務所や合同調査委員会の設置は、どのような名目であれ、時間稼ぎにしかならない」との反対のメッセージを盛り込んだ。

■いてもたってもいられない…嘆願書に込めた思い

家族の一部からは首相や政権への「不信感」すら感じられる。

1978年に拉致された田口八重子さんの長男で、拉致被害者家族会事務局長の飯塚耕一郎さん(48)は去年12月、石破首相に宛てた嘆願書を送った。

母・八重子さんは47年前、北朝鮮に拉致された。当時1歳だった耕一郎さんは以来、母に一度も会えていない。

「岸田前政権、石破政権及び拉致対策本部は本年(2024年)中に救出のため何をしたのか全く見えてきません。救出のための行動を即時に起こしてください」「我々の焦りに対し、現政権で動きがわかりません」(飯塚耕一郎さんの嘆願書より)

拉致問題の解決に向けた交渉は、国と国との問題。救出活動は、政府が北朝鮮と対峙して行うことしかできないからこそ、首相が代わるたびに、何度も官邸に足を運び、丁寧に解決に向けた対応を「お願い」してきた家族たち。

しかし、耕一郎さんの嘆願書には、普段は使うことがないような強い言葉が並んでいる。

■「時間がない」からこそ、家族の納得できる対応を

拉致事件の発生から、過ぎてしまった40年、50年という月日。

「被害者の一刻も早い帰国」だけを願い続け、訴え続けてきた時間に重なる。

政府は家族の置かれた状況や思いを改めて認識し、今すぐにでも解決に向けた具体的な手だてを講じる必要がある。

また、こうした家族の切実な思いを、政権に“伝える”役割を果たすべき拉致問題対策本部という組織も日本政府にはある。今こそ、その役割が求められているのではないか。

相手がある外交交渉において、北朝鮮との具体的なやりとりを途中段階で明らかにするのは、交渉の是非にも関わるため難しく、また家族が求める内容を北朝鮮側がどう受け止めているのかも不透明だ。

しかし、石破首相や日本政府には、日本で待ち続ける家族が納得できる対応を取ってほしい。

(日本テレビ社会部拉致問題担当・猪子 華)

最終更新日:2025年3月20日 8:38