「一般的な糸と変わらない強度を出せるように」…「紙糸」で「会津型」の伝統をつなぐ 福島
先日、会津若松市にちょっとユニークなお店が開店したんです。伝統の「会津型」をテーマにしたお店なのですが、その歴史も大切にしつつ、かつ地球環境にも配慮した新しいコンセプトショップなんです。
その店構えは会津の趣が感じられます。先月、会津若松市の七日町にオープンした「TSUMUGI」。明治時代に建てられた提灯屋さんの建物をリノベーションしました。会津の歴史が息づく店内では主に伝統工芸の「会津型」をつかった商品を取り扱っています。ちなみに、これらの商品、実はある特徴があったんです。それが…
■井上千沙アナ
「こちらには会津型を使った工芸品が並んでいますが、実はこの布、捨てられるはずだった間伐材や紙のパッケージでできているんです」
なんと、紙の糸。「紙糸」でできていたんです。山林を手入れした際に出る間伐材や牛乳パックなどが材料となっています。「紙糸」を企画した店主の瀧井さんは?
■「TSUMUGI」の店主 瀧井和篤さん
「昔から続く伝統とこれからの将来のことを考える地球環境を両方を次の世代につむいでいくというのを我々のコンセプトにしています」
「会津型」の伝統を地球環境に配慮した形でつないでいこうと考え出したのです。さらに店内では「会津型」にとどまらず、紙糸で作った石川県の加賀友禅や鹿児島県の大島紬なども販売されています。
■瀧井和篤さん
「色んな伝統工芸や地球環境(を守る)ことの大切さを伝えていくのに、発信できる場所が必要だなと思った」
「紙糸」の開発にはこんなきっかけも…
■瀧井和篤さん
「私自身が食品会社で働いていて、その中で工場などで使い終わった後の紙パッケージを捨ててしまっていると知って、非常にもったいないと感じた。使い終わった後のものを(有効に)使えていないということで、そこを活用していかないと我々としては次の世代に環境を残していけないと思った」
瀧井さんが注目した「紙糸」は実は、江戸時代からあったといいます。開発にあたっては、瀧井さんらが参加する「アップサイクル」という団体が中心となり、プロジェクトを進めてきました。広島県にある和紙から糸を作る会社と2021年から共同で開発を始め、商品化にこぎつけました。
■瀧井和篤さん
「最初開発段階では糸が切れてしまったり、なかなか糸にならなかったりもあったけれど、そこの試験を重ねることで今は一般的な糸と変わらない強度を出せるようになりました」
水にも強く使い終わったら、土に戻るので環境にやさしい糸でもあります。現在は全国のスーパーやオフィスなど30か所に紙資源の回収ボックスを設置し「紙糸」の原料を集めています。ちなみに、お店では紙糸を使った機織りも体験できるんです。井上アナウンサーはコースターを作らせてもらいました。
■井上
「触ってみると柔らかくてずっと触れたくなるような感じ」
■瀧井さん
「紙糸自体が天然の繊維なので、こういう肌触りもまた他とは違ったものかなと思う」
織った布に「会津型」で色さしをして完成です!
■井上
「よく見ると色むらもあるんですけれど、それもいいあじ」
■瀧井さん
「これはこれでいいあじがあって面白い」
環境への配慮、そして、会津の歴史を体感してもらうのも、このお店のコンセプトの一つです。
■瀧井和篤さん
「そのままでは使いにくいものを糸に生まれ変わらせて色んな日常で使えるようなものに落とし込んでいけるので、付加価値を付けることをアップサイクルだと考えています。環境や伝統というのはちょっと難しいと思われがちだが、もっと気軽に体験できるような形で発信していきたい」