知られざる「保護司」の活動には課題も 罪犯した人の"立ち直り"を支援
県内で保護観察が必要な人は315人います(2024年3月末時点)。一方、保護司として活動する人は956人で、法務省が定める定数に87人届いていません。
さらに年齢別でみると60代と70代が8割を占めています。高齢化による人手不足が懸念される中、新たな保護司は現職の人が地域の情報を得て次の候補者を探しているのが現状です。
刑事法に詳しい専門家は報酬もなく、人の善意で成り立っている現在の制度は限界を迎えていると言います。
■熊本大学法学部 岡田行雄教授(刑事法専門)
「保護司をメインにしているのはおかしい。専門的な支援というのを国が公費を使ってもっとやっていかないと必ず保護司制度は無理が来る」
保護観察が必要な人の社会復帰を専門知識を持って指導・監督する国家公務員の「保護観察官」は県内にわずか14人しかいません。保護観察対象者のサポートの多くはボランティアの保護司が担うことに…。岡田教授は、対象者との面接を主に保護観察官が担当することで保護司の負担を減らせると指摘します。
また面接を行う場所も自宅などではなく公民館などの公共施設でできるようにすることが必要としています。ただ対象となる人が公共施設を出入りすることについては理解を得づらいため、地域全体で更生に理解を示すことも欠かせません。
■熊本大学法学部 岡田行雄教授(刑事法専門)
「最初怖いのは当たり前で、その偏見をちょっとずつ外していく。これが社会全般に求められている」
保護司をしている秋吉さん。保護観察という関係が終わった後、関係が全くなくなるわけではないと感じています。
■保護司 秋吉展明さん
「保護観察期間後も、道すがらにこんにちはだの、頑張ってますだの子どもを抱きながら挨拶してくれたことなど。そういうのも保護司冥利に尽きるんですね」
地域全体で罪を犯した人の立ち直りを支えていく。再犯防止につながる、第一歩です。
滋賀県での事件を受け熊本保護観察所は、県内の保護司全員に対象者との関係に不安を抱えていないかなどの聞き取りをしています。
また必要に応じて、
①通常は保護司1人で担当するところを複数で対応する
②自治体と協議して自宅など以外に面接場所を拡充する などの対策を進めています。
保護観察となった人の更生には保護司は欠かせない存在。ただ保護司だけが背負うのは限界も。社会が受け入れ、誰もが更生を支えるひとりとなることも大切かもしれません。