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【解説】医療圏とは?宮城県と仙台市の論争、根本は…病院再編計画巡り

2025年5月21日 19:21
【解説】医療圏とは?宮城県と仙台市の論争、根本は…病院再編計画巡り

宮城県の病院再編計画で東北労災病院が富谷市への移転を断念する一方、今度は富谷市が移転する病院を公募する検討を始めました。
移転を巡っては村井知事と郡仙台市長で論争が続いています。
齊藤千紘記者による解説です。

宮城県の「4病院再編計画」とは?

ここで改めて「4病院再編計画」とは病院施設の老朽化や仙台市内の大きな病院集中などの解決策として4年前に県が打ち出したものです。

その内容は、赤十字病院と県立がんセンターを統合して「名取市」に、県立精神医療センターと東北労災病院を合築して「富谷市」に移すというものでした。

仙台赤十字病院と県立がんセンターは、2030年度をめどに新病院をオープンする予定です。
精神医療センターは、富谷市への移転をやめ、名取市での建て替えを決めています。

しかし5月9日、東北労災病院は資金不足から移転断念を決定。
今度は富谷市が移転する新たな病院の公募を検討していますが、郡市長と村井知事の間では富谷市への病院移転を巡って論争が続いています。

郡和子仙台市長(5月13日の会見)
「仙台市は“仙台医療圏”の人口の7割を有している。これから高齢化率も高くなってくると他の市町村よりもさらに救急需要は増していくと想定している」

村井知事(5月14日会見)
「仙台市長はちょっとわかっておられないかなと思うのは、仙台“市”医療圏じゃなくて“仙台医療圏”の中でどう病院を配置するかということ。」

そもそも、2人が語る「医療圏」とはどういうものなのでしょうか。

そもそも、医療圏とは?

まず「医療圏」とは、都道府県が医療法に基づいて、病院や医師など医療資源を適正に配置するエリア分けのことです。
地域間で医療体制に差が出ないよう、医療圏ごとに病床数が定められています。

宮城県には4つの「医療圏」があり、このうち「仙台医療圏」は、仙台市、名取市、富谷市などを含み、人口は約153万人です。
県全体の6割以上を占めています。

郡市長と村井知事の間では、仙台医療圏の中で医療資源のバランスが取れているかという点を巡って大きな隔たりがあります。

郡市長(5月20日の会見)
「2025年から2050年にかけて仙台市の高齢者はおよそ8.5万人増加する見込み。一方、黒川地域4市町村の高齢者の増加は約7000人の見込み。村井知事は適正配置が必要だとおっしゃってるわけですけど、それではこの将来予想の人口のことについてどのようにご判断なさっているのか問いたい」

村井知事(5月21日の会見)
「仙台市の高齢者が増えるのは十分承知している。ただ何度も申し上げているように、あまりにも集中しすぎていて病院の稼働率、病床の利用率が非常に低い。“仙台医療圏”の中で適正な配置をし直すことによって永続的に病院経営ができるようにしていく。郡市長には政令市の市長として隣の市や自治体のことも考えてほしい」

郡市長は仙台は高齢化もありぎりぎりだと言っていて、知事は周辺もみてほしいと言っている。どうみればいいのか。

ここで客観的な数字で仙台医療圏をみてみます。

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