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シリーズ人口減少⑪ 行政が進める結婚支援【高知】

2024年9月26日 19:04
シリーズ人口減少⑪ 行政が進める結婚支援【高知】
人口減少が進む高知県で未来の社会の形を考える人口減少シリーズ。
今回は行政が進める結婚支援の取り組みをお届けします。

人口減少が進む中、少子化の要因として「未婚化」が課題にあげられています。
県内の婚姻数のピークは戦後間もない1947年で1万件を超えていましたが、その後、経済情勢などを背景に減少傾向となり、1980年代以降は4000件台で推移。その後も少子化が進み、去年の婚姻数はついに2000件を割り込み、過去最低の1985件でした。

県内では婚姻数を増やそうと、いま様々な取り組みが進んでいてます。中でも県や市町村など行政が結婚支援を行っています。
県の結婚支援を通して出会い、おととし8月に結婚した田内さん夫婦です。

■田内夫婦
「僕は甘いもの好きで一緒に店に行って、一緒に選んで、帰ってきて一緒に食べる瞬間が本当に幸せ」「一番はすごく優しいところ。幸せ」

2人を引き合わせたのは県の結婚支援事業を委託された「こうち出会いサポートセンター」です。
結婚を考えていても出会いがない、理想の相手がいない、センターではそうした人たちの希望を聞きながら実際に引き合わせて結婚につなげていきます。

■夫・田内克明さん(33)
「20代中盤から周りで結婚する人が多くなって自分もこれから先どうやって結婚しようかと考えたとき、いまの職場だけでは限界があると思った」

県職員で夫の田内克明さんは自分を支えてくれるような女性を。自営業の妻の美愛子さんは安定した収入の男性を希望して結婚支援サービスに登録しました。

■田内さん夫婦
「引っ張っていけるような性格ではないというのもあって、自分より年上の人、結婚生活ではそういう人のイメージがあった」「自営業なので相手はやっぱり(収入が)安定した人が理想だった」

2016年に開設したこうち出会いサポートセンターでは、これまでにお見合いの形で120組余りが結婚しました。センターの久宜正さんは婚姻数の減少について、社会の変化や結婚に対する意識の変化が原因だと話します。

■こうち出会いサポートセンター・久宜正参与
「独身の人が従来よりも県外に出て減っているということと、最近の人の気質として、独りでいたいという人が多くなっているので、そういう傾向にあるんじゃないかと思う」

3月末時点でセンターに登録している会員を年齢別に見てみると、最も多いのが30代で319人・次いで40代が194人ですが、20代はわずか87人と全体の約12パーセントほどです。

■久宜正参与
「20代の人はそんなに焦りはないようだが、(県内の)初婚年齢が男性が約30歳、女性が29歳。全国的な傾向だが、だんだん晩婚化になってきている」

9月11日、知事公邸で行われた少子化対策のための座談会。県内在住の若者8人が参加し、結婚や子育てについての現状を濵田知事や桑名高知市長に訴えました。

■県内の若者
(36歳・介護士)「なんとか出会いがないだろうかと思って(県の)少子化対策で用意した出会いの場があって、そこのパーティーに20代の頃に参加したが(参加女性に)『年収どれくらいです?』って言われて、(答えると)『少なっ !』って言われて、グサッてきた。家庭を築くということはものすごく大変だからお金を持っている人と付き合いたいってなるのは当たり前なのかなと思って」
(20歳・自動車整備士)「いろんな婚活があるなかで、年齢層がある程度幅が広いというのは僕くらいの年代からすると、ちょっと足を踏み入れづらい部分があって、できるだけ年齢層が近くて価値観とかも近いような出会いの場があればいいなというのは感じている」

若者たちの声から、収入など現実的な条件による結婚へのハードルや、世代間の結婚への意識の差といった課題が浮き彫りとなりました。

人口3万1000人余りの四万十市では、2018年から独自の結婚支援の取り組みを行っています。

■四万十市子育て支援課企画係・阿部一仁係長
「“出会いサポート事業”と言っているが、登録してもらって、そこにボランティアの婚活サポーターが担当となることで、サポーター同士で連絡を取り合って、条件の合う人を紹介をするという形で取り組んでいる」

人口の少ない市町村ならではの取り組みで、地域ボランティアが務める婚活サポーターが登録者一人一人について結婚の支援を行います。四万十市の婚活サポーターは現在13人。登録者の収入や外見ではなく性格や趣味などの人となりを重視して相手を選び、引き合わせるということです。

■阿部一仁係長
「(サポーターには)なんでも相談しやすいという雰囲気を作ってもらっている。本心を話してもらって、それでより紹介しやすくなって、その人の性格にあった相手を紹介することが出来ているのではないか」

8月末で47人の登録者がいて、昨年度は5組が結婚したということです。

四万十市の「出会いサポート事業」で配偶者と出会い、結婚した加洲陽太さん(30歳)と妻の久瑠美さん(29歳)です。
婚活サポーターを介して去年4月に出会い、今年3月に入籍。来月、結婚式を挙げる予定です。
2人とも県外の出身で、陽太さんは土佐くろしお鉄道の運転士。久瑠美さんは検査技師として病院で働いていて、結婚を考え始めた時期はコロナ禍もあり、出会う機会がない状態でした。

■加洲さん夫婦
「県外出身なので知り合いが全くいない状態で四万十市に住むことになった。自分の職場以外の人とほとんど知り合う機会がないので、婚活サポーターのおかげで違う職種の人でも良い人に出会えてよかった」

婚活サポーターには結婚まで親身になって支援してもらったと話します。

■加洲さん夫婦
「明確にサポーターさんにご縁を頂いたというのが一生残る。交際になったときも結婚することになったときも祝ってもらったので、これからもずっとサポーターとの関係を続けていけたら。 お互いに子どもが欲しい願望があるので、一緒に家族を養っていければ」

今月23日、約30人の若者たちが香美市のキャンプ場で開かれたイベントに参加しました。
イベントの名前は「県社会人交流事業『NEW STEP』」。人口減少対策の一環として県が企画したものですが「婚活イベント」とは少し異なります。

高知県子育て支援課・中平直樹チーフ
「あくまで出会い交流に特化したイベントでマッチングのないイベント。やっぱり自分で見つけたいという人は特に若い人は多いので、婚活イベントではなくて、その手前の交流の場という形でフィー ルドを用意して、あとは皆さんでグループないし交際に発展 していけるようにしてもらえれば」

去年、県が18歳から39歳の県民に行った意識調査によりますと、結婚に向けた出会いを求める場合に取る行動について、最も数が多かったのが「自力で見つける」の50.8パーセント、次が「友人などに紹介を頼む」が46.4パーセントと自然な出会いを求める答えが多く、「マッチングアプリや婚活サイトなどを利用する」と答えたのは21パーセント、「行政の結婚支援事業を利用する」と答えたのは10パーセントでした。

このため県は自然な出会いを求める若者のニーズに応えようと、職業や収入などの登録も行わず、マッチングもない、いわゆる「友活・恋活」イベントとして企画しました。
今年度1回目のこの日、行われたのはコーヒーづくり体験です。
若者の出会いの場が県内の若者の減少や新型コロナ禍の影響によって少なくなっていることもあり、イベントはほぼ満員の人気でした。
参加者たちは協力してコーヒーを淹れながら、初対面の若者と和気あいあいと交流を深めていました。

■参加者
「ラインとか交換しても良いですか?」
「合コンというより恋愛とかじゃなくて、“新しい出会いを探そう”と書いていたので参加しやすかった。最初はちょっと緊張していたけど、みなさんとからむ機会も多くてすごく楽しかった。友達も増えて連絡先も交換した 」

初参加の香美市の藤原励さん(27歳)。藤原さんは大阪府出身で高知工科大学に進学し、その後香美市で移住支援を行う団体で働いています。

■藤原さん
「なかなか同世代がいなくて、一緒にそういう交流をする機会がなかった。そのなかでこういったイベントを発見して参加した」

藤原さんは同世代の友人や恋人を作ろうと参加しました。コーヒーが大好きだということもあって、楽しく交流の輪を広げられたようでした。

■藤原さん
「実際に連絡先を交換した人もいるし、20代・30代の同世代の人と交流できてよかった。こういうイベントがあったら積極的に参加していけたらと思う 」

社会の変化や個人の考え方に大きく左右される結婚。しかし、子供の数を増やすには婚姻数を増やすことが重要です。
行政では若者のニーズに合わせた工夫をしながら、さまざまな結婚支援に取り組んでいます。
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