高知で輝く人を応援『キラッ人』(きらっと) サクラで地域を盛り上げようと奮闘する梼原町・中越孝子さん【高知】
特集は高知で輝く人を応援するコーナー「キラッ人」です。
第一回は美しいサクラで地域を盛り上げようと奮闘する梼原町の女性。そのパワフルな商品作りに密着しました。
春爛漫の色と香りをそのまま瓶に閉じ込めたサクラのコンフィチュールとシロップ。炭酸水に注ぐとまるでサクラが一輪咲いているかのような美しさでいまヨーロッパやアジアなど世界に販路を拡大中です。
中心になって作っているのは梼原町のサクラで地域を盛り上げようとパワフルに動き回る一人の女性。
●中越孝子さん
「『うちのサクラすごいがやき!世界に行きゆうがで』ってそういう風に地域の人がなってきて自慢のサクラになってきている」
4月23日のキラッ人は梼原のサクラを世界へ。SAKURAclub代表の中越孝子さんです。
4月中旬。梼原町の山間で桜が満開の時期を迎えていました。その花をひとつひとつ手作業で収穫する人々がいます。
●「ことしのサクラは?」
「最高 けど本当に焦らしてくれた、ゆっくり咲いて。でもゆっくり咲いたけど、それがすごいきれい。最高にきれい。このきれいなサクラを穫って(そのままの美しさを)残したい」
中越孝子さんが代表を務めるSAKURAclub(サクラクラブ)は2011年から梼原町でサクラの加工品を作っています。収穫するのは八重紅大島。八重咲きのサクラで花にボリュームがあり食用に向いているといいます。
この時期はクラブが所有する木以外にも所有者に依頼を受けた町内4か所の八重桜の木を回り花の収穫に大忙し。花は1キロあたり1000円で買い取っています。
収穫作業を終えるとすぐに加工場へ。鮮度を保つためその日のうちに選別を行い、一輪ずつ丁寧に手作業で洗います。「サクラを常に大切に扱う」というのが桜クラブのモットー。それはお客さんのためでもありますが、サクラの木を植えた人の想いに寄り添いたいからだといいます。
●中越さん
「(八重桜を)植えているきっかけが娘さんが結婚したとか、うちは娘が卒園とか卒業などのたびに義母が植えていた。記念樹みたいに植えていたサクラ。きょう穫らせてもらったところも娘さんが結婚した年に植えたと。物語が(木の)1本1本にある。だから大事に1個1個手摘みをさせてもらっている」
本山町出身の中越さんは36年前、結婚を機に梼原町に移り住み、地元のJAに勤務。女性部でサクラの塩漬けを作った経験をもとに2011年に独立してサクラのジャムを商品化しました。しかし主婦業との二足のわらじで商品の改良にはなかなか踏み出せなかったといいます。
●中越さん
「主婦だし家のことしなくちゃいけないから外に出られない。町外へ発信していくことができなくて(商品を)ブラッシュアップすることができなくて。子どものことが落ち着いたから高知県で商談会に行ったりとかいろんなセミナーに出たりしていたら(講師に)『中越さんこだわっているんだったら砂糖にもこだわらないかんね』って」
中越さんはすぐさま行動に移し、それまでのジャム作りを見直して北海道産の砂糖と県産のレモン、そして梼原のサクラだけを使ったコンフィチュールに変更。さらにコンフィチュールを作る過程でできるシロップやスイーツに応用した商品も開発しました。
なかでもお米のプリンに八重桜が浮かぶ桜ジュレライスプリンは「にっぽんの宝物グランプリ全国大会」で準グランプリに輝きました。現在はSAKURAclubで作る商品全体の約半分をフランスやシンガポールなど海外6か国へ輸出しています。徐々に受注が増えたことで、2024年4月に1700万円をかけて加工場を新設。さらにスタッフも増員し20代から上は80代までの10人ほどが働いています。
●中越さん
「自分が子育てのときに(仕事を)休めなかったことがあったので 自由に1時間とか2時間来られるっていう職場になったらいいと思って この場で子育ての相談も年配の人にできたりとか 新しく男の人も入っているので女の人の話であったりとかそういうのも(普段は)聞けない部分とか知らなかった部分とかここでいろんな会話ができたら そういう場でありたい」
しかしスタッフの働きやすさを重視する一方で中越さん自身はこの時期ほとんど自宅に帰れません。建築会社に勤める夫の靖さんは孝子さんの情熱に感服しています。
●夫の靖さん
「サクラの事に関してはすごい。情熱がすごいき。誰にも負けんがやないろうか」
子どもたちが独立し、2人暮らしとなったいまは靖さんが家事の全般を引き受け孝子さんを支えています。
●夫の靖さん
「支えているかなんか、どうか分からんけど見守りゆうだけやね」
この日の夜も孝子さんは帰ってきません。
スタッフが全員帰った加工場に孝子さんの姿がありました。
●中越さん
「コンフィチュールを作るための準備をします」
砂糖と水を入れた鍋にけさ収穫したばかりのサクラを入れて煮詰めていきます。花がしんなりとして紫になったら県産のレモン果汁とレモンの種と皮から搾ったペクチンを入れます。するとあっという間に濃い桜色に。粗熱がとれたら瓶詰めです。サクラを1輪ずつ入れていきます。
●中越さん
Q「これひとつひとつ数えて10輪ずつ入れている?」
「はい 業務用だったら(おはぎ専門店の)かしこさんだったら、かしこさんのおはぎに載せるサイズを1000個数えて入れます。もうね本当に気が済まないの。お客さんに対してちゃんとしたい」
中越さんが真摯に商品と向き合い続けるのは自分のためでもあるといいます。
●中越さん
「自分が言うことが嘘をつきたくない。『売れたきよかった』じゃなくて、ちゃんとそれなりに認めてくれて売れたんやと思いたいき、手を抜きたくない」
午前0時を過ぎても作業に追われた中越さん。結局、仮眠を取りながら夜が更けるまでサクラと向き合い続けました。加工所を立ち上げて15年目の春。中越さんは商品が評価されるようになり、うれしい変化を実感しています。
●中越さん
「(地域の人たちの)気持ちが変わってきた『うちのサクラすごいがやき!世界に行きゆうがで』って、そういう風に地域の人がなってきて、自慢のサクラになってきているのが、SAKURAclubが活動してきてよかったと思っている」
昼夜を問わず働いてもいまは儲けがほとんどないと笑う中越さんですが、それ以上に大切なものを得ているといいます。
●中越さん
「もう本当に貧乏暇なしというくらい忙しいのに、そんなに儲けというのはないが、でも(梼原の)サクラが世界中に広がっていってるというのはお金じゃない。本当に価値がある。お金よりももっといいものを得られていると思っている。もう本当にサクラを見るだけで元気になるし、この時期を待ちわびているので、ずっと続けていきます。辞める選択肢はないです」
梼原のサクラを世界中の人に届けたい。中越さんの夢は八重の桜のように大きく美しく開きはじめたばかりです。
第一回は美しいサクラで地域を盛り上げようと奮闘する梼原町の女性。そのパワフルな商品作りに密着しました。
春爛漫の色と香りをそのまま瓶に閉じ込めたサクラのコンフィチュールとシロップ。炭酸水に注ぐとまるでサクラが一輪咲いているかのような美しさでいまヨーロッパやアジアなど世界に販路を拡大中です。
中心になって作っているのは梼原町のサクラで地域を盛り上げようとパワフルに動き回る一人の女性。
●中越孝子さん
「『うちのサクラすごいがやき!世界に行きゆうがで』ってそういう風に地域の人がなってきて自慢のサクラになってきている」
4月23日のキラッ人は梼原のサクラを世界へ。SAKURAclub代表の中越孝子さんです。
4月中旬。梼原町の山間で桜が満開の時期を迎えていました。その花をひとつひとつ手作業で収穫する人々がいます。
●「ことしのサクラは?」
「最高 けど本当に焦らしてくれた、ゆっくり咲いて。でもゆっくり咲いたけど、それがすごいきれい。最高にきれい。このきれいなサクラを穫って(そのままの美しさを)残したい」
中越孝子さんが代表を務めるSAKURAclub(サクラクラブ)は2011年から梼原町でサクラの加工品を作っています。収穫するのは八重紅大島。八重咲きのサクラで花にボリュームがあり食用に向いているといいます。
この時期はクラブが所有する木以外にも所有者に依頼を受けた町内4か所の八重桜の木を回り花の収穫に大忙し。花は1キロあたり1000円で買い取っています。
収穫作業を終えるとすぐに加工場へ。鮮度を保つためその日のうちに選別を行い、一輪ずつ丁寧に手作業で洗います。「サクラを常に大切に扱う」というのが桜クラブのモットー。それはお客さんのためでもありますが、サクラの木を植えた人の想いに寄り添いたいからだといいます。
●中越さん
「(八重桜を)植えているきっかけが娘さんが結婚したとか、うちは娘が卒園とか卒業などのたびに義母が植えていた。記念樹みたいに植えていたサクラ。きょう穫らせてもらったところも娘さんが結婚した年に植えたと。物語が(木の)1本1本にある。だから大事に1個1個手摘みをさせてもらっている」
本山町出身の中越さんは36年前、結婚を機に梼原町に移り住み、地元のJAに勤務。女性部でサクラの塩漬けを作った経験をもとに2011年に独立してサクラのジャムを商品化しました。しかし主婦業との二足のわらじで商品の改良にはなかなか踏み出せなかったといいます。
●中越さん
「主婦だし家のことしなくちゃいけないから外に出られない。町外へ発信していくことができなくて(商品を)ブラッシュアップすることができなくて。子どものことが落ち着いたから高知県で商談会に行ったりとかいろんなセミナーに出たりしていたら(講師に)『中越さんこだわっているんだったら砂糖にもこだわらないかんね』って」
中越さんはすぐさま行動に移し、それまでのジャム作りを見直して北海道産の砂糖と県産のレモン、そして梼原のサクラだけを使ったコンフィチュールに変更。さらにコンフィチュールを作る過程でできるシロップやスイーツに応用した商品も開発しました。
なかでもお米のプリンに八重桜が浮かぶ桜ジュレライスプリンは「にっぽんの宝物グランプリ全国大会」で準グランプリに輝きました。現在はSAKURAclubで作る商品全体の約半分をフランスやシンガポールなど海外6か国へ輸出しています。徐々に受注が増えたことで、2024年4月に1700万円をかけて加工場を新設。さらにスタッフも増員し20代から上は80代までの10人ほどが働いています。
●中越さん
「自分が子育てのときに(仕事を)休めなかったことがあったので 自由に1時間とか2時間来られるっていう職場になったらいいと思って この場で子育ての相談も年配の人にできたりとか 新しく男の人も入っているので女の人の話であったりとかそういうのも(普段は)聞けない部分とか知らなかった部分とかここでいろんな会話ができたら そういう場でありたい」
しかしスタッフの働きやすさを重視する一方で中越さん自身はこの時期ほとんど自宅に帰れません。建築会社に勤める夫の靖さんは孝子さんの情熱に感服しています。
●夫の靖さん
「サクラの事に関してはすごい。情熱がすごいき。誰にも負けんがやないろうか」
子どもたちが独立し、2人暮らしとなったいまは靖さんが家事の全般を引き受け孝子さんを支えています。
●夫の靖さん
「支えているかなんか、どうか分からんけど見守りゆうだけやね」
この日の夜も孝子さんは帰ってきません。
スタッフが全員帰った加工場に孝子さんの姿がありました。
●中越さん
「コンフィチュールを作るための準備をします」
砂糖と水を入れた鍋にけさ収穫したばかりのサクラを入れて煮詰めていきます。花がしんなりとして紫になったら県産のレモン果汁とレモンの種と皮から搾ったペクチンを入れます。するとあっという間に濃い桜色に。粗熱がとれたら瓶詰めです。サクラを1輪ずつ入れていきます。
●中越さん
Q「これひとつひとつ数えて10輪ずつ入れている?」
「はい 業務用だったら(おはぎ専門店の)かしこさんだったら、かしこさんのおはぎに載せるサイズを1000個数えて入れます。もうね本当に気が済まないの。お客さんに対してちゃんとしたい」
中越さんが真摯に商品と向き合い続けるのは自分のためでもあるといいます。
●中越さん
「自分が言うことが嘘をつきたくない。『売れたきよかった』じゃなくて、ちゃんとそれなりに認めてくれて売れたんやと思いたいき、手を抜きたくない」
午前0時を過ぎても作業に追われた中越さん。結局、仮眠を取りながら夜が更けるまでサクラと向き合い続けました。加工所を立ち上げて15年目の春。中越さんは商品が評価されるようになり、うれしい変化を実感しています。
●中越さん
「(地域の人たちの)気持ちが変わってきた『うちのサクラすごいがやき!世界に行きゆうがで』って、そういう風に地域の人がなってきて、自慢のサクラになってきているのが、SAKURAclubが活動してきてよかったと思っている」
昼夜を問わず働いてもいまは儲けがほとんどないと笑う中越さんですが、それ以上に大切なものを得ているといいます。
●中越さん
「もう本当に貧乏暇なしというくらい忙しいのに、そんなに儲けというのはないが、でも(梼原の)サクラが世界中に広がっていってるというのはお金じゃない。本当に価値がある。お金よりももっといいものを得られていると思っている。もう本当にサクラを見るだけで元気になるし、この時期を待ちわびているので、ずっと続けていきます。辞める選択肢はないです」
梼原のサクラを世界中の人に届けたい。中越さんの夢は八重の桜のように大きく美しく開きはじめたばかりです。
最終更新日:2025年4月23日 19:02