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【シリーズ年末回顧・猛暑】異例の暑さで県内の水産業・農業が深刻なダメージ【高知】

2024年12月11日 19:02
【シリーズ年末回顧・猛暑】異例の暑さで県内の水産業・農業が深刻なダメージ【高知】
今年の夏は暑さが厳しく農業や漁業にも影響が出ました。
年末回顧シリーズ、6回目の今回は記録的な猛暑の影響などを伝えます。

今年の夏は熱中症警戒アラートが50回発表され、連日35度を超える暑さが続きました。
高知県内は四万十市など2地点で猛暑日が連続22日となり、気象台が観測を始めた1977年以降、最長記録を更新しました。
この暑さで県内の一次産業には大きな影響が出ました。

宿毛湾では、連日の暑さで養殖魚への被害が複数発生。養殖を営む宿毛市のマリンジャパンでは、今年8月、養殖していたタイが大量に死に、大きな被害が出ました。
養殖していた1万匹のタイが出荷のためにいけすを移した後、1日で死んだということで、2000万円ほど売上が減ったそうです。

■代表 埜下善克さん
「小さい稚魚を導入してから1年半、2年、手塩にかけて育ててきた魚をいざ出荷するというタイミングで目の前で死んじゃうということは生産者としては一番悲しいこと」

養殖に適した宿毛湾ですが、夏の異常な暑さで海水温が上昇し死んだとみられています。

■埜下善克さん
「この宿毛湾の平均水温が21度から22度って言われているんですけど、大幅に超えて29度、30度、一番高いときで31度が見えた中で、やはり魚には適していないですよね。餌も食べなくなるし、元気がないのが見えます」

養殖魚が猛暑を乗り切る方法はないのか。県水産試験場を訪ねました。
こちらの増養殖環境課では、県産として市場にでる魚の飼育研究や漁場環境の調査などをしています。
増養殖環境課が管理している須崎市の浦ノ内湾のいけすでは、ブリやタイ、シマアジなど様々な種類の魚を飼育し研究に活かしています。毎日、水温を計測していて、今年8月の水温は連日30度を超えていました。

今年と去年の海水温を表したグラフ。7月はほぼ同じ温度ですが、8月に入ると差がつき、去年は27度から29度が多く観測されましたが、今年はほぼ30度から32度で推移し最大5度以上の差が出ました。明らかに今年の夏が暑く、海水温が高かったことが分かります。
水産試験場のいけすは3メートル四方で深さは6メートル。暑さ対策ではこの深さがポイントだといいます。

■黒原チーフ
「基本的にブリは30度を超えるとなかなか飼育は大変で、31度になったら死んでしまうという知見もあります。いけすの網の大きさ、深さまでで、(海水温が)30度を超えると魚には逃げ場がないのでダメージが大きい」

自然の海の中であれば、猛暑の場合、自由に深い海へと魚が逃れることができますが、養殖の場合、いけすの広さに限界があるため、暑さの影響を受けやすいのです。

また、水産試験場ではエサやりの方法についても研究しています。
初めて、ブリを対象に猛暑の8月半ばからエサやりを2週間ほど止めて、その後エサやりをするという研究を行いました。

■黒原チーフ
「一定期間エサを止めて、ある程度体重は落ちるんですが、その後水温がある程度下がってきて、ブリがエサを食べる段階の水温になってきたら、(一定期間)エサを止めたとしても、ずっとエサをやってた魚と同じぐらいの成長まで追いつく見通しが立っている」

一定期間エサを止めたブリは体重が2割ほど減りましたが、その後は順調に成長しているということで、猛暑でエサを食べなくなる時期にエサをやってブリに負担をかけるよりもよいのではないかと分析しています。

また、今年の暑さで赤潮も多く発生しました。
赤潮とは、生活排水や工場排水に含まれる 窒素やリンが植物プランクトンの栄養となって大量に増殖し海面を着色する現象です。
水温が高いとより増殖しやすく、有害な赤潮が魚のエラに接触すると魚は呼吸ができなくなります。

赤潮は今年、浦ノ内湾や野見湾で発生しました。
海水温の異常な高さに赤潮。養殖魚にとって今年は過酷な夏だったといえます。

一方、農業分野では今年様々な果樹が影響を受けました。
今出荷の最盛期を迎えている香南市の山北みかん。JA高知県山北果樹集出荷場によりますと、今年は裏年で元々収量は前の年の8割ほどの見込みでしたが、さらに悪い条件が重なり、現実は6割に届くかどうかという状況だそうです。

猛暑で8月後半から日焼けがみられ、8月から9月には暖冬により越冬したカメムシの被害。そして夏に続いた干ばつと、一転した9月の雨で一気に水が入って急激に実が大きくなり実が割れる被害が出たといいます。

山北みかんの良心市も品薄の状態でした。訪れた人は。

■良心市に訪れていた人
「今年は柿もユズもミカン類も全然だめみたいな」

大きな背景にあるのは、やはり猛暑です。
山北ミカンを育てて約半世紀という森淳(ただし)さんの農園です。

■森淳さん
「夏の猛暑で雨もなかったような感じで、木もちょっとダメージがあって枯れた状態の木もある」

暑さの被害を受けたミカンの木。樹齢は30年足らずとまだまだ若い木ですが、今年の暑さで下の方から皮がはげて大きな枝が枯れ、木の全体がだめになりました。

■森淳さん
「猛暑やったからね、あれが一番ダメージやったと思う」

森さんの農園は、幸い夏のカメムシの被害は受けませんでしたが、今年は出荷量が大きく減る見込みだといいます。

■森淳さん
「普通やったら3トンちょっとから4トンの間だが、今年はとてもそこまでいかんと思う。半分ぐらいですね」

一方、果樹の中でも夏の終わりの味覚、新高梨が今年大きな被害を受けました。
高知市針木地区では、まるはりブランドで約20軒の生産者が新高梨を生産していますが、過去に例がないほど収量が少なかったといいます。

■針木梨組合・組合長 石黒康誠さん
「暖冬で、カメムシで、ナシの肥大が悪くて、(日に)焼けてしまったような影響でおそらく今年の針木産は全体のよくて5割、悪い方は2割とかいう方もいた」

ナシは、気温7.2度以下の低温になる時間・低温遭遇時間が1000時間必要ですが、暖冬で900時間足らずとなり花がきちんと咲かず、さらに暖冬で越冬したカメムシが大量に発生。 夏は猛暑で実の表面がやけ、実も大きくならなかったのです。
今年は赤字となった生産者も多く、中にはこれを機に梨農家をやめるという人もいるといいます。

新高梨は暖冬や猛暑で10年ほど前からすでに影響を受けていて、対策として国の機関が育種した暑さに強い品種「甘太」を植え始めています。暑さに強く育てやすいそうで、糖度も高く新高梨と同じ時期に収穫できるそうです。今は針木地区の圃場の95パーセントが新高梨ですが、猛暑では収穫量が激減するため、今後は新高梨と甘太を半分ずつくらいにできればということです。

■石黒康誠さん
「針木は新高梨ということで皆さんに全国に送っていただいて喜んでいただいてるので、新高梨はまだまだメインに置いて他の梨に切り替えていくこともやりながら針木という産地がなくならないように努力していきたい」

温暖化や記録的な暑さで水産業にも農業にも影響がでた2024年。
温暖化の要因の一つは私たちの暮らしと直結する温室効果ガスです。
このガスは日々の暮らしの中で減らすことができるもの。豊かな食文化を守れるよう私たちは今すぐ、できることから取り組まなければなりません。
最終更新日:2024年12月11日 19:02
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