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【特集】亡き友への思い胸に…町民の命守る職員に…南木曽町土石流災害から10年 災害の記憶 一瞬にして住宅地を飲み込んだ土石流「言葉が出なかった」

2024年7月9日 21:16
【特集】亡き友への思い胸に…町民の命守る職員に…南木曽町土石流災害から10年 災害の記憶 一瞬にして住宅地を飲み込んだ土石流「言葉が出なかった」

10年前の7月9日、南木曽町で発生した土石流災害。1人の男子中学生が命を落としました。

この災害をきっかけに町の職員になった男性がいます。

今も胸の中にあるのが土石流に巻き込まれた同級生への思いです。

早川海斗さん
「強い雨が降ると当時の雨を思い出して怖くなるというのは結構ありましたね」

南木曽町役場で働く早川海斗さん22歳。

入庁5年目、生まれも育ちもここ、南木曽町です。早川さんはある特別な思いを胸にこの町の職員として働いています。

2014年7月9日午後5時40分ごろ。町の中心部を流れる梨子沢の上流で発生した土石流が住宅地を一瞬にして飲み込みました。

浅野記者
「流された住宅があったのは緑色の屋根の建物の手前の川に非常に近い場所にありました。土石流によって流されてしまい現在は跡形もありません」

川沿いの住宅に住んでいた家族4人が流され、このうち、中学1年の榑沼海斗さん12歳が犠牲となりました。

当時、同じ中学1年だった早川さん。自宅に被害はありませんでしたが、土石流から1週間ほど経って初めて変わり果てた光景を目の当たりにしました。

早川海斗さん
「海斗の葬儀があるということで、そこから向かってくるときに初めて、その時は言葉が出ずただただ見ることしかできなかった。(土砂は)あの家の半分くらいまでは土砂が入っていて」

亡くなった榑沼海斗さんとは保育園からの幼なじみ。家も近く、当時は同じサッカー部に所属していました。

早川海斗さん
「親からそのことを聞かされて、その日の晩はずっと泣いていましたね。ただただ泣くことしかできなかった。(榑沼海斗さんは)本当に普段から明るくているだけで周りが笑顔になったり場が明るくなるという感じではあったので」

大切な友人を亡くした経験…。そのことが、早川さんの将来に大きな影響を与えることになります。

早川海斗さん
「人のためになる仕事をというのは念頭にあったので、役場にしようかなってことで。その時にちょうど災害のことが頭に浮かんできて、同じ被害がなくなるようにという意味も込めて」

高校卒業後に町の職員として採用され、現在は建設環境課で働いています。これまでには、山や川の防災に関わる仕事にも携わってきました。今は町営住宅の管理などが主な担当ですが、災害が起きたときには現場の状況確認などの対応に当たることになります。

南木曽町は梨子沢の土石流災害のあと、川の形状を真っすぐにする工事や砂防えん堤を増設するといった対策が取られています。1953年には、死者1人、行方不明者2人を出した伊勢小屋沢の土石流災害をはじめ、戦後だけでも30回以上、南木曽町で大雨による災害が起きています。

Q.南木曽は起きやすい場所?
信州大学 平松晋也特任教授
「南木曽自体は長野県でも雨が多く降るエリアなんですよね」

砂防学の専門家、信州大学の平松晋也特任教授です。当時、砂防学会の調査団の団長として南木曽町の土石流現場にも足を運びました。

現場は急傾斜に加え、花こう岩のもろい地質で、そこに大量の雨が降ったことが土石流の原因だったと分析しています。ただ、この条件、南木曽町だけではなく長野県の広い範囲でも言えることだと、平松特任教授は警鐘を鳴らします。

信州大学 平松晋也特任教授
「当然勾配がきつい所って南木曽だけでなくて(長野県内)どこにもある。雨も急に降ってきそうなところもどこでもある。」

県によりますと、県内で土砂災害警戒区域に指定されているのは2万7308か所。このうち、建物に損壊が生じるおそれのある特別警戒区域は2万1586か所あります。

信州大学 平松晋也特任教授
「夏場は全国的に雨が多い時季なので、(大規模な)災害が発生しやすい。どんどん地球温暖化が進んでいって、突発的な雨が多く降るようになったということで、雨の量が昔よりもとんでもなく多くなっている。だから災害が発生しやすい」

土石流の前兆としては
・山鳴りがする。
・急に川の流れが濁り、流木が混ざっている。
・腐った土の臭いがするなどがあります。

平松特任教授がポイントに挙げるのが“普段との違い”に敏感になることです。

信州大学 平松晋也特任教授
「普段雨が降っていない時の自然の状態をしっかり理解しておいていただきたい。雨が降ってきてちょっと違うな、いつもと違うというのを変化に気づくというのが重要」

南木曽町で起きた土石流災害から10年。亡くなった同級生の思いを胸に早川さんは町の職員として業務に当たっています。

早川海斗さん
「連続的に長く雨が降ったりしたときはどうしてもどこかののり面がむけちゃったりとかはあったりするので、そういうときにも災害箇所に連絡受けたりしたらすぐ行けるようにして状況確認はできるように」

「町民第一で仕事をしていけるようにというのを心掛けてそれを今後も胸において、仕事をしていきたい」

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