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【特集】家族と戦国武将を愛するアメリカ外交官に密着!相手の立場に立ち、粘り強く、理解を深める…日米の“食の懸け橋”となり奮闘する日々

2023年12月25日 20:00
【特集】家族と戦国武将を愛するアメリカ外交官に密着!相手の立場に立ち、粘り強く、理解を深める…日米の“食の懸け橋”となり奮闘する日々
外交官が活躍するアメリカ総領事館

 アレックス・ブランバーグさん(37)は外交官として、アメリカ政府を代表して日本にやって来ました。お堅いイメージの外交官ですが、戦国武将が大好きで家にはフィギュアだらけという“おちゃめ”な一面も。日本語がペラペラで日本文化にも造詣が深いアレックスさん。愛する妻と息子たちに支えられ、アメリカと日本の“架け橋”として奮闘する日々に密着しました。
※情報は全て2023年4月10日放送時点のものです。

日本文化を愛するアメリカ外交官「日米の関係がどんどん強くなっていくのが目標」

 今回の主人公、アレックス・ブランバーグさん(37)は、アメリカ合衆国からやって来た外交官です。外交官と聞くと、“お堅い”印象がありますが…。

 ある春の日の大阪城公園。カジュアルな格好をしたアレックスさんが、大阪城の写真を撮っていました。

(アレックスさん)
「いやもう、最高です!桜の白っぽいピンク色と、青空と、石垣のグレー、ベストコンビネーションです」

 さらに、お堀の橋から石垣を眺め…。

(アレックスさん)
「良いですね。外側の壁が低い分、中のほうが高いというのは、攻める側の気持ちになると、『この城は攻めにくいんだな』と、よく分かります」

 流暢な日本語を話し、日本文化にも造詣が深いアレックスさん。ミッションは「日本にアメリカの食文化を売り込むこと」ですが、大切にしているのは「お互いを知ること」だといいます。

(アレックスさん)
「アメリカと日本の2か国の関係が、どんどん強くなっていくのが目標です」

奥様に一目惚れして猛アタック!家には戦国武将のフィギュアがずらり…外交官の素顔

 アレックスさん一家は、妻・麻理さん(37)、長男・ジョージくん(4)、二男・ルイくん(2)の4人家族です。アレックスさんの仕事は平日午前8時半から午後5時半まで、残業は基本的にありません。土日は休みで、休日は家族そろって過ごすのが、アレックスさん一家のルールです。

 アレックスさんは、麻理さんの笑顔と優しさに一目惚れし、猛アタックの末に結婚しました。

(アレックスさん)
「日本語で、『結婚してください』って。頑張りました(笑)」

 そんな妻の次に大切にしている宝物、それは…。

(アレックスさん)
「日本の戦国時代が好きなので、戦国武将のフィギュアを飾っています。日本が戦国時代のとき、アメリカはまだ“国”になっていなかったので。アメリカには、こういう歴史はないですね」

Q.一番好きな戦国武将は誰ですか?
(アレックスさん)
「徳川家康です。最後に勝ったからです」

大学時代の日本留学で魅力にはまり、外交官として日本に“戻ってきた”

 日本には、東京のアメリカ大使館の他、全国各地に領事館が設置されています。在大阪・神戸米国総領事館は、大阪駅の南東・北新地のすぐ隣にあり、日本に住むアメリカ人に対するサービス、日米交流を促進するための業務などを行っています。

 アレックスさんの肩書は、アメリカ農産物貿易事務所・大阪所長。「アメリカの農産物の輸出を促進するセクション」のトップを務めています。日本に入って来る食料品のうち約4分の1をアメリカが占めていて、日本にとってアメリカは最大の食料輸入国です。アレックスさんは、さらに日本市場に食い込み、アメリカの食料品の輸出拡大を狙っています。今回は特別に、オフィスにカメラが入ることが許されました。

 オフィスの目立つ場所に飾ってあるのは、大学と大学院の卒業証明書です。

(アレックスさん)
「ジョージタウン大学というワシントンD.C.にある大学と、隣にあるのが大学院の証明書で、ニューヨークのコロンビア大学です。日本だと、名刺交換するのが大事じゃないですか。名刺交換で、その人の立ち位置が分かるじゃないですか。アメリカは、名刺交換はそんなに大事じゃないんですけど、代わりに、こういうのを結構大事にしていると思います」

 ニューヨーク出身のアレックスさんが日本に興味を持ったのは、大学生のころです。20歳の時に名古屋へ留学し、日本の魅力にはまり込んだといいます。アメリカに帰国したアレックスさんは、外交官の試験に合格。そして2017年、32歳のときに、外交官として日本で勤務することになりました。

 アレックスさんがランチに持ってきたお弁当の中にも、“外交官の仕事”が詰まっています。

(アレックスさん)
「昨日の夜の残り物なんですけど。豚のミンチ(アメリカ産)が入ったドライカレーと、ブロッコリー(エクアドル産)、あと白ご飯(日本産)です。こういう仕事をしていると、食材の原産地を見る癖があります。どこの国が日本に何を送っているか知らないと、なかなか仕事ができないので」

外交官として“日米の商談の懸け橋”に

 2023年3月9日、約60の国や地域が参加した食の見本市「FOODEX JAPAN 2023」が4年ぶりに開催され、日本内外から訪れた多くの食品バイヤーが、来場者と商談を繰り広げていました。

 アメリカからは、約40のブースが出展。“食の世界”は日々変化しているため、アレックスさんはアメリカの出展者と直接話をして、最新の情報を得るようにしています。アレックスさんは、ナッツの出展者と話していました。

(アレックスさん)
「どこで生産されたものですか?」
(ナッツの出展者)
「ミシシッピ州です。特に力を入れているのが、このピーカンナッツです。農薬も化学肥料も全く使用していません。日本のスーパーなど小売店でも販売していきたいです」
(アレックスさん)
「西日本で展開する予定があれば、バイヤーの紹介などサポートしますよ」

 飲料の出展者と話す日本人女性の隣に、アレックスさんの姿がありました。女性が話す日本語を英語に、出展者が話す英語を日本語に訳し、自分の経験も交えながら説明して、手助けします。時には、“仕入れる側”の日本企業の相談に乗ることもあるのです。

(アレックスさんが相談に乗った来場者)
「言葉の面もそうですけど、コミュニケーションの取り方が、すごくありがたいなと思って。頼もしく、いろいろ紹介していただけて。自分一人だったら、ああいう形で何社も一気に見ていくというのは、難しかったかなと思います」

 アレックスさんは、アメリカ産の食材がどうやって使われているのか、確認することも怠りません。この日訪れたのは、2022年12月、東京駅構内にできたお菓子のお店です。

 ここはアーモンドに特化したお店で、カリフォルニア産アーモンドを使ったフローズンドリンクが一番人気だといいます。アレックスさんも飲んでみます。

(アレックスさん)
「うまい!おいしい!おいしいです。ちょっと暖かくなったので、こういうのは良いですね。甘いけど、甘すぎない。丁度いい。お店は、ここしかないんですよね?」
(江崎グリコ・江川直さん)
「ここしかないです。東京駅の、ここだけです」
(アレックスさん)
「大阪で作りませんか?」
(江川さん)
「作りたいですね(笑)」
(アレックスさん)
「ぜひぜひ(笑)もうちょっと近くにあれば…」

「世界は広い」人として、外交官として、広がるアレックスさんの夢

 アレックスさんは、「食を通じた外交」というテーマのトークイベントにゲストとして参加しました。

(アレックスさん)
「農家の平均年齢をみると、日本は68歳で、アメリカは58歳です。日本の農家さんが年を取っていって、毎年平均年齢が上がっている訳です。そうすると、だんだん作れるものが減ってくると予想され、日本がどんどん輸入に頼っていくのではないかなと思われます」

 途中、参加者から、こんな質問がありました。

(参加者)
「伝統野菜の里芋を育てていまして、アメリカで里芋が有名かどうか分からないですけど、こういう珍しい野菜などをアメリカに売り込むことに可能性があるのかどうか、お伺いしたいです」
(アレックスさん)
「馴染みのないものを紹介するとなると、まず使い方を教えないといけないです。例えば、パッケージに何かレシピの例などを一つ載せるのも良いですし、安心安全も大事ですけど、食べたらどう得するか、『おいしい』『体に良い』『環境に良い』など、何かプラスアルファのメッセージがあると、より売りやすいのではないかなと思います」

 参加者たちからは、「あぁー」と納得するような声が上がりました。

 アレックスさんが外交官になって、5年。「売り込む」だけでなく、「相手の立場に立って話を聞くこと」を大切にしています。

(アレックスさん)
「国によって好みは違ったりしますけど、共通するものもたくさんあると思いますので、情報交換が一番大事だと思います」

 “粘り強く、理解を深める”…それが、日本で学んだ外交官の心得です。

(アレックスさん)
「日本以外にも世界は広いので、せっかくですから、体が許す限り、どんどんいろんなところに行って、いろんなことを学んでいきたいという夢があります」

(「かんさい情報ネットten.」 2023年4月10日放送)

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