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【特集】続くコメ騒動 農家の現状は?今後の農業の進むべき道は?減反政策と戦い続けてきた男性を追う

2025年2月19日 17:56

■減反政策との戦い

コメを余分に作らせず、抑制することで、米価の安定を図ってきた日本の農政。

国策による大規模農業のモデル農村として生み出された大潟村では、反発する農家がコメの過剰作付けを行い、当時の県知事が村に乗り込んで事態の鎮圧に乗り出しました。

小畑勇二郎 知事(当時)
「まだまだ甘い考えを持っている。そんな事態でないということを私の口からはっきり言いにきたのです」
「それ(過剰作付け)は大潟村の破滅ですよ。腹の底からあなた方に言っておく」

涌井さん
「なぜ自分の田んぼで自由にコメ作りができないのか」

涌井さんは、自主自律を求めて、仲間4人とともに会社を設立。

夢と希望が持てる農業を掲げて、消費者に直接コメを送る産直を始めました。

涌井さん
「要するにこれがダメだったら農家を辞めた方がいいなっていうね。そういうつもりでいるのね」
「ここで農業をやって、そしていま一つのこの方向ではないかというのが見えてきたわけよね」

涌井さんは、「ヤミ米屋」と揶揄される中でも、日本の農業を、自立した競争力がある産業にしていかなければ、いずれ立ち行かなくなると考えていました。

農協青年部との討論(89年)
「(過剰)作付けされている皆さんは、全国の食管法を守って減反をしようとしている人たちの、不満ながらやっている部分について、秩序を乱しているということだけは認識されていただきたい」
涌井さん
「そういう秩序を正確な秩序だと思っていること自体が、あなた宮城県だったかな、非常に宮城の農民は不幸だと思いますね。本当に皆さん減反を進めていって、このままいって嫁さんが来るような農家できますか?本当にできると思いますか?それを聞きたいわ。本当に自信を持っていまの制度を続けていって、政策を続けて、素晴らしい農業きますか?」

その後も国が推し進める減反政策と戦い続けた涌井さん。

4年前には、輸出を視野に入れて、急成長を続けるパックご飯の事業に参入しました。

涌井さん
「(コメを)国内消費依存しているから、生産ができない。世界をマーケットにしたら生産いくら作っても足らない、いくら作っても」
「よく私の嫁さんに70になったら終活しろと言われるのね。で、私の終活というのはね、これなんだよ。とにかく倒れるまで走り続けてね、倒れても前に倒れる。後ろに倒れない。倒れても前に倒れる。そういうつもりでやってるのね」

涌井さんが近年力を入れて取り組んでいるのが、新たな農業経営の形。

その手本とも言える仕組みづくりの柱になるのが、各地で増えている廃校舎の活用です。

いまは男鹿市にある廃校舎を丸ごと改装して、県内2か所目となるパックご飯の工場を建設しています。

涌井さん
「農業者人口が減ることによって、どんどん面積が集まってくる。もう処理しきれない」
「しかし、農業法人が10社20社集まって連携して、地域の学校(廃校)を使って、ライスセンター・加工工場を作るとしたら、いっぱいあるわけ。チャンスは1人ではできないけど、みんなが集まればできる。農業は、一人で地域を守れないけど、みんなで守るようにするには、やっぱり産業にしなきゃいけない」
「家業という農業が日本の農業を支えてきたけど、これからは産業に切り替えなきゃいけないところにきた」

『農業を家業から産業へ』。

国の政策の転換期を迎える中、涌井さんは、安定的に国民の食糧を供給できる農業の確立を模索しています。

涌井さん
「日本農業がいま成り立たなくなろうとしているわけよね。いまこそ大量に大増産し、余計なものは輸出していく。そして、国内の需給は安定させていく」

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■担当記者が解説 コメ政策の転換点
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