【特集】過去最少の漁獲量 県魚ハタハタの未来は?模索が続く資源保護 専門家や県の調査を取材
■禁漁を担当した元職員に聞く 今後の禁漁の可能性は?
海洋科学を専門とする県立大学の客員教授・杉山秀樹さんは当時、禁漁担当の県職員でした。
「今(禁漁当時)いかにこれが少ないのかっていうのを感じている漁師さんにとって、なんとかならないだろうかというのがこれ(禁漁)のまず一番のスタートなんだよね」
漁獲量が急激に減るまでは行われていなかった、ハタハタの生態の調査。
そこで分かったのは、ハタハタがふ化するまでの期間が約2か月と、ほかの魚よりも圧倒的に長いことでした。
その分、稚魚は大きく育ち、生き残る確率が高いといいます。
必要なのは、産卵の機会でした。
杉山さんは、生態系の構造転換の機会をにらみ、できるだけ早く禁漁しなければいけないと判断し、漁師たちに訴えました。
理解を得てようやく踏み切れた、3年間の全面禁漁。
しかし、その負担は大きなものでした。
自主的な禁漁のため、補償金は出ません。
出稼ぎをしてしのぐ漁師や廃業する漁師も少なくありませんでした。
ーどこかのタイミングで禁漁する必要って今後ありますか?
杉山さん
「いや、もう、実際には資源と漁業との問題があって、あくまでも漁師さんがいて、経済活動があって、それで初めて成り立つものであって」
「漁師さんがいなくなって増えたって言ってもしょうがないんですよね」」
現状について杉山さんは、生態系の構造転換の観点からも、ハタハタが増える傾向はなく、禁漁を行うには根拠が乏しいと考えています。
県水産振興センターは、禁漁が明けた20年前からハタハタの産卵状況を調べています。
昨シーズンと比べて、産みつけられた卵の数がどの程度増えたり減ったりしているか調べることで、来シーズンのハタハタの資源量がどのくらい増減するか予測しています。
取材した日の調査では、深海を回遊してきたハタハタが浅瀬で産みつけた卵の塊がみられました。
メス1匹の卵から1000匹ほどの稚魚が生まれるといいます。
しかし、調査で見つかった卵の数は、昨シーズンの半分ほどにとどまりました。
ハタハタの接岸には、海水温の高さも影響すると考えられています。
海水温が十分に下がらない日が続き、ハタハタが接岸しきれなかった可能性があります。
この先、資源量が増える兆候はあるのか。
見逃さないためにも、きめ細やかな調査を続けていく必要があります。
県水産振興センター 松井崇人さん
「今年のように全然とれなくて高くなってしまうってなってしまいますと、全然皆さんの口に入らないというのもありますので、地球自体の変化っていうのはなかなか難しいところもあるので、そこをどう折り合いをつけながらうまく回していけるかっていうのを考えていければなというふうに思っています」
県民にとってかけがえのない存在の県魚ハタハタが、この先も食卓に上がり続けてほしい。
資源保護の模索が続いています。