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【特集】地域おこし協力隊で地域活性化 3セク設立から3年…「移住・定住」か「関係人口増加」か 挑戦的な取り組みのこれからを考える

2025年5月27日 17:40

ITはどこへ?収入の主体は公金

IT企業をうたう、なるテック。

しかし事業内容・決算内容を見ると、我々がイメージするIT企業とは大きく姿が異なります。

近藤社長
「第3期は売上の総額が2憶9,500万円で当期純利益が12万円、つまりは今期もとんとん黒字というところに着地させている」

会社の設立から3年が経過しましたが、収益構造を見ると地域おこし協力隊の委託費など補助金が主な収入源で、売り上げに占める割合は8割を超えています。

近藤社長
「補助金に寄らない事業運営体勢の確立というのが最重点テーマになっていまして、それはすなわり民間企業からの売り上げで」「利益をしっかりあげられる状態をつくること、すなわちここに村に根差したIT産業を立ち上がったという状態をつくること(が課題)」

理念との矛盾は?隊員の二拠点生活

過疎の豪雪地帯であるにも関わらず、年間30人近くを採用してきた「なるテック」。

東京一極集中の是正を掲げ「二拠点生活の実現」を誘い文句に採用数を伸ばしてきました。

近藤純光社長のYouTube
女性
「当社に入職するとなると地域おこし協力隊にも任命されることになります。そのため住民票を東成瀬村に移して住居を構えていただくことが必須要件となっています」
男性
「メンバーの中には、でもあれなんですよね。住民票は東成瀬村にあるけれどもテレワークをしたり、仕事内容や状況にもよりますけれどもリゾートワークをしたりというか移動しながら働くメンバーもいるわけですよね」
近藤社長
「そうですね。二拠点生活で住居を2か所に構えているメンバーもいますし、3週間スリランカに旅行に行っていたメンバーもいるくらいですね」

「都市部の人材を地方に移住・定住させ地域の担い手になること」を理念として掲げる地域おこし協力隊。

しかし東成瀬村では「形式的な居住」になりかねない二拠点生活を認めています。

秋田放送は隊員の居住実態を調べるため、去年10月に採用され、二拠点生活を公言している隊員の活動報告書、月報を取り寄せました。

川口大介 記者
「報告書を見ると、隊員2人は今年1月以降、村にいた日数は月に1日だけ。半年間の合計だと16日間です。また、報告書に活動内容を記載する欄は1行程度で、勤務時間を記載する必要はありません」

また、村のPRが任務だというユーチューバーの女性隊員(委嘱)に話を聞くことができました。

「東京での仕事がとても多いので、仕事があるタイミングで東京に出て行く感じになります。動画の撮影に関しては、ちょっとどういう感じで進めていこうかなって悩んだこともありまして」

女性隊員は月に1週間以上、村に滞在していると話しましたが、活動報告書の提出義務がなく、発言を裏付けることができませんでした。

村にある古民家のリフォームを題材に動画を配信しているという女性隊員。

冬の間、この古民家に定期的に立ち入った形跡や動画は確認できませんでした。

「ちょっと動画の本数が少なかったかなとは思います。寒すぎてちょっと冬はあまり進まなかったんですけど」

定住・居住をうたう、地域おこし協力隊。

その隊員の報酬や活動費は国からの交付金、つまり我々の税金から支出されています。

隊員の二拠点生活という居住実態について問題はないのか?

専門家は財政上の問題点を指摘します。

平井太郎教授
「現在の制度上は住民票異動っていうこの事実が交付税措置と関連していて」「居住実態がないとなるとですね。『(交付金を)戻せ』というふうな話が絶対財政当局から来るので」「なかなか今すぐもろ手を挙げてOKですというふうにしては言いづらいところ」

協力隊制度の改善などに長年携わってきた弘前大学の平井太郎教授は、問題点を指摘しつつも東成瀬村と協力隊については「定住未満・観光以上で特定の地域と関わり続ける非常に挑戦的な取り組みだ」と評価しました。

平井教授
「現実問題として、年間10万人が東京に入って(転入して)いく中で、数千人が(協力隊として地方に)出ていたとしても、砂漠の一滴みたいなもので、人数だけで評価していてはなかなか難しいところがあるし、定住率だけでも難しいんじゃないか」「関係人口をまさに協力隊という形で先取りをしてやっていただいているその実質を(東成瀬で)見せていただいている」

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人口減少に立ち向かう東成瀬戦略は「支えてもらう」関係人口づくり
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