【秋田県知事選挙特集⑤】新たな命の誕生「分べん」の現状 お産の取り扱いを中止する病院も…妊婦や家族の不安
■自宅から病院まで1時間…妊婦の長距離運転の不安
来月から出産ができなくなる北秋田市では、すでに影響が出始めています。
夫と2歳の娘と暮らす、庄司祐子さんです。
お腹の中には、いま2人目の子どもがいます。
妊娠6か月です。
庄司祐子さん
「体と心両方の面で、やっぱり負担だなって思います」
出産は、隣の大館市の病院で行うことにしている庄司さん。
定期的な検診がある度に、大館市までの移動を余儀なくされています。
その度に、娘の柚希さんを、実家やこども園に預けています。
自宅から病院までは、約30キロの道のり。
庄司祐子さん
「お腹もだんだん大きくなってくると、やっぱりシートベルト自体が苦しくなっちゃいますし、長距離運転するのもちょっと不安だなっては思います」
この日は、夫の祐太さんが仕事を休んで運転してくれましたが、いつもは自分で運転しています。
妊娠している際の運転は、大きな負担だといいます。
庄司祐子さん
「妊娠中だと、していないときに比べてボーっとするときももちろんありますし、なんかお腹張ってきたなとか、なんかつわりのときは気持ち悪くなってきたなというときもあるので、そういうときに休みながらだと行けなくなっちゃうので、なんとか耐えている感じです」
長女を妊娠していたときに通院した、北秋田市民病院の倍近く、自宅から大館市の病院まで、約1時間かかりました。
庄司祐子さん
「きょうは運転してないんですけど、途中でやっぱりちょっとお腹苦しいなって思うこともありましたし、やっぱりちょっと長いなって感じました」
「これからどんどんお腹も大きくなってくると、負担もさらに増えるだろうなって感じています」
検診を受ける前の病院に着くまでで、大きな疲労を庄司さんは感じています。
■妊婦や家族の金銭的負担軽減へ 北秋田市の取り組み
妊婦やその家族の金銭的な負担を軽くしようと、北秋田市は支援を始めています。
北秋田市 医療健康課 地域医療対策室 堀内清美 室長
「妊婦さんとそのご家族を全面的に支援するために『きたあきた出産まるっと応援事業』を今年の1月よりスタートさせております」
市外への通院のための支援として、妊娠した女性に一律で10万円を給付。
また、通院の際、タクシーを利用した場合も、その全額を補助します。
このほか、出産のために宿泊施設を利用した場合は、その費用も負担します。
北秋田市 医療健康課 地域医療対策室 堀内清美 室長
「やっぱりまず(出産できる病院が)ないにしても、いま現役世代で子育てをがんばっているみなさんに、市としてもできる限り応援していきたいという、そういう思いで、まず事業を進めているところでございます」
妊娠6か月の庄司祐子さんも、市の支援はありがたいとしつつ、現状では、すべての不安をぬぐうことができないといいます。
庄司祐子さん
「もうちょっと近ければ、やっぱり夜とかちょっと具合悪かったときにすぐ電話して、ちょっと相談したりとかもできたかもしれないんですけど、遠いと、やっぱり娘もいるし、娘を置いて行くということを考えちゃうと、電話しても向かえるかなとかいろいろ考えちゃうので、なかなか病院の方にも連絡を取れずにいることがあります」
長女を妊娠していたときは、少しでも体調が悪ければ、病院を受診していました。
しかし、大館まで移動しなければならないいまは、躊躇してしまうことが増えたといいます。
庄司祐子さん
「すごく不安を抱えているので、そこに例えば市の方で助産師さんとかを頻繁に連絡取れるようにしてもらって、すぐ相談したり、あと『なんかちょっと不安だな』って思ったときに来てもらったりとかして、身近に感じられると、精神的な負担も減るのかなって思いますし、病院が遠いので、そこをタクシーとかじゃなくて、ちょっとゆっくりリクライニングとかしながら、ゆっくり向えるような、もうちょっと楽に座って行けるような車を手配していただけると、ちょっと助かるかなって思います」
新たな命の誕生をどうサポートしていくか。
人口減少が加速度的に進む秋田が抱える、大きな課題です。
シリーズでお伝えしてきた県政の課題に対する知事選の各候補者の訴えや、インタビュー、それにアンケートなどは、ABSのニュースサイトにまとめて公開しています。