【特集】「放牧経産牛」のおいしさを伝えたい 26歳繁殖農家の挑戦 別れとお披露目の日に密着
■「家族に近い存在」13年間一緒に過ごした母牛との別れの日
そして、この春、新たに経産牛を出荷することに。
放牧場のリーダー的存在、13歳の「すすき」です。
「こういうふうにフラッと。近づくと角を向けてくるんですよね。こういうふうに。なんですけれども、例えば、こういうかゆいところをピンポイントでかいてあげると、もうご覧の通りおとなしくなる…あ~、そんなことないですね」
思い通りにならない一面もある「すすき」。
13年間、一緒に過ごしてきました。
黒毛和牛としての血統がよく、肉の食味の良さに期待をしている一方、長く共に過ごして、愛着が深い分、寂しさも感じているという渡邊さん。
自らの手で送り出すことを決めました。
「やっぱり最後は肉になるんだから、ほかの人じゃなくて自分で届けようっていう。同じ死なら自分が最後まで携わりたいっていう気持ちですね」
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「なんていうんですかね。いつもはこう、かわいいね、みたいな感じでやるんですけどね。きょうはきれいにするためにブラッシングをしたりとか。まぁ、最後のあれですかね。別れの前のブラッシング。特別ですよね」
「すすき」を出荷する日。
別れの時が近づいていました。
「この子が生まれたタイミングだと、僕が中学1年生ぐらい。なので、まぁあっという間ですよね…よし、じゃあちょっとエサをやって、そのあと積み込みます」
「ふ~、ほら行くぞ」
「よしよしよし、いいぞ」
「ありがとな。ふ~」
■おいしさと味わい深さを伝えたい 経産牛のお披露目
「すすき」が食肉になってから1か月。
お披露目の特別なディナーイベントが開かれました。
「2011年からずっと育ててきて、このためだけにたどりついたというウシですので、いただきますと言って、召し上がっていただければ幸いです」
「そうっすよね、いけますよね、全然。結構、脂強めだと、わりとこの量でも、ね。きちゃいますよね」
「うま味の塊でおいしいおいっしいって」
「僕、一番大好きなのがローストビーフなんですよ、うちの肉で」
消費者と直接やり取りして、経産牛への思いを伝え、そのおいしさも共有したい。
イベントは、出荷の度に開かれています。
その初回から調理を担当するシェフも、食材としての経産牛に、大きな可能性を感じています。
レメデニカホ 渡邊健一シェフ
「本当料理するっていう、お仕事をさせてくれる。食材としてはすごい素敵な、素晴らしい食材だなと思います」
渡邊強さん
「ただの牛肉ってわけじゃなくて、すごく味わい深いっていうのがあって、それを伝えていきたい。本当にいろんな方たちが、長い間、長い13年間の間、関わってきているものなんですね。だからそういう意味で、そういったことまで、ちゃんと伝えていければなぁという思いでいますね」
命をいただくということ。
渡邊さんは、これから先も母牛を育て、売り出す思いを消費者に伝えていきます。