【特集】115年ぶりの変更「拘禁刑」導入 インタビューで見えた受刑者の思いと刑務所が目指すもの
■115年ぶりの変更 「拘禁刑」導入で目指すものとは
刑罰の仕組みが変わるのは、実に115年ぶり。
社会復帰をさせる最善の方法は、規則正しい生活を送りながら、黙々と作業をこなすこと、という、画一的だった刑罰のあり方を見直します。
新たな仕組みのもと、刑務所が行うのは、いわば「型にはまらない」、柔軟な指導・教育です。
秋田刑務所 統括矯正処遇官
「受刑者はそれぞれ犯した罪も違うし、育ってきた環境も違うというところもありますので、その人の能力、特性、どのような罪を犯したかを考慮してプログラムを組んで指導をするというところを重視しております」
指導・教育の内容は、全国の刑務所がそれぞれ、入所している受刑者の特徴に合わせたプログラムをつくることになっています。
秋田刑務所は、受刑者の約25%が60歳以上であることを踏まえ、高齢になった受刑者が、身体機能や体力を維持するための、教育プログラムの導入を検討しています。
一方、年代を問わず必要となる能力を身につけるための指導や教育は、すでに始まっています。
受刑者①
「“シャバ”におるころは思わへんけど、ここに来てみると、当たり前が当たり前じゃなかったんだなと」
受刑者②
「少なくとも普通に社会にいる人たちよりは、ハンディがあるわけですよ。あれをやらなくちゃ食っていけない、何をしなきゃダメだっていうのが、普通の生活をしている人よりは抱えているものが多いと思うんですよ」
受刑者と刑務所職員が、様々なテーマで自由に意見を交わすこの場は、和やかな雰囲気になることも。
受刑者③
「ここで月に1、2回、お菓子食えるじゃないですか。無茶苦茶うまいじゃないですか。無茶苦茶うまいじゃないですか」
これは、対話実践と呼ばれる、教育プログラムの一つです。
率直な意見交換を通じて、様々な価値観を身につけ、社会に戻るためには欠かせない、コミュニケーション能力の向上を図ることが大きな狙いです。
受刑者
「いっぱいいっぱい。“シャバ”におると」
職員
「あー、いっぱいいっぱい…自分のコップがいっぱいいっぱい?何によって?」
受刑者
「やること、考えること、仕事、生活でいっぱいいっぱい」
出所後の社会復帰を支援する様々な人との関わりを持ち続けられるかどうかは、受刑者が更生するための大きな課題の一つです。
受刑者(30代・初犯)
「社会復帰するにあたって、就労とかすごい大事なことになってくると思うんですけど、今回やった教育も含めて、自分のことを知って、感情をコントロールすることだとか、対人関係のコミュニケーションスキルですか、そういうのを磨くことがやっぱり重要なんじゃないかなって考えています」
「自分の場合、今までいろんな人に迷惑をかけてきて、それは家族に対してもそうなんですけど、正直後悔していることもいっぱいあって。ちゃんと正業に就いて、家族に迷惑をかけるようなことだけはしないようにしたいなと考えています」
秋田刑務所は、秋田大学と連携して、教育プログラムの作成を進めるほか、行政や支援団体の意見も取り入れるなど、地域社会や関係機関への協力も仰ぎながら、受刑者の更生に向けた仕組みづくりを進める方針です。
刑務所に入るのは、2度目、3度目、あるいはそれ以上、という受刑者の割合が多い秋田刑務所。
先月1日時点で最も多いのは、20回目の入所というケースです。
再犯への道を絶つ、実効性のある取り組みが急がれます。