【特集】変わる刑罰の仕組み 出所後の生活・仕事は?教育プログラムや会社説明会も 社会復帰に必要なこととは
■過去に何度も刑務所に…50代受刑者が語る 日常生活の難しさ
ただ、その道のりが、決して簡単なものではないことは、自覚しています。50代の受刑者も、その一人です。
受刑者(50代)
「自分も何回か出たり入ったりしているうちに一番思うのは、とにかく自分が生活するための余力をつけないとダメなので。朝何時に起きて、ここだったら工場で仕事して、また帰って来て、何時に寝る。規則正しい生活って言葉で言うのは簡単ですけど、それがなかなかできないからやっぱり乱れると思いますから」
過去に何度も刑務所に入った50代の男性受刑者が話したのは、出所後の日常生活を淡々と続けていくことの難しさです。
仕事に就く必要性も感じているものの、自分にどのような仕事が向いているのか、その見極めは難しいと話します。
受刑者(50代)
「ここだと(職業)訓練とかいろいろ、ほかの施設に行ったりして訓練を受けられるんですけど、それが果たして自分に合ったものか、見極めも難しいと思うので。とにかく何でもいいから自分で仕事を見つけて続けることだと思いますね。そうしないとまた余計なことをやってしまうと思うので」
法務省の、おととし2023年の調査によりますと、出所したあとに犯罪を起こして再び刑務所に入った人は、約7600人。
このうちの7割あまり、約5400人が、無職でした。
仕事に就くことで再犯を必ず防げるとは言い切れません。
ただ、塀の外、元の社会に仕事や居場所の選択肢がなければ、受刑者は、住み慣れた塀の中の暮らしを選ばざるを得ないのかもしれません。
■受け入れ先の拡大へ 会社説明会も
出所後の生活の拠点や仕事、居場所をどう確保するかが、大きな課題ですが、秋田刑務所では、受刑者向けの会社説明会を開くなど、受け入れ先の拡大に向けた取り組みを定期的に行っています。
その説明会が26日に開かれ、出所した人を受け入れた実績がある企業が、就職を希望する受刑者たちに、業務内容を紹介しました。
説明会に参加したのは、受刑者25人。
いずれも、刑務所にいる間や、出所したあとすぐに、就職先を確保したいと考えている人たちです。
秋田刑務所では、年に数回、受刑者たちが、出所した人の受け入れ実績がある企業や団体と直接面接を行ったり、事業内容について説明を聞いたりする機会が設けられています。
26日、刑務所内で開かれたのは、県外から招かれた企業による、仕事内容の説明会です。
「見れば分かりますけど、『こだわりのキムチ、お届けします』ってことで、長野県上田市、食品の製造会社です」
過去に、出所した人を受け入れたことがある、長野県の企業の代表が、仕事の内容を説明したり、受刑者からの質問に答えたりしました。
26日は、出所した人の受け入れや、出所後の生活支援に関心を持つ、県の内外の企業・団体の関係者も説明に耳を傾けました。
あきた就労サポートONE 平澤和子 代表
「障害者や引きこもりの就労支援をしておりまして、対象者は違うかと思うんですが、就労支援は同じだと思いますので、やはり働く場や住む場所はもちろんだと思うんですが、それ以外にやっぱり居場所といいますか、何か活動できる場。うちの方でもそういった場をつくっていますので、運動したりだとかしていますので、参加してもらえたらな、なんて思ったりはしております」
刑務所内で行う就職面接会では、おととし7人、去年は6人の受刑者が、出所前に企業からの採用内定を得ています。
興味や関心、それに適性があるかどうか。
受刑者にとっても、仕事に就く上での決め手です。
受刑者(50代)
「長年トレーラーに乗っていましたので、またそういうトレーラー関係の仕事に就きたいなとは思っております」
「乗り物が好きなので、大きい乗り物とかが好きなので、トラックとか物流関係の仕事が合っているのかな、向いているのかな、とは思います」
一方、取材した30代の受刑者が仕事に就くうえで大事な判断材料にしているのは、「やりがい」です。
受刑者(30代)
「利用者の介助とか食事を提供したりしたときに、『いつもありがとね』とか一言もらうだけでも、自分の中ではとてもうれしいことですし、それが日々のモチベーションになったりしていました」
「自分は人と話したりするのが大好きというのもありまして、そういった仕事は何かって考えたら、一番に思いつくのは介護の仕事だなって思いましたので、自分の中では介護が一番向いている仕事かなと」
仕事への意欲、目指す姿がしっかりと固まっていても、実社会がどう受けとめるかが、不安だとも話しました。
受刑者(30代)
「職場の同僚等に自分の事件が知られてしまい、それに対して、それを理解してもらわなかったりしたうえで、その人たちの信頼や信用を失うことが、自分にとって今一番不安なことかなと思います」
受け入れてもらう側の努力と、受け入れる側の理解。
受刑者が実社会の一員として再び活躍するためには、それぞれに大切なことがあります。