カブトムシでゴミを削減できる!? 幼虫の排せつ物で産業廃棄物を資源化、高校生らの研究発表に各界が注目

高校生たちが研究の相棒に選んだのは、カブトムシ。幼虫の排せつ物まで活かした、産業廃棄物を削減するアイデアとは?
幼虫の排せつ物が土壌の質を向上
地域の農家さんが抱えている“困りごと”を、高校生の力で解決したいという思いからスタートしたこの研究。カブトムシはどんな方法で、産業廃棄物を削減してくれるのでしょうか。
カブトムシで削減を目指すのは、キノコ農家で発生する産業廃棄物「廃菌床(はいきんしょう)」。キノコの栽培後に排出される“菌床”で、おかくずを主成分とする豊富な栄養分が含まれています。
生徒たちは、廃菌床に含まれる“栄養”に着目。菌床に含まれる有機物は、カブトムシの成長に必要な栄養源となることから、飼育する際のマットとして有効活用することを目指したのです。
また、「無駄を無くしたい」という思いから、幼虫の“排せつ物”にも注目。ネット等で調べていくなかで、排せつ物には植物に役立つ栄養が含まれていることを知り、実験を経て、企業に土壌の成分分析をお願いしたといいます。
分析の結果、カブトムシの排せつ物や、菌床に由来する有機物が土壌に混ざることで、土壌の栄養価が向上することを発見。植物の成長をサポートできるだけでなく、有機農業においては、土壌の質を維持・向上できる“有機資源”として活用できることを実証したのです。
エアコン故障でカブトムシ全滅…計画の大切さを痛感
「廃菌床」を飼育マットとしてリサイクルし、排せつ物を土壌の栄養価向上に活用することで、産業廃棄物の削減を目指す。
ユニークなアイデアで、各方面から関心を集めた研究発表。研究に参加した『伊賀白鳳高校』の生徒たちは、「新しいことを始めるとき、無理かなと思ってしまうことが多くありました。ですが、連携先の方から踏み出す勇気を教えてもらい、とにかく行動することにしました」と、当時を振り返ります。
研究中、エアコンが故障し、外国産のカブトムシが全滅してしまったハプニングもあったといいます。「勢いだけで進めてきた研究だったので、計画の大切さを感じました」と計画の重要性を痛感。しかし、“新しく始めたことなのだから、失敗は絶対あること”、“高校生の段階で、失敗できたことはありがたいこと”と気持ちを立て直し、研究を進めてきたといいます。
「失敗することも沢山ありましたが、それによって得られる経験の方が大きいと思いました。これからもとにかく行動していきたいです」と、今後への思いを明かしました。
環境保護と農業の活性化を目指す
今年3月、本研究の主軸を担っていた生徒たちが卒業。研究とカブトムシは、同校の“後輩たち”が引き継ぎます。
目指すのは、地域ぐるみによる農業の活性化。利益優先ではなく、環境保護や持続可能性を意識した活動を続けていきたいといいます。
今後について後輩たちは、「伊賀地域の環境を良くするために活動していきたいです。この研究は、多面的でまだまだ研究出来ると教えてもらいました。既存研究を深めることなく、新しくアクアポニックスの導入も考えています。目標として、8月に東海大会があるのでしっかりと研究の成果を伝えたいと思います」と、研究への意気込みを語りました。