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夫は"味の外交官" 日本外交を和食で支える岐阜の夫婦 VIPを招いた重要なレセプションの舞台裏に密着!

2023年11月21日 16:26
夫は"味の外交官" 日本外交を和食で支える岐阜の夫婦 VIPを招いた重要なレセプションの舞台裏に密着!

日本外交の最前線に、日の丸を背負うサムライのような料理人がいました。岐阜の料理人・高見直樹さん。オーストラリアの日本大使館で腕をふるう公邸料理人です。そして、料理のことしか頭にない直樹さんを影で支えているのが妻の高見愛子さん。そんな日本外交を味で支える岐阜の夫婦が、今回、大使館主催の重要なレセプションで大役を任されることに。取材班は特別に許可をもらい夫婦の活躍を追いました。

「大将と一緒ならコケてもいい」 岐阜の料理店からオーストラリアの公邸料理人へ! 夫婦の新たな挑戦

以前は岐阜市で1日1組限定の小さな料理店を営んでいた高見さん夫婦。全国から選び抜いた食材は、大将の手にかかると魔法のように生まれ変わります。その味が評判を呼び、いつしか予約の取れない人気店に。料理以外は興味がないという寡黙で職人肌の大将と、明るく社交的なおかみ。お互いの足りないところを補い合うデコボコ夫婦が、力を合わせて店を切り盛りしていました。

ですが4年前、夫婦は大きな決断を下しました。なんと、オーストラリアで公邸料理人として働くという新たな挑戦を始めたのです。決断に至った理由を二人はこのように話します。

高見直樹さん:
「どんどん進化するんですよね、料理って。閉じこもっていると周りが変化しているのに気づかない」

高見愛子さん:
「私たち英語なんて全然しゃべれないんですけど、大将と一緒ならコケてもいいかなって」

公邸料理人の公募を知った直樹さんは、料理人として次のステージへ進むために応募を決意。そして見事に採用され、2人はオーストラリアにやって来たのです。

口下手な大将に課せられた重要ミッション 絶対に失敗は許されない…。

2人が働くのはオーストラリアの首都キャンベラ。各国の大使館が集中している外交活動が盛んな街なので、会食も頻繁に行われます。

場所が変わっても料理に向き合う夫婦の姿勢は変わりません。駐オーストラリア日本国特命全権大使の鈴木量博大使からも「アイアンシェフ」と称されるほど大将の料理は大好評。おかみも大将が料理だけに集中できるよう、あらゆるケアをしています。海がないキャンベラで新鮮な魚を仕入れるためには、およそ300キロ離れた港町シドニーで手配しなければいけないのですが、おかみにかかればお手の物。今ではキャンベラで評判の店も知り尽くしていると言います。おかげで英語も上達したそうですが、口下手な大将は買い物も一人では不安なようで…。

そんな中、鈴木大使から夫婦に重要なミッションが伝えられました。年に一度開かれる自衛隊記念日レセプションで、大将に寿司を握りながら解説するパフォーマンスをしてほしいというのです。日本とオーストラリアの友好関係を強化するための重要なレセプションには、大勢のVIPが招待されます。しかも、今年5月にトルコからオーストラリアに赴任した鈴木大使は、ここで大きなレセプションを開催するのは初めて。絶対に失敗は許されません。口下手な大将は、このミッションを成功させることができるのでしょうか。

本番直前のリハーサル 力を合わせて難題に立ち向かう夫婦の姿

レセプションの準備は着々と進み、大使館内にある日本庭園でも会場の設営が行われていました。おかみもレセプション用に、マグロにこだわりを持つ仲買人さんに極上のトロを注文。料理の準備は順調なようですが、心配なのは大将のパフォーマンスです。

レセプション前日になり、そろそろパフォーマンスの打ち合わせをしなければいけないのですが、注文したマグロがなかなか届かず、到着時間が気になって仕方がない大将。その様子を見るやいなや、おかみはすぐさま問い合わせを入れます。お待ちかねの魚が到着すると、大将はまるで宝物を扱うかのように紙や保冷剤で何重も包んで保管し、明日の本番に備えます。その後、ようやくパフォーマンスを行う会場の下見に向かい、大使館のスタッフから説明を聞きますが、大将もおかみも不安げな表情…。

そして、とうとう迎えたレセプション当日。2人は朝7時から準備を始めていました。普段は厨房に立つことのないおかみも、大量の唐揚げと格闘したりと大忙し。そうして仕込みを続けること10時間。料理の準備が一段落した頃、夫婦で最後のリハーサルを行いました。

ですが、大将は料理の準備が気になるのか、なかなか台詞を覚えられません。そんな大将に根気強く段取りを説明するおかみ。4年ぶりのレセプションに気合いが入る大使館スタッフたちも、心配そうに2人を見守りますが、本番はもう目前。厨房に戻った後も2人はギリギリまで段取りを確認していました。一体どうなるのでしょうか…。

いよいよ迎えた本番! 大将のパフォーマンスは成功するのか…!?

午後6時を過ぎると、オーストラリアの陸海空軍をはじめ、大物政治家や各国の大使などVIPが続々と会場に到着。大将もおかみが仕入れたトロを取りだし、パフォーマンスの準備に入ります。

国歌斉唱や要人のスピーチが終わると、いよいよ大将のパフォーマンスが始まりました。会場の隅には大将を見守るおかみの姿も。いきいきと寿司を握りはじめた大将でしたが、思いのほか握るのに時間がかかり、会場はやや間延びした雰囲気に。それを察したおかみは、すかさず大将の元に走り、パフォーマンスを切り上げるようアドバイス。場の空気を読み取るのは岐阜のお店時代のたまものです。

おかみが機転を利かせたおかげで、VIPたちは握りたての寿司を頬張り満足げな表情。大将のパフォーマンスは好評で、和やかな雰囲気のままレセプションが幕を下ろすと、鈴木大使も「料理のおかげでうまくいった」と笑顔を浮かべました。

レセプションをやり遂げた2人に話を聞くと、「周りのバックアップがあったからやり遂げられた」と感謝を述べるおかみと、「改善点は見えたので来年に生かしたい」と意気込みを語る大将。お互いの足りない部分を補い合うデコボコ夫婦の挑戦は、これからも続いていくようです。