【特集】消えた春告げ魚「コウナゴ」 海洋環境の変化が影響か 水温上昇で"夏眠"の最中に死ぬ 漁師「もう期待できない」
春を告げる魚として知られる「コウナゴ」。そのまま食べても酢しょうゆにつけて食べてもおいしい旬の味覚ですが、県内でも数年前から全く獲れなくなっています。そのワケを探りました。
あわら市の波松海岸です。今シーズンの地引き網漁のスタートとなったこの日、豊漁を願って漁師たちが準備に追われます。
■漁師
「(Q.何が入ってて欲しい?)やっぱりコウナゴ」
今から8年前に撮影された映像では、バケツいっぱいに水揚げされるコウナゴの姿が確認できます。
コウナゴは体長3センチほどの細長い魚で、あわら市の沖で漁が盛んに行われていて、浜で釜ゆでした後、天日干ししたコウナゴは「吉崎こうなご」のブランドで親しまれていました。
しかし、全国的に水揚げが激減していて、かつては1日に数百キロの水揚げがあったあわらでも、この年を境に姿を消しました。
船で沖に網を張り終えた漁師たち。今年こそはと、希望を胸に網を引っ張ります。
その結果は…。
■リポート 櫻井幹大記者
「いきの良いタイやホウボウなどが水揚げされていますが、コウナゴの姿は1匹もありません」
網の隅々まで探しましたが、コウナゴの姿は確認できませんでした。
■万両網同好会 北川俊一代表
「コウナゴは急にゼロになった。たくさん獲れた年からそれだけ海の環境が変わっている。もう期待はできないと思う」
肩を落とす漁師たち。どうしてコウナゴは消えてしまったのでしょうか。
■県水産試験場 海洋資源研究センター 児玉晃治所長
「コウナゴは夏に"夏眠"といって寝るような生態があるが、仮眠期の水温が高すぎて死ぬ場合がある」
冷たい海を好むコウナゴは、夏場は高温を避けて砂に潜って眠る「夏眠」と呼ばれる習性があります。
しかし、近年の海の環境の変化で海水温が高すぎて、夏眠の最中に死んでしまったり、海水温の上昇で夏眠の時期が早まり、十分な栄養を摂れないまま痩せた状態で夏眠に入ることで、冬の産卵が上手くいかなくなっている可能性があるといいます。
■県水産試験場 海洋資源研究センター 児玉晃治所長
「全国的にこれまで獲れてなかった地域で獲れるようになった魚が現れたり、これまで獲れていた魚が不漁になっている。海洋環境の変化が原因の一つ」
にわかに姿を消した春の味覚・コウナゴ。再び食卓に並ぶ日は来るのでしょうか。