柔道界初の五輪金メダリスト・中谷雄英さん 復興途上の広島で出会った柔道 『必勝』でつかみ取った栄光

柔道界で最初のオリンピック金メダリストに輝いた、中谷雄英(たけひで)さんです。柔道のパイオニアが残した広島の功績と、その思いを取材しました。
柔道家・中谷雄英さん(83歳)は、ニッポン柔道の礎を築いた人です。
■柔道家・中谷雄英さん
「柔道着着ると、気持ち変わるね。」
柔道が初めてオリンピック競技に採用された、61年前の東京オリンピックで、ニッポン柔道初の金メダルをもたらしたのが、中谷さんでした。
■柔道家・中谷雄英さん
「ただ、本当にあの時負けていたら、どうなってんだろうな俺はと。柔道できてないだろうなとね。」
小学生の時、広島に移り住んできた中谷さん。復興途上の街中に、道場ができたことが、柔道との出会いでした。
■柔道家・中谷雄英さん
「毎晩柔道の練習がある日は、道場行ってずっと見ていたんですね。すごいなー。あの体で、あんなに人を大きく投げられるんだな~。やってみたいな~と思って。」
中学から柔道を始めると、身長167センチと小柄ながら頭角をあらわします。大学生になるころには、日本代表候補の合宿へ呼ばれるまでに。当時、オリンピックの金メダルよりも難しいと言われていた、国内の競争を勝ち抜き、東京オリンピック代表の切符をつかみました。
■柔道家・中谷雄英さん
「今だから言えるけど、選ばれたときには、金メダルは俺が絶対にとれるという気持ちがあったんですね。やっぱり、当日近づいてくると、その気持ちよりも「もし負けたらどうしよう」とか、そういうプレッシャーもでてきて、その状態でオリンピックにのぞみましたね。」
当時の「ニッポン柔道」に背負わされたのは、『必勝』の二文字。軽量級としてその先陣をきった中谷さんは、プレッシャーをはねのけ、その時を迎えます。全試合1本勝ちで、柔道初のオリンピック金メダルをもたらしました。
中谷さんの偉業は、広島・そして日本中の心を動かしました。
■柔道家・中谷雄英さん
「勝って終わった時には、うれしかったというよりも、これで役目を果たした、ほっとしたというほうが強かったですね。」