被災の富山県内各市が進める液状化被害防ぐ事業 維持管理費は誰が負担 能登半島地震
能登半島地震で液状化被害が発生した県内の各市は今年度、今後の液状化被害を防ぐ事業を進めます。
しかし、課題となっているのが、被災者に負担がかかる維持管理費用です。
KNBは今回、熊本地震で同様の対策がとられた熊本市の事例を取材しました。
被災地の液状化対策について考えます。
昨夜、高岡市伏木地区の玉川公民館で開かれた住民説明会。
今後の液状化被害を低減させる工法などについて高岡市が説明しました。
伏木地区など被害があった市内の3つの地区はいずれも、地下水位が高く、地表面近くに緩い砂の層があり、再び液状化する可能性があることが市の調査で分かっています。
このため市は、道路の下に集水管を埋めて地下水の水位を下げる工法を先月選定し、今年度試験施工を行う計画です。
玉川自治会 柊山元成会長
「液状化は怖い、家も傾くし。その工法をして軽減されるなら、傾く角度が少なくなるのであればいいことだと思う」
しかし年間の維持管理費は全体で2600万円かかる見込みで、その負担の仕方はまだ決まっていません。
非公開で行われた質疑では、住民から負担を不安視する声が上がったといいます。
「屋根と壁と全部やり直して水道も風呂も全部だめになって、本当にお金をかけたのでこれ以上負担しろと言われても」
「年金でどうしてこれ以上負担できる?国で持ってほしい」
伏木地区の中でも被害が大きかった中道自治会。
中道自治会 能森幸男会長
「ここも壊すし、そこも壊す、3軒かな壊す。時計屋さんだったけど引っ越しされたので…ここも壊したし、この家も壊す。壊してから(公民館の解体を)する。(地震前)65世帯あったのが40軒になった。今40軒」
商店街だった通りは、空き地が増えています。
空き地に対しても維持管理費を徴収するのかどうか、その取りまとめが難しいといいます。
「なぜ住んでいないのに払わないといけないのかと、大変なこと」
一方、氷見市では。
鎌和紀さん
「今からスタート、だというふうに、ちょっと考えています」
氷見市で液状化被害が著しい栄町の新道町内会では、通りに連なる40世帯のうち、数軒を除いて住民は町内に戻っていません。
液状化対策として、氷見市が進めているのも「地下水位低下工法」です。
実際に対策工事が始まるのは、半年ほどかけて行われる実証実験のあとになります。
ここでも、住民から聞かれたのは、維持管理費の負担に対する懸念です。
鎌和紀さん
「ずーっと維持管理費がかかるっていうやり方だったら、正直、難しいですねえ」
氷見市も高岡市も、負担については住民の意見を聞いたうえで判断したいとしています。
一方、今から9年前のきょう・4月16日に「本震」が発生した熊本地震の被災地・熊本市では、液状化対策の維持費を住民に負担させていません。
KNB 清水万梨子記者
「熊本地震で液状化の被害を受けたこちらの地区では、宅地と公共施設を一体とした液状化防止の工事が行われました」
地下水位低下工法は、熊本地震で被害を受けた熊本市の近見地区でも実施されました。
対策区域内の住宅は、当時750戸あまり。
近見地区では、地震から3年後の2019年に最初の工事が始まり、今年3月には区域全体で目標とする水位まで地下水を下げました。
現在は一部で経過観察が続けられています。
熊本市の担当者は実証実験におよそ8か月をかけ、住民に対して丁寧な説明を行うことに努めたとしています。
熊本市都市安全課 上村祐一課長(取材当時)
「実際に再度の被害がないのか、ちゃんと対策効果というものが得られるのかというものを検証して、この工法を選んできたということで、やはり同意だけじゃなくて工法選びにも時間がかかってきたというのは、どうしても公共施設と宅地の一体的な対策というので課題というものがあったかと思います」
それでも、新たに対策を講じることで「安心・安全が生まれる」と話します。
熊本市 上村課長
「地震が起きて、また、工事中に一時離れた方もいらっしゃいましたけども、また元の場所に家を建てたりだとか、またその場所を売ってもですね、新たな人たちが住まれて、にぎわいが戻ってきてます」
液状化が専門の東京電機大学・安田進名誉教授は、「地下水位低下工法」の注意点について…
安田進名誉教授
「地下水を少し下げるだけなんですけれども、下が非常にべちゃべちゃの粘土地盤とかですね、っていうのがもし深いところにあると、それを下げただけで少し地盤が沈下したりするっていうこともあるので、そこに注意しないといけないとかですね」
また一度、地下水位を下げてもそれで終わりではありません。
安田名誉教授
「大体メインは平たい地盤でしたら、降ってきた雨水で地下水が溜まっているということですから、一回ポンプを止めちゃいますと、雨が降ったときに水位が戻ってくるということになります」
維持管理費は年間およそ2000万円かかる試算ですが、熊本市は、住民に負担を求めていません。
理由について市は、対策によって公共施設の安全性が高まることに加え、復旧を進めるうえで住民の同意を得る必要があるためだと説明しています。
しかし、費用はかかり続け、市の負担は大きいとしています。
県内では、富山市の東蓮町地区でも「地下水位低下工法」で対策が行われる見通しです。
維持管理費について富山市は「負担のあり方は慎重に検討する」としています。
しかし、課題となっているのが、被災者に負担がかかる維持管理費用です。
KNBは今回、熊本地震で同様の対策がとられた熊本市の事例を取材しました。
被災地の液状化対策について考えます。
昨夜、高岡市伏木地区の玉川公民館で開かれた住民説明会。
今後の液状化被害を低減させる工法などについて高岡市が説明しました。
伏木地区など被害があった市内の3つの地区はいずれも、地下水位が高く、地表面近くに緩い砂の層があり、再び液状化する可能性があることが市の調査で分かっています。
このため市は、道路の下に集水管を埋めて地下水の水位を下げる工法を先月選定し、今年度試験施工を行う計画です。
玉川自治会 柊山元成会長
「液状化は怖い、家も傾くし。その工法をして軽減されるなら、傾く角度が少なくなるのであればいいことだと思う」
しかし年間の維持管理費は全体で2600万円かかる見込みで、その負担の仕方はまだ決まっていません。
非公開で行われた質疑では、住民から負担を不安視する声が上がったといいます。
「屋根と壁と全部やり直して水道も風呂も全部だめになって、本当にお金をかけたのでこれ以上負担しろと言われても」
「年金でどうしてこれ以上負担できる?国で持ってほしい」
伏木地区の中でも被害が大きかった中道自治会。
中道自治会 能森幸男会長
「ここも壊すし、そこも壊す、3軒かな壊す。時計屋さんだったけど引っ越しされたので…ここも壊したし、この家も壊す。壊してから(公民館の解体を)する。(地震前)65世帯あったのが40軒になった。今40軒」
商店街だった通りは、空き地が増えています。
空き地に対しても維持管理費を徴収するのかどうか、その取りまとめが難しいといいます。
「なぜ住んでいないのに払わないといけないのかと、大変なこと」
一方、氷見市では。
鎌和紀さん
「今からスタート、だというふうに、ちょっと考えています」
氷見市で液状化被害が著しい栄町の新道町内会では、通りに連なる40世帯のうち、数軒を除いて住民は町内に戻っていません。
液状化対策として、氷見市が進めているのも「地下水位低下工法」です。
実際に対策工事が始まるのは、半年ほどかけて行われる実証実験のあとになります。
ここでも、住民から聞かれたのは、維持管理費の負担に対する懸念です。
鎌和紀さん
「ずーっと維持管理費がかかるっていうやり方だったら、正直、難しいですねえ」
氷見市も高岡市も、負担については住民の意見を聞いたうえで判断したいとしています。
一方、今から9年前のきょう・4月16日に「本震」が発生した熊本地震の被災地・熊本市では、液状化対策の維持費を住民に負担させていません。
KNB 清水万梨子記者
「熊本地震で液状化の被害を受けたこちらの地区では、宅地と公共施設を一体とした液状化防止の工事が行われました」
地下水位低下工法は、熊本地震で被害を受けた熊本市の近見地区でも実施されました。
対策区域内の住宅は、当時750戸あまり。
近見地区では、地震から3年後の2019年に最初の工事が始まり、今年3月には区域全体で目標とする水位まで地下水を下げました。
現在は一部で経過観察が続けられています。
熊本市の担当者は実証実験におよそ8か月をかけ、住民に対して丁寧な説明を行うことに努めたとしています。
熊本市都市安全課 上村祐一課長(取材当時)
「実際に再度の被害がないのか、ちゃんと対策効果というものが得られるのかというものを検証して、この工法を選んできたということで、やはり同意だけじゃなくて工法選びにも時間がかかってきたというのは、どうしても公共施設と宅地の一体的な対策というので課題というものがあったかと思います」
それでも、新たに対策を講じることで「安心・安全が生まれる」と話します。
熊本市 上村課長
「地震が起きて、また、工事中に一時離れた方もいらっしゃいましたけども、また元の場所に家を建てたりだとか、またその場所を売ってもですね、新たな人たちが住まれて、にぎわいが戻ってきてます」
液状化が専門の東京電機大学・安田進名誉教授は、「地下水位低下工法」の注意点について…
安田進名誉教授
「地下水を少し下げるだけなんですけれども、下が非常にべちゃべちゃの粘土地盤とかですね、っていうのがもし深いところにあると、それを下げただけで少し地盤が沈下したりするっていうこともあるので、そこに注意しないといけないとかですね」
また一度、地下水位を下げてもそれで終わりではありません。
安田名誉教授
「大体メインは平たい地盤でしたら、降ってきた雨水で地下水が溜まっているということですから、一回ポンプを止めちゃいますと、雨が降ったときに水位が戻ってくるということになります」
維持管理費は年間およそ2000万円かかる試算ですが、熊本市は、住民に負担を求めていません。
理由について市は、対策によって公共施設の安全性が高まることに加え、復旧を進めるうえで住民の同意を得る必要があるためだと説明しています。
しかし、費用はかかり続け、市の負担は大きいとしています。
県内では、富山市の東蓮町地区でも「地下水位低下工法」で対策が行われる見通しです。
維持管理費について富山市は「負担のあり方は慎重に検討する」としています。
最終更新日:2025年4月16日 19:48