特別企画「高校のこれから」なぜ撤廃?公私比率
シリーズでお伝えしているエブリィ特別企画「高校のこれから」、4回目のきょうは、県立高校と私立高校との関わりの変化についてみていきます。
「公私比率」は県立と私立の定員割合を示すもので、これまで3年ごとに県教育委員会と私立高校関係者で取り決めていましたが、今年度の受験から撤廃されることになりました。
県内の公私比率は、だいたい県立が72~73%、私立が約22%で設定されていました。
この公私比率は、全国各都道府県ごとに設定されているんですか。
いえ、そもそも公私比率を設定している都道府県は全国で約4割にとどまっていて、中でも富山県は私立よりも県立の比率が高く、県立志向が高いという特徴があります。
この公私比率、なぜ設定されているのか、聞きました。
上野キャスター
「そもそもこの公私比率というのはどういうきっかけで生まれた制度なんですか」
荒井学園 荒井理事長
「県立高校だけでは生徒がまかなえない、生徒が多すぎて。それで、一定数の生徒を私学に当てがったという、県立はここまでです、ここまで以上取れません。というその枠だったのかなと思っていて、それを溢れてくる生徒を 私学が受け持って、県立はもう枠があるので それ以上は取らないという 取れないという、それがだんだんだんだん生徒が減ってきて、その枠に満たなくなってきたっていう」
かつて生徒数が多かった時代、私立高校は県立の定員からあふれても高等教育を受けられる受け皿として大きな役割を果たしてきました。
しかし、近年は公私比率を設定する目的が薄れつつあったようです。
荒井理事長
「結構細かい数字まで、富山県の場合は公私比率を決めていたので、そこは大変形骸化しているというのはお互いの共通認識として持っていて、私立の定員充足率が上がってきて、県立高校の 定員充足率が下がってきたという何となくトレンドがあったので、思い切って無くしていいんじゃないかという、そんな感じになって」
「充足率」は、前回取り上げましたが、定員に対してどれだけ入学したかを示す割合です。
私立高校は、去年県立を逆転し、今年99.7%となりました。
実は、中高一貫校をのぞくと103.2%で、定員を超える入学者数となっています。
県立は定員割れとなる中で、私立は定員を超えているとは驚きですね。
そうですね。ここ最近、志望校の選び方が変化してきたことが背景にはあるようです。
荒井理事長
「昔はなんとなく偏差値順っていうのがあったのかな、偏差値順で 県立高校があって、その県立高校になかなか学業的に厳しかったという生徒さんが私学に来てたという時代だったのかなと思うんですけど、今って偏差値ってものを 徐々に重視をしなくなってきてるという方向性で来ているので、そういった意味で言うと県立だから 私立だからっていう住み分けっていう 縦順の住み分けはなくなってきてるのかな って、本当に何をするために高校選ぶのかなというそういう風な考え方になってきているのかな」
近年、「行ける高校」ではなく「行きたい高校」を選ぶ傾向が強まっています。
そして国は来年度から県立・私立ともに所得制限なく授業料を実質無償化する見通しで、この傾向はより強まるとみられています。
荒井理事長
「県立と私立とも、本当に行きたい学校、目的別に学校が選ばれる時代になってくるんだろうなと、そんな感じで見てますので大きな影響はあるんですけども、それぞれの県立と私立とも 同じ土俵に立って 魅力化をはかっていくという、そんな時代になってくるのかなと」
では、私立の魅力とは。
荒井理事長
「いわゆる課題解決型学習に地域を結びつけて、それで地域のことについて調べて、地域の課題をどうやって自分で解決しようかって、いわゆる探求型の授業ですかね。一斉型っていうのは先生が前に立てて一斉にやるのでなくて、グループワークをしながら生徒が主体的に考える授業もともと増やしていきたい。そういう学習っていうのも最近はいろんな学校さん取り組んでますけども、それは割と先を切ってやったかなというのが あります。制服の自由化ってこともやってみたり、じゃあこれちょっとやってみようで協議を重ねて、目的をしっかり持った上で、スピード感をもって取り組める。これはやっぱり私立の魅力かなと思ってます」
公私比率の撤廃により、今年度の受験生分から定員数を自由に決められることになりますが、大きな変化はあるのでしょうか。
荒井理事長
「昨今の 県立高校の定員未充足の状況を考えると、それでも 少し数が多い可能性があるのかなと思って見ています。きょう現在の状況として、定員と実数の乖離あるところは、そこは実態に合わせていくべきだな、そうなってくるとそれぞれの学校の 適正な定員って見えてくるのかな。私らの学校でいえば、まあ現状プラス まだちょっと、定員まあ少しオーバーしてるので、そこはまあ、向陵の場合はいわゆる少し増やしてもいいかなと思いますし、まあ新川地域はなかなか人はね厳しいので、まあここ2年ぐらいと定員割れているんで、そこは少し おさえなんかなっていうふうに言ったり、もう大幅に変えましょうとは考えてないです」
一方、県立高校はこの公私比率撤廃をどう受け止めているのでしょうか。
県教育委員会 廣島教育長
「お互いにその垣根を取っ払って、どういう風な教育をやっていくかっていうスタートラインを同じくするために、私は撤廃は大変いいことなのではないかな」
県立・私立ともに魅力を高める切磋琢磨は富山の教育環境を高めるためにもいいのではと思いますね。
県立と私立高校の定員数はともに例年通りであれば7月頃に決まる予定です。
エブリィ特別企画、高校のこれからはあさってが最終5回目です。見直しが検討される、高校入試制度についてお伝えします。