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“アメリカにおける原爆の描き方の限界が見える” 映画「オッペンハイマー」被爆地の受け止めは《長崎》

2024年4月1日 6:45

(被爆者で医師 朝長万左男さん)
「核なき世界が、遠のきつつある現在の世界の根本問題につながると、映画の最後に直感した」

作品ではオッペンハイマーの栄光と苦悩を描く一方、原爆被害の描写や核兵器廃絶についての直接的なメッセージは描かれていません。

アメリカ・シカゴの大学で倫理学を教える被爆2世の宮本ゆき教授は「加害と被害は合わせ鏡のようで両方理解することが大事だ」と話します。

(シカゴ・デュポール大学 宮本ゆき教授)
「科学者の苦悩を描くのも大事だと思う。ただどれだけの被害があったのか知らなければ、加害者の苦悩もわからない。加害者に対する共感で、こんなに苦しむから核兵器はだめなんだよとか、虐殺はいけないんだよというのは本末転倒」

その上で、映画は「今のアメリカ社会を映している」として、日本での公開に期待を寄せます。

(シカゴ・デュポール大学 宮本ゆき教授)
「日本で公開されることは、すごくいいと思っていて、アメリカにおける原爆の描き方の限界が見える。じゃあこれからどうしたらいいんだという。私たちの戦略にも役立てることができる」

試写会に参加した長崎の被爆者 本田 魂さん 80歳。

原爆で母を奪われ、小学生の時原爆病で同級生を亡くしました。

核兵器のおそろしさを知るからこそ、被害の側面にも踏み込んでほしかったと感じています。

(被爆者 本田 魂さん)
「核兵器の恐ろしさがアメリカの市民にもう少し伝わるんじゃないか」

日本での公開に、期待するのは。

(被爆者 本田 魂さん)
「核兵器をなくすために、若い人たちはより動ける。若い人が観るべき」

重いテーマを扱いながらも、世界的に大ヒットを記録した映画「オッペンハイマー」。

(長崎の高校生 安野美乃里さん)
「原爆を落とす側の科学者の新しい視点で見ることができたことを、非常にうれしく思う。実験が成功した後だったり、(広島と長崎に)原爆が投下された後に、オッペンハイマーをたたえる姿があったことに、すごく長崎で育った者としては複雑な感情を覚えた」

(長崎の高校生 木場笑里さん)
「自分たちは平和教育を受けてきたからこそ、爆風(のシーン)から被爆者の顔だったり苦しみだったりを自分たちが感じ取るものはあったが、平和教育が浸透していない国や地域の人たちからしたら、爆風から得るものは少ないと考えていて、そこで自分たちにできることは知ってもらうこと」