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「元寇」関連遺物は4000点以上 地域の歴史を解き明かす “公務員ダイバー” 43年続く海底調査《長崎》

2024年3月20日 7:00

1992年から、鷹島海底遺跡の調査研究に携わっています。

(國學院大学 池田 榮史教授)
「内野さん、結構重めに持っている」

(松浦市文化財課  内野義 課長)
「これで14キロ。ウエットスーツを着たときは、軽くして4キロぐらい」

沖合、約200メートル地点に到着。早田さんと内野課長も準備は万端です。

水深20メートルほどの海底遺跡へ。

▼日本で松浦市だけの取り組み

水中の遺物の保存状態は、塩分濃度や水温、海底の砂や泥の状況などで変わるといいます。

酸素が遮断されていれば、腐敗は陸上より進みにくく、原形に近い形で保たれるそうです。

そのためにも “定点観測” は重要。

潜水時間なども管理しながら、慎重に設置した計測器を回収しました。

(松浦市文化財課 早田晴樹 副主任)
「3つが半年間海底で設置していた “デー タロガー”。溶存酸素計と水位計と電気伝導計の3つ。半年も海底に寝ていたので、牡蠣殻がいっぱい付いている。(元寇船を)埋め戻した後の環境を、モニタリングする機材ですね」

1980年から始めた海底遺跡の調査は43年に。

こうした取り組みは日本でも松浦市だけだと言います。

調査で出土した元寇関連の遺物は、4000点以上を数えます。

▼遺跡出土だけでなく、保存処理も重要

貴重な遺物が多く、その保存処理や展示環境の整備を担うのが、松浦市文化財課の安木由美さんです。

(松浦市文化財課  安木由美主事)
「木の中にたくさん水分が含まれている状態で見つかるので、そのまま取り上げて自然乾燥させると、中の水分が全て抜けてしまって、木製品が縮んで形状が失われることがあるので、その形状を維持するために保存処理が必要」

従来の保存処理には “ポリエチレングリコール” という石油化学系の液剤が使われていました。

(松浦市文化財課  安木由美主事)
「木に釘が刺さっているような、それをポリエチレングリコ ー ルで処理した時に鉄製品のところが錆びてくる。鷹島でも問題になっていた」

そこで専門家の助言を基に着目したのが、天然由来の糖質「トレハロース」です。