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【特集】泳げないカバと飼育員の愛情物語 日本初の人工哺育で育ったカバのモモ30歳に《長崎》

2024年3月8日 15:01

ただし、ももたろうはオス。このカバ池でずっと一緒には暮らせません。

まもなく1歳を迎える頃。

(来園客)
「かわいそうだね、中国にいくのは」

(伊藤雅男さん)
「今この親子を引き離すのは、ぼくらもしのびないんですが」

オスのカバは自分の群れをつくるため、親元を離れるのが宿命。

ももたろうは中国の動物園に旅立つことが決まっていました。

▼オスの宿命 子孫を残すための試練

ついに、その日がやってきました。

モモ専任の飼育担当を離れていた伊藤さんも、気になってカバ池に駆けつけていました。

ももたろうがモモのそばを少し離れたその時、2頭の間に仕切りの柵が下り、

(伊藤雅男さん)
「檻の仕切りが下りた瞬間、もうその境は彼らにとっては永遠に(親と子の)境。まだモモは気づいてないみたいだけど」

1歳のカバは、まだ母親のお乳を欲しがるぐらいの幼さです。

母親のモモを探して、暴れ出しました。

どこかにぶつかってケガをしないよう、飼育員たちは板で誘導します。

そして、ももたろうが移送用の箱の中に。

伊藤さんはたまらず、その場で泣き崩れることしかできませんでした。

なるべく“穏やかに”送り出してあげたかった。

▼まだ生まれない⁉ 心配なのはモモの体も

ももたろうが去った翌年、カバ池からうれしい知らせが。

モモが、新たな命を宿したのです。

(伊藤雅男さん)
「女の子が生まれてくればいいなと思ってますけど」

出産予定日は5月15日です。

6月に入り、お腹もかなり大きくなりましたが、生まれる気配は一向にありません。

毎朝5時、仕事前にカバ池へに通い、かかってくる電話にも敏感になる伊藤さん。

(伊藤雅男さん)
「生まれました?」

「(知り合いの牧場で) ポニーが生まれたって」

家族との話題も、やはりモモ。

(伊藤雅男さん)
「明日生まれるかな」

予定日から2か月たったある日、モモがエサを食べなくなったと連絡が入りました。

初めての出産よりも、横になったりウロウロ動き回ったり、苦しむモモ。

陣痛は8時間に及びました。

(飼育員)
「あっ、生まれた」