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【特集】「民藝」とは? 普段使いのアイテムに少しこだわって生活を豊かに… 街の新たなにぎわいづくりに民藝を活用 鳥取県鳥取市

2024年5月18日 7:32

近くにある民藝美術館には、そんな民藝の品々が展示されています。民藝の代表的な作品の一つ、牛ノ戸焼の染分皿はシンプルなデザインと、深みのある色が凛とした印象を与えてくれます。

さまざまな生活道具が並びますが、そもそも民藝とは何なのでしょうかー。

鳥取民藝美術館 木谷清人 常務理事
「“民衆的工芸”を略して民藝と呼んだわけなんですね。民衆が普段使いの器だとか、あるいはさまざまな道具がありますけども、そういったものが誰もそれまで美しいとは言わなかったのですが、そういったものこそ美しいのではないか、ということを言い始めたのが柳宗悦たちだったわけですね」

日常的に使う道具の中に「用の美」と呼ばれる新たな価値を発見した柳宗悦。「民芸運動の父」と呼ばれるこの柳から影響を受けたのが、鳥取の医師・吉田璋也でした。近代化の波にのまれ、消えゆく伝統的な手仕事のものづくりを、時代に合わせ再びデザインする「新作民藝」を鳥取で確立することになります。

1932年には現在のたくみ工芸店の前身となる店舗を鳥取市で開き、翌年には東京にも民藝を扱う店舗を開きます。作品の企画からデザイン、生産、そして流通・販売まで一貫して手掛けるモデルを築いた吉田璋也。その後、民藝は国内外から注目を集め、一時代を築くことになります。

民藝美術館の隣に立つ「たくみ工芸店」では、鳥取県の窯元や工房の手がけた民芸品が販売されています。実は吉田璋也の進めた「新作民藝運動」の最も大きな特徴がものづくりとともに、流通と販売を行う組織を作ったことでした。

民藝美術館の道路を挟んだ向かい側に、吉田璋也が実際に診察を行っていた「吉田医院」がいまも残っています。診察室の中には、いまも「用の美」の考え方があちこちに残っていました。木谷さんが紹介してくれたのは、変わった形をした椅子。

鳥取民藝美術館 木谷 清人 常務理事
「こちらが吉田璋也が座った椅子ですね。ゴムのキャスターを使わずに木のキャスターで作りたいですから、木のキャスターの直径を小さくすると割れが入ってしまいますので、直径を大きくする。直径を大きくするとこういうかわいらしい表情の椅子ができてしまったということですね」