鳥取県若桜町若桜地区には旅行客などが宿泊できる「宿」がありません。この町の良さを伝えようと築138年の旅館を活用し民泊を始めた男性の思いに迫ります。

20以上の蔵が連なり国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている鳥取県若桜町。町の中心部に4月、新たな民宿がオープンしました。

観光客
「旅館になるんですか？これリフォームしてなんか懐かしい感じで落ち着きますよね」

明治18年に建てられた、築138年の古民家。その趣にひかれて続々と観光客が立ち寄ります。

宿の店主　♪鳥くん
「もともとここ旅館だったので旅館なんだけど40年やってなかったそうで」

観光客
「これを利用するっていうのがね。いいものを残して」

建物について説明しているこの宿の店主。実は、店主以外にもう一つの顔を持ち合わせています。それは…

♪鳥くん
「ふる里の森、すごく気にいってまして。去年、自然大使にしてもらいまして」

20年以上全国各地を回り、ツアーガイドや講演活動も行っている鳥の研究家。「♪鳥くん」という名前で活動しています。希少な野鳥が見られる八頭町の「八東ふる里の森」でも親善大使を務めています。

♪鳥くん
「こういうのを全部撮って図鑑にしたんですけど、それを見た台湾の方が台湾でも出したいとなったらしくて、台湾でもこれが中身は同じですけど」

♪鳥くんはこれまで鳥の解説本などを10冊以上出版。さらにKinKi Kidsなど数々のアーティストに楽曲提供するなど作曲家としても活躍していました。そんな鳥くんは今回、千葉県から若桜町に移住。なぜ若桜町で民宿を始めたのでしょうか？

♪鳥くん
「鳥じゃなくてご飯がおいしいのどこだったかなと思ったら、一番お米がおいしいのが鳥取。いい意味で売り出すのが下手というか、お米のおいしさとか八頭町の柿も大好きで。柿も日本一だと思ってるんですけど、そういうのを知っている人が誰も周りにいないんですよ、関東に行ったらね」

美しい街並みや、自然の中で育った新鮮な食材に魅了されたと言います。一方で若桜駅周辺には観光客が泊まれる宿はゼロ。

地元の人しか知らないこの町の良さをありのまま体感してもらおうと、八頭町でのボランティア活動で出会った愛媛出身の妻・美奈さんと築138年の宿を二人三脚で建て直しました。しかし、建物の傷みは想像以上でした。

♪鳥くん
「板の傾き直そうと思ったら基礎とか束が倒れてるし、ないし、この柱も下の半分が朽ちてた。これが今一番大がかりでしたね」

建物の基礎や家全体の古くなった箇所を友人の手も借りながら少しずつ修復していきました。そして今では珍しい形の階段も元通りに。この町に宿を復活させたのです。

♪鳥くん
「若桜町重要建造物群だったところがどんどんなくなっていて、この一角だけになっているので、この民宿が木造の黒い墨塗のルーバーとかを付けたことによって、この隣の家から6軒くらいがそういう街並みになったんですよ。そういうのをもうちょっと増やせないかなとひそかに思ってるんですけど」

若桜町の玄関口、若桜駅ではー。

♪鳥くん
「景色最高ですよね、特に桜の時期最高なんですよね」

桜が満開のこの日、さくらや旅館にお客さんがやってくるといいます。

千葉県からはるばる訪れた♪鳥くんの友人の斉藤洋輔さん。

斉藤洋輔さん
「昔のじいちゃん家みたい。なんか落ち着きますね」

昼食は、♪鳥くん夫妻手作りの山芋ゆずパスタ。到着すると早速昼ごはんです。

斉藤洋輔さん
「おいしい。ゆずが効いてる」

♪鳥くん
「知り合いの人からもらって採っていいよって言われていっぱい収穫させてもらって」

近くで採れたゆずを使ったオリジナルメニュー。食材にもこだわり、地元でとれたお米や旬の山菜を中心に提供しています。

♪鳥くんの妻　美奈さん
「（旅館で出る）懐石料理は豪華っちゃ豪華なんだけど、おばあちゃんが作るとかおふくろの味とか家庭料理を食べてもらいたい」

昼食を終えた斉藤さんと車で向かったのは町内の雄大な渓流。（※所有者に許可もらっています）

3人が始めたのはつくし採りです。

斉藤さん
「40年ぶりぐらいです。（つくしって）こんな長かったかなと思って」

夕食に使うつくしなどの山菜をお客さんと一緒に収穫し普通の宿では体験できない自然を一緒に体感。全国各地の自然をめぐり野鳥を撮影してきた♪鳥くんならではのプランでもてなします。

♪鳥くん
「ド派手な観光地にはならなくてもいいと思ってるんですけど、かといって等身大ほど知られてないじゃないですか。今日の夜も鹿探しに行こうかなと思ってるんですけど、そういうのをのんびり楽しんでもらえたらいいなと思ってます」

築138年の古民家のリノベーションから始まった♪鳥くんの挑戦。のんびり自然を体感する若桜観光の拠点に。♪鳥くんだからできる唯一無二の魅力を発信し続けます。